イモリは小さくて飼育が容易なことや、強健で寿命も長いことから、近年ペットとしての人気が高まっています。
今回はイモリの特徴や主な種類、飼育に必要なもの、飼育環境や方法、飼育する際のポイントまでを詳しく解説します。
これからイモリをお迎えしようと考えている方はもちろん、これまでイモリに関心がなかった方もぜひ目を通してみてください。
イモリとは?
日本で「イモリ」と呼ばれているものは主に「アカハライモリ」であることが多く、アカハライモリは有尾目イモリ科イモリ属に分類される両生類です。アカハライモリは日本の固有種で、本州や四国、九州に分布しています。
全長は15cm前後で、4本の指がある短い前足と5本の指がある後ろ足、そして長い尻尾を持っており、名前の通り背中は黒や茶褐色をしていますが、腹の部分は赤地に黒の斑点模様があるのが特徴です。
ただ、赤みや斑点には個体差や地域差があり、お腹にまったく斑点が無いものや、逆に背中まで赤いものなどさまざまいます。
イモリとヤモリの違い
イモリとヤモリは、名前や見た目が似ていることから混同されやすいですが、実際はまったく違う生き物です。
まず、ヤモリは爬虫類であり、家のガラス窓などによく張りついているのに対し、イモリは両生類であり、水辺でよく見られます。また、イモリには鱗が無く全身がヌルヌルとした粘液によって覆われていますが、ヤモリは全身に鱗があります。
色については、イモリは先述したように背中が黒もしくは茶褐色で、腹の部分は赤地に黒の斑点模様がありますが、それに対して主に見かける二ホンヤモリは灰色や褐色、中には白い色をしている個体もいるのです。
さらに、ヤモリには足先に「趾下薄板(しかはくばん)」と呼ばれる器官がついており、それによりガラス窓などの垂直な面に張りつくことができますが、イモリは趾下薄板が無く、ガラス窓に張りつくことはできません。
ペット人気のあるイモリの種類5選
イモリにはアカハライモリをはじめ、さまざまな種類がいます。ここからは、なかでも飼育できる代表的なイモリを5種類ご紹介します。是非参考にしてください。
①アカハライモリ
日本でもっとも多いアカハライモリは、「ニホンイモリ」とも呼ばれ、本州や四国、九州など幅広く生息しています。
水田や池、小川といった水場で、野生のアカハライモリは暮らしているため、野生でも多く見つけられる種類です。ただ、埼玉県や愛知県といった特定の地域では、アカハライモリを「保護対象」に指定しており、捕獲禁止のため注意しましょう。
ペットショップなどでは、珍しい模様を持っている個体は高い金額がつけられることもありますが、基本的に流通量が多いため、1匹400〜700円と安価で購入することできます。
②イボイモリ
イボイモリは、イモリのなかでも「生きた化石」と呼ばれ、古くから存在する希少性の高い種類です。主に奄美大島や沖縄本島に生息しており、背中にゴツゴツとした大きな肋骨の隆起があるのが特徴です。
また、全身のほとんどが黒褐色で、手足の裏や肛門付近などがオレンジ色になっている個体が多く見られます。ただし、日本のイボイモリは絶滅の危機にあり、天然記念物に指定されているため、一般的に飼育をすることはできません。
ですので、イボイモリを飼育してみたい場合は、中国に生息しているミナミイボイモリを代わりに検討してみてください。
③シリケンイモリ
シリケンイモリは、「渡瀬線(わたせせん)」と呼ばれる、奄美大島と屋久島の間に引かれた境界線の南側の暖かい地域に生息しています。さらに、奄美大島に生息するアマミシリケンイモリと、沖縄に生息するオキナワシリケンイモリの2つの亜種にシリケンイモリは細分化されるのです。
また、黒色の背中に金色の斑点と特徴的な見た目をしており、腹の部分に関しては、赤やオレンジなど個体によってさまざまな色をしており、1匹900〜1,500円ほどで購入できます。
④シナイモリ
シナイモリは、主に中国中東部に生息しており、「チュウゴクイモリ」とも呼ばれる種類です。見た目は、アカハライモリに似ていますが、サイズがやや小さく、お腹の赤色は薄めという違いがあります。
シナイモリは手頃な価格で手に入りますが、流通量が少ない種類のため、ショップなどで出会えた際には早めにお迎えを検討しましょう。
⑤マダライモリ
マダライモリは、全身のまだら模様が特徴の種類です。人懐っこい性格の子が多く、お世話もしやすいため、一度は飼ってみたいとイモリ好きに非常に人気があります。
他の種類と比べてマダライモリの価格は高めですが、見た目の派手さや人懐っこい性格、水をほとんど必要としない飼いやすさが魅力です。
イモリの入手方法
ここではイモリの入手方法について解説していきます。
ペットショップからお迎えする
初心者にとって最も手軽で安心なイモリの入手方法は、ペットショップです。
ペットショップでは、飼育に適した健康なイモリが販売されており、専門知識を持ったスタッフから飼育方法や必要な設備についてのアドバイスを受けることができます。特に初心者向けの種や個体を選ぶことで、スムーズに飼育を始めることができるでしょう。
イモリに適した餌や飼育グッズも揃っているため、一度に必要なものを揃えることができるのも魅力です。
自然界のイモリを入手する
自然界から入手する方法は、少し冒険心が必要ですが、自然環境を楽しみながらイモリを見つけることができます。
イモリは湿地や小川、池などの水辺に生息しています。自然界でイモリを捕まえる場合は、環境に配慮しながら行動することが重要です。地域によっては野生動物の捕獲が規制されている場合があるため、事前に自治体の規制や法律を必ず確認しましょう。
なお自然から捕まえたイモリは、環境の変化に敏感でストレスを感じやすいため、飼育環境を整える際には特に注意をする必要があります。
イモリの飼育に必要なもの
ここでは、イモリを飼育する際に必要なアイテムをご紹介します。イモリをお迎えする前にしっかりと準備し、万全の環境を整えてあげましょう。
水槽とフタ
イモリはツルツルしたガラスであっても上手に登ることができ、脱走の名人であるため、蓋が閉まる水槽が適しています。
例えば「グラステラリウム」という爬虫類専用のケージや、ガラス水槽に脱走防止用のフタやネットを付けたものなどです。イモリの体の大きさや設置場所、飼育する数などを考慮し、適切なサイズの水槽を選びましょう。
底砂
底砂とは水槽の底に敷く砂のことで、「床材」とも呼ばれています。陸棲を好む種類には、なるべく床材となるものを用意します。また、底砂を入れることにより、水質が安定したり、バクテリアがフンや餌などの有機物を分解したりといった効果が得られるため、水棲のイモリにもおすすめです。
さらに底砂を取り入れることで、水槽の中がお洒落に見えたり、陸地を作るための高低差をつけられたり、水草を植えつけたりすることもできるようになります。ただ、細かい砂を使ったり、厚く敷いたりすると掃除が大変になるため、目の粗い砂を1cmほどの厚さで水槽の底に敷くのがおすすめです。
流木や浮島、水草などのレイアウト用品
シリケンイモリなどほとんど陸地にいる種類は、陸地を作成してあげましょう。水棲傾向の強いアカハライモリなどの種類も、水から離れて休憩できる場所がある方がより快適に暮らせます。
底砂で陸を作ることもできますが、底砂は管理が難しいため、初心者の方にはおすすめできません。まずは、簡単に陸地を作れる流木や浮島を設置して陸地を確保しましょう。さらにイモリは強い水の流れを好まないため、水草や流木や浮島などさまざまなアイテムを設置することができます。
設置物を増やすとレイアウトの幅が広がり水槽内もお洒落に見えますが、水質の管理や掃除が大変になるため、その点については考慮しておきましょう。
ろ過装置(フィルター)
ろ過装置とは、水槽内の水を吸い取って内部でフィルターに通すことによって不純物を取り除き、浄化した清潔な水を吐き出す器具です。イモリにろ過装置は必須ではありませんが、水槽内の水はイモリのフンや餌ですぐに汚れてしまうため、少しでも水の管理を楽にするためにろ過装置を使用しましょう。
特に底砂や水草、陸地といったさまざまなアイテムを設置すると、掃除や水換えが大変になります。ろ過装置があると水を綺麗に保ったり、水を循環させたりできるため水の管理をするのに便利です。
イモリを飼育するうえで大切な5つの基礎知識
イモリを飼育する環境が整ったら、次は適切なお世話の方法を理解しましょう。
①エサの種類は「生き餌」「冷凍餌」「乾燥餌」の大きく3種類に分けられる
イモリを健康に育てるためには、適切なエサを選ぶことが重要です。イモリのエサは大きく分けて「生き餌」「冷凍餌」「乾燥餌」の3種類があります。
生き餌
オタマジャクシやメダカ、イトミミズや昆虫、アカムシなどの生き餌は、イモリにとって自然に近い食事です。生き餌は動きがあるため、イモリの捕食行動を刺激し、自然な行動を引き出します。ただし、生き餌は保存の難しさや値段の高さがあり、餌自体の衛生管理にも注意が必要です。
冷凍餌
冷凍されたアカムシやブラインシュリンプなどは、栄養価が高く便利なエサです。冷凍餌は長期間保存が可能で、必要な時に解凍して与えることができます。衛生的で手軽に利用できるため、多くの飼育者に人気があります。
乾燥餌
市販されている乾燥したエサは、手軽で保存が簡単なため、初心者にも扱いやすいです。栄養バランスが整えられており、イモリに必要な栄養素を簡単に提供できます。ただし、イモリによっては乾燥餌を好まない場合もあるため、最初は少量を試してみることが重要です。
②エサを与える頻度は「1日1~2回」がベスト!与えすぎに気を付けて
野生のイモリは1週間に1、2回ほどしかエサを食べないので、飼育しているイモリにエサを与える頻度も2、3日に一回程度で問題ありません。毎日餌を与えないと不安を感じる場合は、1回のエサの量を減らして1日1回与えるようにしましょう。
③水温を常に「20〜27℃」を保つ
イモリは変温動物で、自分で体温調節をしないため、体温は気温によって影響されます。そのため、夏場はエアコン、冬場には暖房やペット用のヒーターなどを利用して、室温が20~25℃になるよう調整しましょう。
また、イモリは水温が20℃を下回ると徐々に動きが鈍くなり、16℃くらいまで水温が下がってしまうと餌を食べなくなってしまいます。逆に、水温が27℃を上回っても暑すぎて餌を食べなくなってしまうため、エアレーションをとりつけたり、ファンを設置して水温を下げ、水温を20〜27℃に保つことも重要です。
④水槽の水位は「15~20センチ」と低めにする
イモリの水槽の水位は、15~20センチ程度と低めに設定しましょう。15~20センチ程度に設定をすることで、イモリが水面に簡単に浮上して呼吸することができます。
水位が高すぎると、イモリが疲れてしまい、ストレスや健康問題を引き起こす可能性があるので注意をしましょう。
⑤水換えや掃除の方法と頻度は定期的に行う
フンやエサの食べ残しなどがあると、イモリの健康状態にも悪い影響を与えます。水質や水槽内の衛生環境を保つために、定期的に水換えや掃除をしましょう。
水換えは1~2週間に1回、水槽全体の掃除は月に1回のペースが目安です。
イモリ飼育の1日の流れ
イモリ飼育の1日の流れを解説していきます。あくまで例なので、ご自身が飼育しているイモリの様子を見ながら、適宜行ってくださいね。
朝にすること
室温と水温と環境を確認する
朝起きたらまず、水槽の水温を確認します。イモリに適した水温は20〜27℃です。水温が適正範囲内にあることを確認し、必要に応じてヒーターやクーラーを調整します。
また、留守にする飼い主さんは日中の室温が20~25℃になるよう調整してから出掛けましょう。さらに水槽内の環境もチェックし、異常がないかを確認します。
水質の確認を行う
次に水質を確認します。水質検査キットを使用して、アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩のレベルをチェックし、適切な範囲にあるかを確認します。水質が悪化している場合は、水換えを行うなどの対策を取ります。
餌を与える
イモリに餌を与えます。イモリの餌は、生き餌、冷凍餌、乾燥餌などをバランスよく与えることが大切です。適量を与え、食べ残しが出ないように注意します。食べ残しは水質悪化の原因となるため、残った餌は取り除きます。
観察と環境整備を行う
イモリを観察し、動きや食欲、体の状態に異常がないかを確認します。また、陸地や水槽内の装飾品が汚れていないか、適切に配置されているかをチェックし、必要に応じて整備を行います。
水槽の水を補充する
水槽の水が減っている場合は、適温の水を補充します。水を補充する際は、カルキ抜きなどを使用して水質がイモリに適した状態であることを確認します。
清掃を行う
水槽の部分的な清掃を行います。底砂の掃除や、水槽のガラス面の汚れを取り除きます。定期的な清掃を行うことで、水質を保ち、イモリの健康を維持します。
夜にすること
イモリの健康状態を確認する
夜にイモリの健康状態を再度確認します。イモリの体に異常がないか、動きや行動に問題がないかを観察します。異常が見られた場合は、早めに対策を講じます。
室温の管理を行う
夜間の水温が適切な範囲内に保たれているかを確認します。特に冬場や夏場は室温管理が重要です。必要に応じて、ヒーターやクーラーの設定を調整し、安定した環境を維持しましょう。
週や月に1回すべき、イモリ飼育のメンテナンス
ここからは、週や月に1回行うべきイモリ飼育のメンテナンスについて解説していきます。
水槽の水の1/3を新しい水に交換する
イモリの飼育環境を清潔に保つためには、週に1回、水槽の水の1/3を新しい水に交換することが重要です。交換をすることで、水質が安定し、イモリの健康を維持できます。
水を交換する際は、必ずカルキ抜き剤を使用して、水道水の中の有害な成分を除去してください。また、新しい水の温度が水槽内の水温と同じになるように調整し、急激な温度変化を避けるようにしましょう。
水槽のフィルターを掃除する
水槽のフィルターは、水を循環させ、汚れや不純物を取り除く役割を果たします。週に1回、フィルターを取り外して掃除することで、フィルターの性能を維持し、水質を保つことができます。
フィルターの掃除は水槽の水を使用して行い、水道水は使用しないようにしてください。水道水には有害な成分が含まれており、フィルター内の有益なバクテリアを殺してしまう可能性があります。
水槽全体を軽く掃除する
水槽全体の掃除を月に1回行います。水槽の内側のガラス面に付着した藻や汚れを、専用のスクレーパーやスポンジで取り除きます。また、底砂やデコレーションアイテム(流木や岩など)に付着した汚れも掃除します。
底砂の掃除には、底砂クリーナーを使用すると効率的です。掃除の際はイモリを驚かせないように注意し、作業を丁寧に行うことが大切です。
イモリ飼育における注意点
最後に、イモリを飼育するうえでの注意点について解説します。
①かかりやすい病気に注意する
イモリは水や水槽内が汚れていたり、室温や水温に問題があると病気になってしまうことがあります。よく見られる病気としては、消化不良やカエルツボカビ病、水カビ病、モルチベストなどです。
そのため、イモリを飼育する場合は、しっかりと対策をして病気を予防し、イモリの健康状態を日々観察するようにしましょう。
②不用意に触らない
温度管理の項目にも書きましたが、イモリの水温の適温は20〜27℃です。
そのため、36℃である人間の体温は、イモリにとってヤケドしてしまうほど熱いのです。ですので、イモリを触る場合は手を水につけて十分に冷やし、長時間触らないようにしましょう。
③脱走に注意する
イモリは垂直に立ったガラスくらいなら難なく登ることができるため、事故で一番多いのが「脱走」です。小さな隙間があればそこから逃げ出してしまうため、そのようなことがないように脱走されにくいケージ選びや隙間を塞ぐ対策を施しましょう。
④エサを与え過ぎない
イモリは与えられたエサを、与えただけ食べてしまうという習性があります。エサの与えすぎが原因で消化不良や肥満を起こしてしまわないよう、エサの与えすぎには注意をしましょう。
⑤触れ合う前後はしっかりと手洗いを行う
イモリは腹の部分が赤色と派手な色をしていますが、この派手な色は毒があることを他の生き物に知らせるための「警告色」と呼ばれるものです。
イモリは陸上で危険を感じたり、強い刺激を受けると、横に倒れて体を反らせることでお腹を見せ、「テトロドトキシン」という毒により身の安全を確保しようとします。
この毒は、人が触る程度であれば特に問題はありません。しかし、粘膜などデリケートな部分に触れると痛みや炎症を起こす恐れがあります。イモリに触れた手で目などをこすると危険なため、イモリと触れ合う前後にはしっかりと手洗いを行いましょう。
自宅でイモリを飼育してみては?
今回は、イモリの飼育方法について解説しました。イモリは10年以上生きるため、飼い始める前には、最後まで面倒が見れるか検討することがとても大切です。
イモリについての基本をしっかりと理解した上で、イモリが快適に生活できるように工夫してみてください。