家族を自宅で介護するには?注意点や負担が軽減できる賃貸物件の設備や特徴

目次

大切な家族に介護が必要になってしまった…超高齢社会の日本において、多くの人が直面する可能性のあることです。施設にお願いするのは気が引ける、経済的な理由から難しい、といった理由から、自宅介護(在宅介護)を検討している人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、実際に介護福祉士として情報発信を行っている私が、自宅介護のメリットやデメリットを踏まえたうえで、負担を軽減する制度や福祉用具などを紹介していきます。

最後までこの記事を読んでいただければ、自宅介護の詳細を把握した上で負担を軽減でき、大切な人をサポートしていけるでしょう。

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自宅介護(在宅介護)とは

自宅介護(在宅介護)は、病院や施設ではなく、自宅で介護サービスを活用しながら介護を行うことです。ほとんどの場合、主な介護者は家族となりますが、独居の方でも介護サービスなどを利用して生活されることもあります。

自宅介護は、住み慣れた地域での生活を継続できるなどのメリットがありますが、近年は高齢化が進み、老老介護が社会問題ともなっています。

施設介護と自宅介護(在宅介護)の違い

施設と自宅の大きな違いは、常に介護職員や看護職員がいるかどうかになります。施設では24時間365日、施設職員が常駐しています。

介護のプロがお世話をしてくれるため、家族の身体的な負担はかなり軽減されるでしょう。しかしその反面、施設に入居すると面会時間に会えなかったり、認知症が進んでしまったりするケースも出てきます。

決して施設入居を否定するわけではありませんが、介護が必要な本人にとって、自宅介護はメリットが多い傾向にあります。

自宅介護(在宅介護)の良いところ

では、自宅介護のメリットについて”介護される側の視点”で見ていきましょう。自宅介護では、住み慣れた地域や自宅で生活ができるため、大切な人と暮らせる、制約のないストレスが少ない環境などが主なメリットとして挙げられます。

大切な人やペットと変わらず一緒に過ごせる

自宅では、これまで生活してきた思い出の中で介護を受けられます。知らない場所で生活するよりも、大切な人やかわいがっているペットが身近にいることの心理的安定は、自宅介護の大きなメリットです。

心理的に安定することで活動意欲が出てきて、歩けなかった人がリハビリテーションを頑張ったり、自分でご飯を食べだしたりすることもあります。また刺激が多いため、認知症の予防にも有効とされています。

住み慣れた環境なので安心感がある

自宅介護では、地域も大切な要因です。これまでの生活を継続することで、近所付き合いや見慣れた風景などで安心感を得られます。リハビリテーションのために散歩に出ても、見知らぬ土地より気付きや興味を示すことが多く、脳への刺激や意欲の向上につながります。

経済的負担が少ない

施設へ入所をすると、施設の居室代や介護サービス費などがかかってしまいます。そのため、何十万円と毎月かかってしまい、年金では賄いきれない場合も多々あります。

しかし、自宅で生活をすれば、居室代などがかかりません。使用した介護サービスの費用やオムツなどの必要物品のみにお金が発生するので、経済的負担が少ないといえます。経済的な負担は、自宅介護の方が少ない場合が多いでしょう。

制約が求められない生活でストレスを感じにくい

自宅介護は自宅での生活になるため、施設のようなルールがありません。自分の好きなことをして過ごせます。医師に相談したうえで飲酒や喫煙をする方もいれば、好きな時間に外出する生活も可能です。

病気と上手に付き合いながら生活をすることで、自分らしく生きられます。

面会にかかる時間がなくなる

介護をする家族にもメリットがあります。施設に入所して別々に暮らしていると、面会に出向かなければなりません。歩いて行ける範囲であっても、好きな時間に会うことが難しい場合もあります。

また、遠方になると訪問する側に交通費がかかったり、面会時間の制限があったりと、好きなときに好きなだけ会うことは難しいです。自宅介護では面会時間の制限などがないため、このような心配が不要になります。

自宅介護(在宅介護)の注意点

自宅介護は、いいことばかりではありません。注意点もいくつかあるため、”介護される側の視点”で見ておきましょう。しっかり把握しておくことで、自宅での生活の負担を減らすポイントになります。

家族へ負担をかけてしまう

施設との違いは前述しましたが、介護職員などが常におらず、介護は家族が担わなければなりません。もちろん訪問介護やデイサービスを利用することも可能ですが、夜間や早朝はサービスが使えない場合もあります。

そのため、家族の生活リズムが崩れたり、睡眠時間を削ってしまったりすることもあります。ケアマネジャーと相談して、必要であれば無理をせず、ショートステイなどを活用して適度に家族への負担を軽減するようにしましょう。

車いすなど物品が多くなる

介護に必要な物品が増えるため、部屋の中が狭く感じることもあるでしょう。介護用ベッドや車いす、タッチアップ、手すり、ポータブルトイレなど、これまで家になかった物品が増えます。

物品を片付けるために、押入れの整理や物の置き場をきちんと考慮しておきましょう。

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模様替えをする必要がある

介護用ベッドやタッチアップを置く場所、車いすに移乗するために必要な空間など、介護を行う動線上で必要なスペースを確保する必要があります。ベッドの乗り降りをする側と壁があまりに近いと、介助ができません。

ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などと話し合いながら、何をどの位置に置くと介護がしやすいかを考えて、模様替えを行いましょう。

自宅介護(在宅介護)の負担が軽減できる制度

自宅介護を行ううえで大切なのが、負担軽減制度です。地域にあるさまざまな制度や設備を活用することで、介護にかかわる経済的な負担や身体的・心理的な負担を軽減できます。

介護保険制度

介護を行ううえで一番大切なのは、介護保険制度です。日本には介護保険法に基づいた介護保険制度が作られており、さまざまな介護サービスを利用できます。介護が必要となったら、市役所や地域包括支援センターに行き、ケアマネジャーを紹介してもらいましょう。

介護保険を活用すると、介護サービスを1~2割の料金で利用できます。もちろん活用しなくてもサービスは受けられますが、多額になってしまうためおすすめしません。

各種介護保険サービス

介護保険制度を利用することで、従来の料金の1~2割で利用できるサービスが介護保険法の中で定められています。在宅で生活する方がよく利用するサービスを紹介します。

・訪問介護サービス

介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー)や介護福祉士などの資格を持った訪問介護員が自宅に訪問し、必要な介護を提供します。大きく身体介護と生活援助、通院等乗降介助に分かれており、ケアプランに沿った内容を提供します。

・通所介護(デイサービス)

自宅で生活されている方の機能の維持、向上や家族のレスパイト(休息)のために利用されます。自宅から通うため、朝に迎えが来て夕方には送り届けてもらうことができます。レクリエーションや機能訓練、季節の行事などの楽しみも持ちながら、脳の活性化や身体機能の維持、向上を行います。

・訪問看護サービス

看護師が医師の指示により、自宅へ訪問して必要な看護を提供します。食事介助や入浴介助などの生活支援や人工呼吸器管理、点滴などの医療的処置も医師の指示で行います。定期的に体調観察をしているため、医療機関との連携も行っています。

・短期入所生活介護(ショートステイ)

家族の都合やさまざまな事情で介護施設に数泊の宿泊ができるサービスです。サービスを受けているときは入浴や食事などのお世話を介護職員が支援してくれます。急な家族の不在や体調不良の時などは重宝されます。

これら以外にもさまざまなサービスがありますので、詳細は担当のケアマネジャーに相談してみることをおすすめします。

自治体独自のサービス

自治体で独自に行っているサービスもあります。高齢者のために栄養バランスが整った配食弁当のサービスや、無料で参加できる健康体操教室、認知症予防教室などが挙げられます。

基本的には予防を主としたサービスが多いですが、自治体や市町村独自で介護用品などの補助金や助成を行っている場所もあるため、市役所や地域包括支援センターに確認してみましょう。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、地域の介護に関する悩みや、要介護認定で非該当・要支援と判定された方の対応を行っている施設です。地域包括支援センターには、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが所属しており、健康面や制度面での相談業務をしています。

また、地域ケア会議を主催し、地域の介護問題に対して地域全体で解決できるような働きかけも行っています。

自宅介護(在宅介護)の負担が軽減できる賃貸物件の設備や特徴

ここからは、自宅介護の負担が軽減できる賃貸物件の設備や特徴を紹介していきます。ぜひお部屋探しの参考にしてみてください。

バリアフリーな環境(スロープや手すり、車いすが通れる広さなど)

自宅介護をするにあたって、介護用品を増やすだけでなく、そもそもの家の作りがバリアフリーであると負担がかなり減ります。最近では、住宅改修をしなくても自宅介護を継続できるように、さまざまな物件がバリアフリー化しています。

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エレベーターがある物件

車いすで生活している方や足に障害を持っている方、心肺機能が低下している方にはエレベーターのある物件がおすすめです。とくに3階、4階に居住する場合には、エレベーターが必須といえるでしょう。

また、エレベーターの横幅などを確認しておく必要があります。車いすによっては幅が大きく、昇降できない場合があるため注意が必要です。もし段差がある場合には、スロープのレンタルや開閉時間の延長ボタンがついているか、介助してもらえる人がいるかなどの確認をしておきましょう。

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滑りにくい床材のお部屋

床材を見るときには、まず滑りにくい素材かどうかを確認します。立ち上がるときや歩くときに、滑りやすくなると転倒の危険性が増し、最悪の場合は骨折などの事故につながりかねません。

床材が滑りやすい場合には、滑りにくいカーペットやクッションフロアマットなど、滑らないものや滑ってもケガを最小限に抑えられるものを敷きましょう。そうすれば、賃貸でも簡単に滑らない床を作れます。

また歩行が不安定な方の場合は、常につかまって歩けるように家具の場所を考えて配置すると、より安全に生活することが可能です。

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使う人にも介護する人にも便利なシャンプードレッサー®︎があるお部屋

介護が必要になると、なかなか毎日入浴することが難しくなってきます。しかし、夏場や汗をかいた日には洗髪をしたいと思う方も多いのではないでしょうか。そのようなときにシャンプードレッサーがあれば、入浴しなくても洗髪のみができます。

洗髪だけではなく、シャンプードレッサーは蛇口が伸び縮みするため、座った状態でも手を伸ばして流水で洗うことも可能です。立位のままだと膝に痛みがある方や、体幹の筋力が低下している方は転倒のリスクが上がるため、座ってできるとより安全に手洗いができ、介助する方も楽に安心して行えます。

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見守りサービスが導入されているお部屋

見守りサービスがついている部屋を選べば、万が一体調不良になったときでもすぐに助けを呼べます。また日中の様子が気になるときや徘徊が心配なときに、わざわざ自宅まで見に行かなくても確認することが可能です。

見守りサービスにはさまざまなものがあり、インターホンで会話ができたり、自宅まで安否確認をしに来てもらえたりするものもあります。使用用途や介護が必要な方の状態に合わせて、どの程度の見守りが必要なのかを検討してみてはいかがでしょうか。

賃貸でも活用できる!自宅介護(在宅介護)に便利な福祉用具

持ち家であればともかく、賃貸物件に住まわれている場合、住宅改修が難しいことがほとんどです。だからといって、自宅介護を諦めるのは早いです。賃貸物件でも活用できる福祉用具がありますので、見ていきましょう。

突っ張り棒タイプのタッチアップ

突っ張り棒タイプのタッチアップは、壁と床に棒をつっぱって固定し、立ち上がる際の手すり替わりにできます。通常のタッチアップだと幅をとってしまうため、置けないケースもありますが、突っ張り棒タイプであればスペースは必要ありません。

ベッドの横に設置すればベッドからの移乗ができ、玄関に設置すれば上り框の昇り降りを楽にできます。

介護用リフト

リフトを設置するためには、天井にレールを設置したり器具を設置したりと、大がかりな工事が必要と思われるかもしれません。しかし、介護用リフトは滑車がついているため、移動が容易にできて設置も簡単です。

お風呂までリフトに乗ったまま移動したり、普段のベッドから車いすの移乗も抱えることなく行ったりできます。

リクライニング車いす

「普通の車いすでは座っているのが体力的に難しい」「お尻に床ずれができてしまう」「背中が拘縮して(固まって)いる」といった人には、リクライニング車いすがおすすめです。

車いすに乗れず、ストレッチャーやベッドでは室内を移動できない人に活用できます。背もたれを倒せるため、本人も楽な姿勢で移動することが可能です。

意外と知らない!介護福祉士が教える賃貸でも可能な住宅改修

住宅改修をしたいと思いながらも、賃貸物件であることを理由に諦めてしまう人もいます。しかし、賃貸でも可能な住宅改修方法があるのをご存じでしょうか。(あくまで可能性の一つとしてご紹介するものであり、実際に検討する際は大家さんに相談の上で進めましょう)

介護保険制度の住宅改修とは

住宅改修とは、介護が必要となった人が自宅で生活するために必要な環境を整えることを目的に、手すりをつけたり、スロープを作ったりする際にかかる費用を、介護保険で上限20万円まで負担する制度です。上限20万円までの条件がありますので、必ず担当のケアマネジャーに相談をするようにしましょう。

賃貸でも利用ができる住宅改修の実例

賃貸でも可能な住宅改修ですが、まずは大家さんや自治体に確認することが大前提です。何も相談なしに進めてしまうと、トラブルのもとになったり、介護保険での住宅改修が適用されなかったりする場合もあるので、注意しましょう。

大家さんなどから許可を得られれば、その条件のもと住宅改修を行えます。住宅改修は、無理に大がかりな工事を必要としなくても大丈夫です。手すりをつける、段差を解消するなど軽微なもので、なおかつ退去時に撤去することが可能なものを選ぶとよいでしょう。

大家さんとの交渉で難航することも…

大家さんによっては手すりなどの必要性を感じて、原状回復せずにそのままでもいいと言われる場合もあります。しかし、はじめにしっかりとどのような改修を行って、退去時にどうするのか話し合っておきましょう。

原状回復をするときには、介護保険の適応になりませんので注意してください。また、条件交渉が難航した場合、無理に推し進めることは避けましょう。

自宅介護(在宅介護)で大切な人をサポートしよう

自宅介護では、高齢者の介護を行う側にも負担が大きくなってしまうため、介護保険サービスを介護度に応じて利用することがおすすめです。通所介護や訪問看護、訪問入浴介護などの訪問サービスは在宅介護サービスのため、利用者の自宅での生活を支援します。

介護認定を受けて介護度が認定されると、介護保険により費用もさほどかからず、訪問介護や訪問看護などの訪問系サービスを利用することが可能です。生活の支援や家族との時間を作れるうえ、介護休業なども取得しなくても在宅介護を継続できます。

どうしても難しい場合には負担が大きくなってしまうため、老人ホームや介護老人保健施設などの介護施設、小規模多機能型居宅介護などのサービスを検討し、施設介護に切り替えることを考えましょう。