部屋探しをしているとたまに目にする「定期借家契約」という文言ですが、これは一体どういった性質を持つ契約なのでしょうか。部屋探しの際、気に入ったお部屋が定期借家契約となっていたときに慌てることがないよう、定期借家契約の基本を押さえておくようにしましょう。
今回は、定期借家契約の概要をはじめ、そのメリットおよびデメリットについて解説していきますので、引越しの予定がある方はぜひチェックしてみてください。
定期借家契約とは?

そもそも定期借家契約とはどういった契約になっているのでしょうか。まずは契約の内容をしっかりと理解しましょう。
※「定期借家契約」のほかに「定期借家権」という言葉を利用するケースもありますが、両者が持つ言葉の意味は同一であると考えていただいて差し支えありません。本記事では一般的な呼称である「定期借家契約」に統一しています。
普通借家契約と定期借家契約の違い
普通借家契約と定期借家契約はどちらも部屋を借りる際の契約形態を指す言葉ですが、その性質は大きく異なります。普通借家契約は文字通り「普通の」借家契約のことで、ここでいう「普通」とは「更新することができる」借家契約のことを指します。
普通借家契約の場合、更新時期になると更新料に関する通知が届き、更新料を支払うかどうか決めなければなりません。更新料を支払えば問題なく住み続けることができる一方、支払わずに退去を選ぶことも可能です。このように、普通の借家契約では入居者が「出ていきます」という意思表示をしない限り住み続けることができます。
一方、定期借家契約は、「期間」に「定めのある」借家契約と読むことができます。定期借家契約は、事前に決められている契約期間が満了したとき、入居者は特別の事情がない限りその部屋を明け渡さなくてはなりません。
定期借家契約のメリット

定期借家契約は一見すると入居者に不利なように思えますが、なかにはメリットも存在します。ここからは、定期借家契約の制度と成り立ちを見ながらどんなメリットがあるのかを解説していきます。
短期間の利用に都合が良い物件がある
部屋探しをするにあたり、長期の入居を希望していない方も多いでしょう。たとえば、転勤などの理由で1ヶ月の間だけ部屋を借りたいというケースです。そういった短期の場合には特に定期借家契約を探してみるのがおすすめです。
定期借家契約の物件は普通借家と違い、1年だけ、1ヶ月だけという短期間のものがあります。最初からその物件を利用する期間が決まっているのであれば、その期間と合致する定期借家契約の物件は違約金などの懸念がないため非常に都合がよく、無駄がありません。
希少性の高い賃貸物件に住むことができる
定期借家契約の賃貸物件は、分譲マンションや戸建てなどの希少性の高い賃貸物件であることが多い傾向にあります。
分譲マンションでは、グレードの高い設備やサービスを受けることができるメリットがあります。また戸建てでは、専用庭が完備されていたり、賃貸マンションによくある騒音トラブルから物理的に解放されたりなどのメリットが挙げられるでしょう。
通常の賃貸物件では見られない希少性の高い賃貸物件が多いので、気になる方はぜひ定期借家契約に着目したうえでお部屋探しをするのもおすすめです。
家賃が上がってしまう心配がない
賃貸借契約では、貸す側も借りる側も、合理的な理由があれば家賃を上げたり下げたりという交渉を相手方に対してすることができます。このように、相手方に家賃交渉をする権利のことを賃料増減額請求権といいますが、定期借家契約ではこの権利が認められていません。
昨今は地価の高騰が激しく、消費者物価指数なども上昇しているところ、家賃を上げてほしいと交渉されることも想定されますが、定期借家契約ではこのような心配もありません。ただし、この賃料増減額請求権の制限は特約で排除することが可能なので、契約内容を十分に確認しておくことが重要です。
定期借家契約の注意点

定期借家契約にはメリットもあればデメリットも存在します。具体的にどのようなポイントがデメリットなのか、次項で詳しく確認しましょう。
更新して同じ物件に住み続けることができない場合がある
定期借家契約は、普通借家契約のように更新すること自体ができません。すなわち契約が終了する期日までしか居住することができないので、注意しましょう。
ただし、定期借家契約でも、再契約という形で申し込むことで契約期日以降も引き続き住むことができる場合があります。再契約については、家主の承諾が必要になりますので、契約期日以降も住みたい場合は、その旨を家主もしくは管理会社に伝えてみましょう。
再契約については、できる場合があるとお伝えしましたが、できない場合にはどのような理由があるのか一部ご紹介します。
家主が将来お部屋を自分で使うことが決まっている場合
定期借家契約の終了後に家主が住むことが決まっている場合は、再契約を締結することは現実的に難しいでしょう。
与信の確認を理由として定期借家契約にしている場合
契約期間中に問題行動を起こしていないか、または家賃がきちんと支払われているかなどを確認する期間と位置づけられていることがあります。そのような理由で定期借家契約となっている場合に、家賃の滞納や近隣の住民の方々からクレームがあるなどの問題行動が確認されると、再契約自体が難しい場合があります。
大規模な改装の予定が決まっている場合
家主の資金計画として、大規模な改装の予定が組み込まれることがあります。そのような建物の運用計画上の理由で、定期借家契約としている場合も再契約は困難になることが予想されます。
どうしても住み続けたいという場合、更新ではなく再契約の手続きを結ぶことになります。この2つは意味合いが異なるものになるので、どのような手続きになるのか事前に確認しておくようにしてください。
賃料増減額請求権がない
さきほどのメリットの項目でも解説しましたが、定期借家契約では一度取り決めた家賃を増減させることはできません。家賃が上がらないという点ではメリットですが、減額の請求をすることができないという点ではデメリットといえるでしょう。
定期借家契約の中には、契約期間が比較的長期にわたるものもあります。期間の長い定期借家契約を締結した際には、近隣環境の変化などにより家賃が不相応となることが想定されますが、そういった場合であっても減額の交渉をすることはできません。
原則として中途解約はできない
普通借家契約の借主は、貸主に対しておおむね1ヶ月前に予告をすれば特に問題なく解約をすることができます。しかし、定期借家契約の借主と貸主は、契約期間が満了するまでの間はお互いに契約を解除することはできません。
ただし、この解約ができないというルールは特約で排除することが可能です。もし短期解約の可能性があるという場合、契約前に途中で借主から解約ができるような契約になっているかどうかチェックしてください。また、交渉次第では途中解約可能というように変更してくれることも考えられます。
定期借家契約でよくあるトラブルと確認すべきポイント
定期借家契約は、普通借家契約と異なる契約であるためさまざまなトラブルが発生します。最後に、よくあるトラブルと確認すべきポイントをご紹介します。
定期借家契約でよくあるトラブル
賃貸借契約を締結する際、仲介業者は借主に対し、契約内容の詳細を丁寧に説明しなければなりません。さらに定期借家契約であるときは、重要事項説明書への記載はもちろんのこと、別紙でさらに定期借家契約であることを説明することが必要とされています。
仲介業者の方はわかりやすく説明をしてくれますが、それでもお部屋探しをしている一般の方にとっては聞き慣れない言葉も多く、理解しているつもりでも理解できていない箇所がある場合があります。
借主がこういった説明をきちんと理解しないまま契約を締結することによりトラブルに発展する場合があります。
定期借家契約で確認するポイント
では、定期借家契約ではどのようなところを確認すればよいのでしょうか。重要事項説明書や契約書で押さえておくべきポイントをご紹介いたします。
契約の種類を確認する
まずは自分が契約しようとしている物件が、普通借家契約なのか、定期借家契約なのかどうかを確認しましょう。
契約の種類は重要事項説明のみならず、契約書のタイトルでも確認することができます。
契約の期間を確認する
重要事項説明や契約書に記載されている契約期間を、必ず確認するようにしましょう。また、それらの書面では更新に関する定めも併記されています。
申し込みたい物件が定期借家契約の場合、期間と更新に関する両方を確認することで、契約終了日に関する理解が深まることが期待されます。
解約に関する定めを確認する
重要事項説明書には、契約の終了や解約に関する定めが記載されています。申し込む物件が定期借家契約の場合、この部分を確認することで、解約にまつわる決まりを確認することができます。
定期借家契約の説明書を確認する
定期借家契約の場合、重要事項説明書への記載はもちろんのこと、別紙でさらに定期借家契約であることを説明することが仲介業者に義務付けられています。
この書面には、前述で解説した確認すべきポイントが全て記載されています。申し込みたい物件が定期借家契約であった場合は、もう一度内容を再度確認し、疑問や不安な点を解消しましょう。
定期借家契約の特徴と注意点を押さえて賢く物件探しをしよう
元々定期借家契約は、不法に部屋を占拠するなど一部の悪い借主を排除するために策定された制度です。ルールが多岐にわたる定期借家契約ですが、うまく利用することで入居に必要な費用を抑えられる可能性があり、あえて定期借家契約の物件を選ぶ方も少なくありません。
期間満了によって契約が終了することは当然ですが、最近では期間満了時に再度契約を締結してくれる家主さんも増えてきました。これは、一定期間借主の様子を見て、家賃滞納などのトラブルを起こさないかどうかを確認するための予防的な措置として、定期借家制度を活用している例としてとらえることができます。気に入った部屋が定期借家契約であった場合、普通借家契約への変更ができるかどうか、また、再契約の余地があるかどうかを確認してみると良いでしょう。