賃貸物件を借りるときには審査がつきもの。とりわけ、水商売や夜職に従事している方は、「審査が通るだろうか」と心配に思われることもあるでしょう。
そこで今回は、水商売や夜職の方々が賃貸物件を借りるためのポイントをご紹介いたします。職業に貴賎はありませんが、大家さんや管理会社からすれば、経済的な合理性に基づく審査があることも事実です。
今回は、水商売や夜職の方々でも理想のお部屋を見つけるためのポイントをご紹介いたしますので、ぜひ最後までお読みください。
水商売や夜職の人は賃貸が借りにくいって本当?

水商売や夜職の人はお部屋を借りにくいという噂がありますが、賃貸実務の現場においてその噂は「本当」と言わざるを得ません。
ただし、ここで理解してほしいことは、「借りにくい」のであって「借りることができない」わけではないということです。あくまで傾向であり、業界全体でNGである、というわけではありません。
なぜ水商売や夜職の人は賃貸を借りるとき不利なのでしょうか。賃貸仲介や管理会社側の業務内容から、その理由を探ってみます。
理由①収入証明書などが出ないことがある
賃貸仲介会社が申込を受け付けたのち、大家さんや管理会社に申込書を送付します。その大家さんや管理会社によっては、契約に必要な書類が各社ごとに異なり、会社によっては収入証明書や源泉徴収票の提出を求められることがあります。
水商売や夜職では、このような所得に関する公的証明書が発行されないことがあるため、賃貸物件を借りる際に制限されることが考えられます。
理由②管理会社や大家さんの意向で謝絶されることがある
単純に審査におけるポリシーの問題で、水商売や夜職の人はお断り、とされるケースがあります。
誤解がないようにお伝えすると、水商売や夜職の人が皆悪い人ということではなく、過去にたまたま水商売や夜職の人に賃貸物件を貸した結果、良くない結果になった、という経験則によるものがほとんどです。
大家さんによっては、ご自身が建築業を営んでいるため同業の方はお断りされるケースもありますし、広く言えば女性限定にされている賃貸物件もあります。どのような職業・属性であっても、大家さんや管理会社の意向によっては謝絶されることは有りうる、とお考えください。
理由③保証会社の段階で審査段階で落ちることがある
賃貸物件を申し込むとき、現在はほとんどの物件において「保証会社」に加入することが一般的です。この保証会社の審査により否決されることがあります。
保証会社は過去の支払履歴や与信など、さまざまな観点から審査を行います。水商売や夜職の人においては、継続的に安定した収入がないとみなされることがあり、その結果として審査に通らず賃貸物件を借りることができなくなることがあります。
水商売や夜職の人が賃貸を探す際のポイント

では、水商売や夜職の人が賃貸物件を借りようとするときに、どのようなポイントに気を付けるとよいのでしょうか。
水商売や夜職の人専門の仲介業者を探す
水商売や夜職の人を専門的に対応してくれる賃貸仲介業者がありますので、そこをあたるという方法があります。
大都市であればインターネットでそのような会社が見つかることがありますが、地方都市ではそうもいきません。見つけ方の一つの目安として、歓楽街に近いところにある賃貸仲介業者は、比較的そういった傾向があります。
経験のある賃貸仲介業者や営業担当者にお願いする
賃貸仲介業者や営業担当者は数多くあれど、誰もがそのスキルや経験・知識が一緒ということはありません。
とりわけ、管理会社の傾向や大家さんのクセ、保証会社の審査基準などを熟知することは一筋縄ではいかないものです。
これらの業界情報を熟知している営業担当者は、主に店長クラスや責任者クラスといえるでしょう。また、名のある不動産業者であれば契約件数も多いため、さまざまな経験値があることが期待されます。
水商売や夜職の人でも賃貸審査が通りやすくなる3つのポイント
では、実際に水商売や夜職の人がお部屋探しをする際に、審査を通過させるためのポイントをご紹介いたします。
一部については当たり前のことと思われるかもしれませんが、意外とできていない人は多いので意識してみてください。
事前に仲介業者に「正直に」申告する
このような「水商売や夜職の人が部屋探しをするとき」というテーマのコラムが存在することからも、従事している職種は部屋探しをお手伝いする賃貸仲介業者からみても非常に大きな要素であることがわかります。
せっかく部屋探しを進め、いざ申込、という段階になって職業がわかると、上述した管理会社や大家さんの意向により入居できないという可能性も否定できません。申込自体が意味をなさなくなると、部屋探しが一からやり直しになりますので、まずは最初に自分の職業を伝えるようにしましょう。
なお、ご自身が水商売や夜職の人であることは、堂々と自信をもって伝えてください。当たり前のことではありますが、賃貸仲介業者側もプロなので、何のバイアスもなく良い物件を紹介できるよう尽力してくれるでしょう。
親族に代理契約を依頼する
賃貸借契約は、契約者(借主)と居住者が同一である必要はありません。その点を利用して、ご親族に契約者としてお部屋を借りてもらう方法があります。
契約者の与信が十分であると判断された場合、居住者の属性確認が緩和されることがありますので、ご親族に与信が十分にある方がいらっしゃればこの方法も検討してみてください。
この方法を検討するときに注意すべきことは、この代理契約であってもご自身の職業はきちんと申告をすることです。
また、契約者(借主)を居住者として申告して、実際は自分が住む、という虚偽の報告は絶対にしてはいけません。万が一にも居住者が異なることが発覚した場合は、無許可の転貸として契約解除されることがあります。
連帯保証人を付けたうえで借りる
最近の賃貸物件では保証会社による基幹保証がメインであり、連帯保証人による人的保証はかなり減ってきたように思います。
ご自身の職業を賃貸仲介業者に伝える際に、連帯保証人になってくれる人がいるのであれば、その旨を伝え、与信を底上げするという方法です。
与信のある連帯保証人がいらっしゃるという点では、ご入居後に管理する立場からしても安心できますので、水商売や夜職の人であってもフラットな審査を受けられると考えられます。さらに、管理会社や大家さん側から、連帯保証人に就任しようとする方を契約者にしませんか?という逆提案がある可能性もあります。
なお、連帯保証人は原則として3親等以内の親族に限られることがほとんどです。ご親族の方に声を掛けてみてはいかがでしょうか。
昼の仕事に就き、その仕事で申請する
収入が高い夜の仕事よりも、収入が低い昼の仕事の方が”信用上では”高く評価される傾向があるのは事実です。
その点を利用して、昼の仕事を実際に始め、その内容で申請をする、という方法が考えられます。ただし、昼の仕事の収入面だけを見る場合、収入に見合わない家賃の物件は審査が通らない可能性があります。
敷金を上乗せする提案をする
敷金とは、賃貸借契約期間中や契約終了後に発生する家賃滞納や原状回復費用に充当するために大家さんに預ける担保の性質をもったお金です。
自分一人の与信が不十分と考えられるのであれば、敷金を積み増すことができるときは、その旨も伝えてみましょう。
この方法は、保証会社による基幹保証が全盛の現在においてそこまで有効に働くものではありませんが、管理会社や大家さんと実際に交渉を行う賃貸仲介業者にとっては助かるものです。(あくまで管理会社や大家さんの意向が最優先のため、それでも断られることがある点は認識しておきましょう)
【注意】水商売や夜職だからといって「アリバイ会社」の利用は避けよう

あまり馴染みのない言葉ですが、「アリバイ会社」の存在も気になる方がいらっしゃると思われます。
様々なパターンがありますが、原則これから紹介するような話には絶対に乗ってはいけません。簡単に言えば、犯罪です。
アリバイ会社とは
アリバイ会社とは、水商売や夜職の人に対して昼の仕事に就いているように見せかける、架空の会社のことです。
アリバイ会社として専業でやっているケースもあれば、飲食店などが副業で行っているケースもあります。
アリバイ会社の理由を避けるべき理由
まず、申込書に虚偽の内容を記載することになりますので、その時点で契約違反です。また、契約にはさまざまな公的書類を提出することになりますが、源泉徴収票などの書類も偽装して提出することになります。偽装することも、偽装した書類を提出することも立派な犯罪です。
また、万が一にも虚偽が発覚したときは、ほぼ例外なく契約を解除されることでしょう。保証会社へ加入していたときは、信用情報にも傷がつきます。
信用情報に傷がつくのは、想像以上の痛手です。スマートフォンも一括で購入しなければならなくなったり、住宅ローンが通らなかったり、クレジットカードが作れなかったりと、契約全般で不便になります。
さらに、悪質と認められたときは警察に被害届を提出され、刑事事件に発展する可能性もゼロではありません。
どんなに部屋が見つからなかったとしても、絶対にアリバイ会社の利用はやめてください。正直に話をし、理解してくれる賃貸仲介業者の方をパートナーとしてお部屋探しするようにしましょう。
水商売や夜職でも賃料物件は借りられる!
言うまでもありませんが、水商売や夜職は立派な職業の一つです。もちろん現状では賃貸物件が限られたりとさまざまな制約があることは事実ですが、職業に貴賎はありません。
理解のある賃貸仲介業者や大家さん・管理会社は一定数存在しますし、業界全面NGというわけではないので、正直にお部屋探しをすれば必ずお気に入りのお部屋に辿り着くことができます。間違っても、嘘をついたりアリバイ会社などに頼らないようにしましょう。