【管理栄養士監修】低温調理とは?日々の食事に取り入れるコツと食中毒を防ぐポイント

目次

昨今、取り沙汰されることの多い「低温調理」。低温調理は、その名の通り「焼く」、「煮る」といった加熱調理よりも低い温度で調理を行うため、柔らかく仕上がったり、実は簡単で失敗が少なかったりと多くのメリットがあります。

一方で、加熱温度が低いため食中毒等のリスクにも目を向けなければなりません。

この記事では、低温調理とはどういったものか、食中毒を防ぐためにはどのようなポイントを意識するべきかを解説します。実際に低温調理で作れるレシピも紹介しますので、ぜひご覧ください。

また、低温調理をする際には、ある程度の調理スペースや器具を確保する必要があります。これから低温調理を始めてみたいけど、調理スペースや収納場所がないという方は、システムキッチン付きの物件なども合わせて検討してみてはいかがでしょうか?

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低温調理とは?

低温調理とは、食材を一定の低温(40〜70℃程度)で長時間加熱する調理法です。加熱温度を厳密に管理することで、たんぱく質の過剰な変性を防ぎ、肉や魚をしっとり柔らかく仕上げることができます。

また、低温調理時は食品を密閉袋などに入れて加熱するため、真空調理に近く、食材の栄養素や旨みを逃さず調理できます。

一方で、他の加熱調理に比べて温度が低いため、食品中の菌などの不活性化が難しく、調理方法や保存方法などを誤ると、食中毒等の原因となる可能性があります。

低温調理を行う際は、メリットだけに目を向けるのではなく、リスクも考えた上で活用していきましょう。

低温調理の方法

実際に、低温調理をする際の工程を簡単に見ていきましょう。

①食材の下処理をする

肉や魚の余分な脂や筋を取り除き、塩胡椒や油などの調味料で下味をつけます。

※多少水分があると火が入りやすいです。

②真空パックにする

下処理をしたらジップロックなどの密閉袋に入れ、空気を抜いて密閉しましょう。

③低温調理器で加熱する

深めの鍋や専用容器に水を入れ、低温調理器をセットします。食材を入れて、温度と時間を指定して放置しましょう。

④調理後に仕上げる

指定した時間の調理が終わったら、袋から取り出します。真ん中をカットするなどし、加熱がしっかりされているかを確認しましょう。その後、盛り付けなどをして仕上げます。

低温調理のメリット

低温調理には他の加熱調理とは異なる様々なメリットがあります。実際にどんなメリットがあるのでしょうか?

360度全方向から加熱するので、均一に火入れができる

低温調理は全方向から加熱するため、均一に加熱することができます。

フライパンでお肉を焼くことをイメージすると、フライパンに触れていない部分はあまり火が入りません。しかし、低温調理は一定の温度のお湯が食材の周りを覆っているため、360度から均一に火入れがされます。そのため、加熱ムラもできにくく、どの部分も均一に加熱されるというメリットがあります。

また、他の加熱調理のように焼きすぎや煮崩れのようなことも起こりづらいため、一定のクオリティに仕上げることができます。

ただし、食材の厚さや温度が異なると均一な火入れができないため、下処理の段階で同じ薄さにカットしたり、冷凍の状態で調理を始めないような工夫が必要です。

タンパク質の変性を防ぎ、パサつかない

低温調理では、肉や魚などに含まれるタンパク質の変性を防ぐことができるため、パサつかずしっとりとした仕上がりにできます。

動物性タンパク質は、加熱をすると変性(構造が壊れる)し、凝集することで硬くなります。しかし、低温調理では加熱温度が低いため、このタンパク質の変性を緩やかにし、柔らかい状態を保つことができます。

栄養素や旨みを逃がしにくい

低温調理は、食材を密閉するいわゆる真空調理に近い形であるため、栄養素や旨みを逃がしにくいというメリットもあります。

食品に含まれる栄養素の中には、水溶性ビタミンやミネラルに代表されるように、水に溶けやすい性質や熱に弱い性質を持つものがあります。これらの栄養素は、煮ることで溶け出したり、焼くことで破壊されたりするため、加熱調理により残存量が低下します。

しかし、低温調理であれば水に触れる機会も少なく、加熱温度も低いため、これらの栄養素の流出や損失を抑えることができます。

洗い物が少ない

低温調理は、味や食感だけではなく調理後の洗い物が少なくなるというメリットもあります。

低温調理は、下処理をしたらすぐに袋に入れて加熱ができるため、フライパンやトングといった調理器具を使わずに調理でき、洗い物が減ります。また、フライパンの油汚れに悩まされることもないため、洗い物の数だけではなく負担も減らすことができます。

手が離せて自由度が高い

低温調理は、常に火加減を見ておく必要がないため、調理中に手が離せて自由度が高い点もメリットの一つです。

低温調理は、時間と温度を設定したらあとは待つだけで加熱ができるため、その間に洗い物をしたり他の調理をしたりと、自由度が高く効率的です。また、温度と時間の設定を変更すれば、自分の好きな食感に調整することもできます。

他にも、大きな鍋を使えば一度に複数の料理を一斉に加熱することができるため、作り置きにも向いています。

低温調理向けの食材とレシピ・必要になる家電器具

低温調理のメリットや特徴について紹介しましたが、実際にどのような食材を用いれば良いのでしょうか?低温調理向けの食材とレシピ、調理に必要な器具などについて解説します。

サラダチキン

低温調理におすすめの料理の一つ目は、鶏むね肉を使ったサラダチキンです。

鶏むね肉は、たんぱく質が多く脂質が少ないヘルシーな食材です。サラダチキンはトレーニングやダイエットをしている方を中心に人気があり、コンビニにも様々な種類が売られています。しかし、家で作ろうとするとどうしても硬くなってしまい、コンビニのような柔らかさを保つことができません。

低温調理であれば、コンビニよりも柔らかいサラダチキンを作ることも可能です。

サラダチキンの低温調理に必要になる家電・器具

・低温調理器

・密閉袋

・深めの鍋や専用の調理容器

アレンジレシピ:サラダチキンの梅しそサラダ

■材料(2人前)

・鶏むね肉…1枚

・塩…少々

・砂糖…少々

・こしょう…少々

・梅干し…3個

・しそ…5枚

・レタス…5枚

・ポン酢…大さじ2

■作り方

①鶏肉の筋と皮を取る。

②鶏肉が同じ厚さになるように分厚い部分を横にスライスする。

③鶏肉に塩、砂糖、こしょうをすり込む。

④下味をつけた鶏肉を袋に入れ、空気を抜いて密閉する。

⑤62℃に設定したお湯の中に食材を入れ、62℃で2時間低温調理する。

⑥レタスは葉をむいて水洗いし、一口大にちぎる。梅干し、しそを好みのサイズまで刻む。

その後、ボウルに全て混ぜ合わせておく。

⑦サラダチキンができたら、カットして加熱できているかを確認し、手で一口大にちぎりボウルに入れ、ポン酢を加えて和えたら完成。

温泉卵

温泉卵は、温度の管理が難しく、鍋で作るにはコツが必要なため、低温調理で作るのがおすすめです。

温泉卵の低温調理に必要になる家電・器具

・低温調理器

・密閉袋

・深めの鍋や専用の調理容器

・冷水用ボウル

アレンジレシピ:温泉卵の和風出汁添え

■材料(2人分)

・卵…4個

・小ねぎ…1本

・のり…1枚

・顆粒和風出汁…小さじ1

・醤油…大さじ1

■作り方

①68度に設定したお湯の中に卵を入れ、68℃20分加熱する。

②卵を加熱している間に、小ねぎとのりを刻んでおく。

③ボウルにねぎと顆粒和風出汁、醤油を加え混ぜておく。

④卵の加熱が終わったら、すぐに氷水で冷やす。

⑤お皿に卵を割って盛り付け、その上にねぎ醤油をかけ、のりを乗せたら完成。

ローストビーフ

ローストビーフも、均一な火入れができる低温調理なら失敗せずに作れるおすすめのメニューです。

ローストビーフの低温調理に必要になる家電・器具

・低温調理器

・密閉袋

・深めの鍋や専用の調理容器

・フライパン

・冷水用ボウル

アレンジレシピ:ローストビーフの玉ねぎソースがけ

■材料(4人分)

・牛ヒレ肉…400g

・塩…4g

・こしょう…少々

・サラダ油…適量

・玉ねぎ…1個

・醤油…大さじ3

・みりん…大さじ2

・酒…大さじ2

・砂糖…小さじ1

・にんにく…1片

■作り方

①牛ヒレ肉をフォークでまんべんなく刺し、火が入りやすいようにする。

②牛ヒレ肉の全体に、塩とこしょうをして下味をつける。

③フライパンにサラダ油を敷き、中火で肉の表面に焼き色をつける。

④焼き色がついたら、密閉袋に入れて空気を抜き、58℃に設定したお湯に入れて2.5時間加熱する。

⑤玉ねぎ、にんにくの皮をむき、おろし金でおろす。

⑥フライパンにおろした玉ねぎ、にんにく、醤油、みりん、酒を入れ、少し水気が飛ぶまで煮詰める。

⑦煮詰まったら粗熱を取り、冷蔵庫で冷やしておく。

⑧ローストビーフの加熱が終わったら袋のまま氷水に入れて冷やす。

⑨肉が冷えたら、薄くスライスして冷やしたソースをかけて完成。

※ローストビーフ、ソースともに冷やすかどうかはお好みで。

レアサーモン

サーモンは加熱すると身崩れが起きやすいため、低温調理がおすすめです。

レアサーモンの低温調理に必要になる家電・器具

・低温調理器

・密閉袋

・深めの鍋や専用の調理容器

・冷水用ボウル

アレンジレシピ:レアサーモンのハーブマリネ

■材料(2人分)

・生食用サーモン…200g

・塩…2g

・こしょう…少々

・オリーブオイル…大さじ2

・レモン汁…大さじ1

・白ワインビネガー…大さじ1

・砂糖…小さじ1

・にんにくチューブ…少々

■作り方

①サーモンに塩、こしょうをふり下味をつける。

②サーモンを密閉袋に入れて空気を抜き、50℃に設定したお湯に入れて30分加熱する。

③加熱したら袋ごと冷水に入れて冷やす。

④ボウルに、オリーブオイル、レモン汁、白ワインビネガー、砂糖、にんにくを入れてしっかり混ぜ、マリネ液をつくる。

⑤冷ましたサーモンを食べやすいサイズにスライスしてバットに並べ、マリネ液を流し込み、ラップをして冷蔵庫で1時間寝かせたら完成。

低温調理の注意点

食材を柔らかく仕上げられるなど、様々なメリットがある低温調理ですが、知っておくべき注意点も存在します。

加熱不足による食中毒の危険がある

低温調理は加熱温度が低いため、食中毒の危険があります。

食中毒の原因となる細菌類は、高温で加熱することで不活性化します。しかし、低温調理の温度では細菌類を不活性化することができないため、食中毒の危険があります。

また、低温調理の場合、肉の内部が設定温度と同じ温度になるまでにはかなりの時間がかかるため、レシピよりも調理温度を下げたり、時間を短くしたりするのはやめましょう。

高温加熱していないため保存期間が短い

低温調理では、高温加熱をしていないため保存期間も短いです。

高温加熱による細菌の不活性化は、食品を口にした際の食中毒を防ぐだけではなく、その後の保存性を高める役割もあります。食品中の細菌は時間経過と共に増加しますが、加熱が弱いと食品中に多くの細菌が残存し、短時間で一気に増加するため、喫食できる期間も短くなります。

低温調理をする際は、適切な保存はもちろん、食べ切れる量を作ることも意識しましょう。

調理時間が長くなる

低温調理は、低温で長時間加熱するため、調理時間も長くなります。

レシピでも解説した通り2時間加熱することも少ないため、時間のある時に用いる調理法といえます。普段の食事よりも、特別な日や休みの日に一手間加えたい時に活用してあげるとよいでしょう。

【管理栄養士監修】低温調理による食中毒リスクの避け方

低温調理による食中毒リスクは無視できません。ここからは、管理栄養士の視点から具体的な対処方法について解説します。

加熱時間を遵守する

低温調理で食中毒を引き起こさないためには、加熱時間を遵守しましょう。

特に、分厚い鶏肉や牛肉などが中心まで加熱されるには長い時間がかかります。レシピに合わせた加熱時間を守ることで安全に調理を行いましょう。

使用する道具は清潔に保つ

食中毒の予防には、使用する道具の清潔さも重要です。

食中毒を予防するためには、加熱して細菌を不活性化するだけではなく、細菌を「つけない」ことも重要です。家庭での調理時は、ボウルやまな板、包丁などが汚染されていることで食中毒を引き起こすこともあるため、清潔な道具を用いることを意識しましょう。

不安な場合は、煮沸消毒やアルコールによる拭き取りなどが効果的です。

新鮮な食材を使用する

古い食材は細菌の増殖が進んでいる可能性があるため、新鮮な食材を使用しましょう。

購入してから日が経っているものはもちろん、購入時に値引きされているようなものは、前日から売られている商品である可能性があります。そういった食品は細菌の増殖が進んでいるかもしれませんので、低温調理に用いるのは避けるようにしましょう。

冷凍肉や魚は事前解凍してから調理する

低温調理では、中心までしっかり加熱できるよう、事前に解凍してから調理するようにしましょう。

低温調理では中心まで火が入るのに時間がかかります。そのため、冷凍のままの食品を用いると、加熱が終わっても中が生であることも考えられます。低温調理に用いる食品は必ず事前に解凍しておきましょう。

また、解凍する際は常温で放置するのではなく、冷蔵庫で前の晩から解凍したり、電子レンジを用いて素早く解凍したりと、常温時間が長くならないような工夫も必要です。

すぐに食べない場合は調理後すみやかに冷却・保存を行う

後日の食中毒を防ぐためには、調理後速やかに冷却し保存することが重要です。

食中毒の原因となる細菌は、常温で一気に増殖します。そのため、加熱が終わり次第すぐに冷却することで常温状態の時間を短くし、すぐに食べない場合は速やかに冷蔵庫に入れるなどの工夫が必要です。

低温調理を日常に取り入れるポイント

低温調理には器具の準備や時間が必要ですが、どのように日常的に取り入れていけば良いのでしょうか?

初心者はまず「サラダチキン」や「温泉卵」から始めよう

初心者の方は、まずは紹介したサラダチキンや温泉卵など、簡単で作りやすいものからチャレンジしてみましょう。これらのメニューは低温調理であれば失敗せずに作れるため、まずはここから初めてみるのがおすすめです。また、食材自体も安価なためチャレンジしやすいというメリットもあります。

加熱が不十分で失敗してしまった場合は、フライパンで焼いてしまえば廃棄せずに活用できますので、チャレンジするハードルも低いメニューと言えます。

専用器具がなくても炊飯器などを活用できる

低温調理器を使うことを想定したメニューなどを紹介してきましたが、実は炊飯器などでも低温調理を行うことができます。

炊飯器で作る場合、炊飯器にお湯を入れ、密閉袋に食材を入れて空気を抜き、お湯を入れた炊飯器の中に入れて保温すれば調理できます。

低温調理器ほど低い温度での調理はできませんが、ローストビーフやサラダチキンなどは炊飯器でも作ることができます。

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低温調理を食卓に取り入れて日々の自炊を彩ろう!

低温調理は、フライパンなどを用いた加熱調理では作りづらいメニューにも挑戦でき、日々の食事を彩ることができます。しかし、加熱温度が低い分食中毒等のリスクも考えなければなりません。

今回紹介した食中毒を避けるポイントを意識しながら、簡単なレシピからぜひ挑戦してみてください。