猫の飼い主さんなら、だれかを家に呼ぶときに、部屋の臭いが気になるという方も多いのではないでしょうか?また、猫特有の臭いが気になって、どうにかしたいと思っている方も少なくありません。
今回は、猫を飼っている部屋特有の臭いの原因と対策、臭い対策をする際の注意点について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
猫を飼っている家が臭いと感じる原因
猫の臭いで気になるものがあるとすれば、体とトイレが思い浮かぶのではないでしょうか。ここでは、猫の体とトイレの臭い、それぞれについて解説します。
猫の体からの臭い
動物は臭うというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、健康な猫はほとんど体臭がありません。猫の唾液が無臭で消臭効果があるため、毛づくろいをすることで、猫は自ら臭いを消していると言われています。
しかし、健康な状態の猫からも、以下のような体臭を感じることがあります。
わずかな汗による臭い
動物の毛は、温まると臭いが強くなる性質があるため、日光浴している猫から香ばしい臭いを感じることがあります。また、人と異なり、猫は鼻と肉球のみに汗をかくのが特徴です。
そのため、猫の鼻や肉球からポップコーンのような臭いを感じる場合は、わずかな汗による臭いの可能性もあります。
肛門腺に溜まる分泌液の臭い
猫の肛門の回りには、分泌液が溜まる肛門腺という嚢があります。この肛門腺に溜まる分泌液は、非常に強い臭いを放つのが特徴です。
通常、分泌液はうんちと一緒に排出されますが、自力でうんちと一緒に排出できない猫もなかにはいます。肛門腺に分泌液が溜まると、嫌な臭いがするようになるケースもあります。
猫のフェロモンによる臭い
猫のフェロモンは、額や耳の付け根、アゴから出ています。従来、フェロモンは猫同士で感じとれるものと思われていましたが、近年の研究では、人も無意識の中でフェロモンを感じているという報告があります。
そのため、猫の顔から臭いがする場合は、猫のフェロモンを感じているのかもしれません。
猫の体の臭いから疑われる病気
健康な猫はほとんど体臭がありませんが、病気が潜んでいると体臭が強くなる場合があります。
口からの臭い・・・歯肉炎や歯周病、口内炎など
猫の口元から強い臭いがする場合、フードやおやつのカスが詰まっている以外にも、歯肉炎や歯周病、口内炎、胃腸の病気、腎臓病などの病気により、口臭がきつくなっているケースもあります。
猫や犬に虫歯はないものの、歯垢が歯石になるスピードが人より早いです。そのため、歯石が付着すると、歯肉炎や歯周病を起こし、口の臭いがきつくなります。口臭以外にも、歯ぐきの腫れや出血、歯が抜けるなどの症状があります。
また、口内炎も口臭の原因の一つです。口内炎では、よだれを垂らしたり、ものを食べたりするときに痛がる様子が見られます。さらに、胃腸や腎臓の病気でも、口臭がするケースもあります。
耳からの臭い・・・外耳炎といった耳の病気
耳から臭いがする場合には、ミミヒゼンダニや細菌、マラセチアなどの真菌(カビ)が原因の外耳炎といった耳の病気が疑われます。
外耳炎では、臭いのほかに、耳に赤味や腫れが見られたり、耳垢が多量に出たり、黄色や黒茶色の耳垢、膿のような耳垂れが出ることが特徴です。外耳炎の猫では、後足でしきりに耳をかく、頭を振るなどの行動が見られるようになります。
おしりの臭い・・・感染による肛門腺炎
肛門腺の臭いには個体差もありますが、あまりに臭いようならば、感染による肛門腺炎を起こしている可能性があります。また、自力で分泌物を排出できない猫では、分泌物の溜まりすぎにより、肛門腺の嚢が破裂してしまうケースもあるのです。さらに胃腸障害では、おしりに下痢や軟便が付着することがあります。
皮膚からの臭い・・・皮膚炎や皮膚の化膿
皮膚炎や皮膚が化膿することで、体から嫌な臭いを発しているケースもあります。化膿とは、膿(うみ)を作っている状態のことです。
一部の猫は、アゴの部分ににきびのようなものができやすく、その部分が化膿を起こす場合もあります。そのほかには、体調不良や加齢によって毛づくろいがあまりできていない場合、歯周病などによる口の臭いが毛づくろいによって被毛につく場合などもあります。
猫のトイレや粗相などおしっこの臭い
猫との暮らしの中で、気になる臭いとして特に多いのが、トイレやおしっこ、うんちの臭いではないでしょうか。
猫のおしっこの臭いの特徴
猫のおしっこの臭いの元となっているのは、アミノ酸の一種の「フェリニン」という物質です。空気に触れると「チオール」という物質に変化して、あのツンとした強い臭いを発します。
特に、去勢していないオス猫のおしっこは、メス猫や去勢済みのオス猫に比べると、さらにきつい臭いがするのが特徴です。そのため、猫のおしっこの粗相やトイレからのはみ出しは、部屋の臭いの原因となります。
さらに、マーキング行為(スプレー)は、おしっこを濃くしたような臭いがします。壁などにスプレーをされると、普通に拭いただけではなかなか臭いが取れません。賃貸の場合は退去時のトラブルを避けるために、必ずペット可の物件を選びましょう。
また、おしっこと同様にうんちの臭いも強いため、すぐに片づけてあげないと、部屋に嫌な臭いが残ってしまいます。
猫のおしっこの臭いや粗相から疑われる病気
普段より猫のおしっこが臭い、あるいは刺激のある臭いがする場合は、細菌性の膀胱炎の可能性があります。また糖尿病の猫では、おしっこから甘酸っぱい臭いがするのが特徴です。
さらに、腎臓病や甲状腺機能低下症など多飲多尿が見られる病気では、薄いおしっこを多量に出し、その結果、おしっこがほぼ無臭になることもあります。
猫の体の臭いへの対策
ここでは、自宅でできる猫の体の臭いへの対策をご紹介します。
猫の体の臭いには、定期的なお手入れがおすすめです。臭いを防ぐだけでなく、病気の早期発見にもつながります。
日頃のブラッシングを行う
日頃からブラッシングをすることで、抜け毛や汚れが落ち、被毛を清潔に保てます。さらに、ウェットタオルなどで体を拭くのもおすすめです。
肛門腺のお手入れをする
肛門の周辺から嫌な臭いがしたり、肛門付近を壁や床に擦り付けたりしていたら、肛門腺を絞ったほうが良いサインです(分泌液を出す)。
まずは、使い捨ての手袋やペット用の臭い消しスプレー、ティッシュ、袋などを用意します。肛門腺を絞ると分泌液が周りに飛び散ることがあるので、お風呂で絞るか、ティッシュで押さえながら絞るようにしてください。
肛門腺は、肛門を中心に見て、4時と8時の位置の2箇所です。その部分に人差し指と親指をあてて肛門腺を確認し、やや下側から肛門に向かって、肛門嚢の分泌液を上にキュッと押し上げるように絞ります。
1回で絞り切るのは難しいため、何回かに分けましょう。肛門腺絞りをすると、分泌物の臭いでおしりが臭くなるため、ティッシュに臭い消しスプレーなどを吹きかけて、おしりを拭いてあげてください。自宅で絞るのが難しければ、無理せず、動物病院やトリミングサロンにお願いしましょう。
口腔内を清潔に保つ
猫は、食べかすの付着や歯垢も溜まりやすいため、日頃から食後の歯磨きを習慣づけて、口腔内を清潔に保ちましょう。口周りを触られることを嫌がる場合には、噛むことで歯磨きができるおもちゃや、デンタルケアのおやつなどを試してみるのがおすすめです。
歯磨きで改善されないほど臭いがひどいときは、早めに動物病院を受診しましょう。
シャンプーをする
猫は、毛づくろいで自らの体を清潔に保てるため、基本的にシャンプーは必要ありません。ただし、排泄物で体が汚れてしまった、高齢で毛づくろいができない、口臭が強く毛づくろいによって被毛に臭いつくなど、自らの毛づくろいで清潔に保てない場合は、シャンプーをしてあげましょう。
おしりだけや足だけなど、汚れた部分のみを洗う場合は、ノズル部分が伸びて引き出せるシャワーがついている洗面台(シャンプードレッサー)があると、非常に便利です。
部屋の掃除をこまめにして衛生的に保つ
部屋に臭いをこもらせないためには、日頃からの換気が大切です。特に夏は高温多湿になるため、空気中に臭いの分子が増え、臭いを感じやすくなります。冬は部屋をしめきりがちになるので、換気を心がけましょう。
頻繁に窓が開けられない場合には、空気清浄機の使用や、24時間換気システムのある物件を選ぶのがおすすめです。また、トイレからはみ出した猫砂が部屋中に散らばっていたり、猫の抜け毛が溜まっていたりすると臭いの原因になるので、掃除もしっかり行いましょう。
猫のトイレの臭いへの対策
ここでは、トイレの臭いへの対策をご紹介しますので、ぜひ試してみてください。
1日2~3回ほど掃除をするように心掛ける
おしっこやうんちは長時間放置せず、日中仕事をしている場合でもできれば1日2~3回、最低でも1日1回はトイレを確認し、掃除をするようにしましょう。
システムトイレの場合は、うんちを取り除き、下のトイレシートが汚れたらこまめな交換が必要です。トイレ周りも、ウェットティッシュなどで拭きましょう。もし、おしっこがトイレからはみ出てしてしまうことが多い場合は、トイレ周りにペットシーツを敷き、こまめに取り替えるようにすれば掃除が楽になります。
もしスプレー行動やトイレ以外でしてしまった場合は、水拭きした後に消臭スプレーをかけるようにしましょう。
猫砂は月に1回以上は取り替える
猫砂にはいろいろな種類があり、消臭力もさまざまです。しかし、どんな猫砂でも、月に1回は全部取り替えるようにしましょう。
トイレを丸洗いしたら必ず天日干しする
猫のトイレの多くは、プラスチック製です。長く使い続けていると、爪で引っかかれたり、猫砂でこすられたりしてできた表面の傷に、臭いがつきやすくなります。月に1回は、やわらかいスポンジを使って中性洗剤で全体を丸洗いし、天日干ししてから抗菌用スプレーなどで消毒をしましょう。
もし、同じものをずっと使い続けて、トイレ自体に臭いが染み込んでしまっているときには、トイレの買い換えを検討しましょう。
猫の粗相などおしっこの臭いへの対策
猫が病気以外で粗相を繰り返す場合は、以下のような原因が考えられるため、その原因にあった対策をしましょう。また、猫のおしっこの臭いが壁や床に染み付くと、なかなか取れません。賃貸の場合は退去時のトラブルを避けるためにも、ペット可の物件を必ず選ぶことが大前提です。
トイレを1〜2個増やす
猫は汚い場所での排泄を嫌がるため、留守番のときなど、すぐに排泄物を片づけできないときに粗相をするのであれば、この理由が考えられます。その場合、トイレを1〜2個増やして、いつでもきれいなトイレを使えるようにしてみましょう。
トイレや猫砂をいくつか試す
こだわりの強い猫の中には、トイレの形状や猫砂が気に入らないために、粗相をするケースがあります。トイレや猫砂は、さまざまな種類のものが販売されています。大きさやサイズ、形状など、いくつかの種類を試してみて、愛猫が気に入るものをさがしましょう。
静かで落ち着けるスペースにトイレを設置する
人の出入りが激しい場所や、騒音や振動が気になる場所では、猫が落ち着いて排泄ができない場合があります。猫が安心して排泄できるよう、静かで落ち着けるスペースにトイレを設置してあげましょう。
病気が疑われる場合には動物病院を受診しよう
前述したように、猫の体から嫌な臭いがするときは、耳や皮膚などの病気にかかっている場合があります。日頃から愛猫を観察し、気になることがあれば、早めに動物病院を受診しましょう。
獣医師が教える、猫の臭い対策で意識すべき3つのこと
どうしても臭いが気になる場合、消臭剤や芳香剤を使う飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか?ここでは、猫の臭い対策をする際に意識すべき点について解説します。
猫が舐めても安心なものを選ぶ
消臭剤や芳香剤、消臭スプレーの中には、猫の体に悪影響を及ぼす成分が含まれていることがあります。これらを使用する際には、必ずペットに配慮した商品をペットショップで選ぶようにしましょう。
強い香りのものは避ける
猫は強い香りがとても苦手なため、消臭剤や芳香剤は優しい香りのものを選ぶのがおすすめです。強い香りの消臭剤や芳香剤を使用すると、ストレスから粗相などの問題行動につながることもあります。
猫にアロマは禁忌であることを認識する
部屋をいい香りにしたいからと、部屋の中でアロマを焚いたり、使用したりする人もいるかもしれません。
しかし、植物の成分を抽出して、何倍にも濃縮した精油(エッセンシャルオイル)やそれを含むアロマオイルは、猫にとっては少量でも危険です。そのため、猫がいる部屋でアロマを焚いたり、香りのあるものを使用したりするのは避けましょう。
おすすめの猫の臭い対策グッズ3選
ここでは、猫の臭い対策におすすめのグッズをご紹介するので、ぜひ試してみてください。
おしっこ汚れ専用お掃除シート
おしっこ専用のお掃除シートです。おしっこの汚れを落とすだけでなく、消臭や除菌もできます。
強力消臭・染み抜きスプレー
食物由来成分のみを使用しているものを選びましょう。消臭だけでなく、シミや汚れにも対応してくれます。
ペット用お部屋の消臭剤
人気なのは、スイッチを入れるだけで部屋のすみずみまで成分が広がるタイプの消臭剤です。1日24時間の使用で、約60日間も効果が持続し、部屋に漂うペット特有の嫌な臭いを良い香りに変えてくれます。
気になる猫の臭いを軽減しよう!
健康な猫はほとんど体臭がないため、もし部屋から強い臭いがするのであれば、掃除不足か、猫が何らかの病気にかかっている可能性があります。
日頃から愛猫の様子をしっかり観察し、気になることがあれば動物病院を受診することをおすすめします。適切な消臭対策をしっかり行って、愛猫と飼い主さん、双方にとっての快適空間を整えるようにしましょう。