「オール電化はやめとけ」といった声を耳にしたことはありませんか?一見便利そうに見えるオール電化住宅にも、生活スタイルによっては向き不向きがあります。特に、電気代の高騰や停電時のリスクなど、実際に住んでみて初めて感じるデメリットもあるため、事前の理解が欠かせません。
本記事では、オール電化が「やめとけ」と言われる理由を整理しつつ、メリットや向いている人の特徴も合わせて解説します。これからオール電化の賃貸物件を検討している方に向けて、チェックポイントも紹介しますので、物件選びの参考にぜひご活用ください。
「オール電化はやめとけ」と言われる理由
オール電化には便利な面がある一方で、「やめた方がいい」と指摘される声も少なくありません。ここでは、導入前に知っておきたいデメリット・懸念点を解説します。
停電時に生活機能に制限がかかる
オール電化住宅では、調理・給湯・暖房など、生活に必要なあらゆる機能が電気に依存しています。そのため、停電が発生するとIHコンロや電気温水器、エアコンなどの電気設備がすべて停止し、ライフラインが一時的に完全に使えなくなる恐れがあります。特に災害時などに長時間停電が続くと、生活に大きな支障をきたす可能性があります。
これに備えるためには、ポータブル蓄電池やカセットコンロ、飲料水・非常用食料などを用意しておく必要があります。一般的な住宅に比べて「電気しか使えない」点が、緊急時においては弱点になるでしょう。
使用できる調理器具が限られる
オール電化のIHコンロは、鉄やステンレスなど磁性のある素材にしか対応していません。土鍋やアルミ鍋、ガラス鍋など、従来使っていた調理器具の多くが使用できないため、買い替えが必要になることがあります。家族構成や調理スタイルによっては、使い勝手が大きく変わる点に注意が必要です。
また、IHは加熱方式の性質上、鍋を振って調理する炒め物や中華料理などにはやや不向きです。火力が見えず調整が感覚的にわかりにくいと感じる方もおり、ガス火のような直感的な操作性を求める方にとってはストレスとなる場合があります。
エコキュートの性能に不満が残る可能性がある
エコキュート(電気温水器)は、電気を使って夜間にお湯を沸かし、タンクに貯めて使う仕組みです。しかし、タンク容量には限りがあり、想定以上に使用すると「湯切れ」が起こり、お湯が使えなくなることもあります。特に来客時や寒い季節には、お湯の使用量が増えるため注意が必要です。
また、一度湯切れが起きた場合は、再びお湯を沸かすまでに時間がかかります。中には即時の沸かし直しができない機種もあり、急な使用には不便をきたすことがあるでしょう。
日中の電気代が高い傾向にある
オール電化向けの電気料金プランは、深夜電力を安く設定し、日中の電力単価を高く設定しているケースが多いです。昼間の在宅時間が長い家庭や、昼間に電気を多く使うライフスタイルの方は、思ったより電気代がかさんでしまうことがあるでしょう。
特に共働きではなく、在宅勤務や子育て・介護で日中に電気を頻繁に使う家庭では、プランのメリットを享受しづらくなります。エアコンや洗濯機などを昼に使う頻度が多いと光熱費が割高になるため、生活スタイルと料金プランが合っているかの見極めが重要です。
設置・メンテナンスコストが高い
オール電化設備は初期導入費用が高く、特にエコキュートやIHクッキングヒーターなどは数十万円の出費となるケースも珍しくありません。また賃貸物件の場合、オール電化仕様の部屋は初期コストを反映して家賃が高めに設定されている傾向があります。
なお、入居後に設備が故障した際、修理費や代替設備の用意について貸主との調整が必要になる場面もあり、トラブルに発展することもあります。
オール電化の仕組みと基本知識

オール電化は安全性の高さや効率の面から注目されています。ここでは、その仕組みや代表的な設備について解説します。
オール電化とは?基本の設備と構成
オール電化とは、家庭内で使用するエネルギーをすべて電気でまかなう住宅のことを指します。調理はIHコンロ、給湯はエコキュートや電気温水器、暖房はエアコンや電気ヒーターなどが主に使われます。
火を使わないことから、火災やガス漏れのリスクが軽減でき、安全性が高いとされています。小さな子どもや高齢者のいる家庭でも安心して暮らせる点が魅力です。
主なエネルギー供給源
オール電化住宅での調理には、主にIHコンロが使用されます。IHは熱効率が高く、火力の立ち上がりも早いため、時短調理に適しています。また加熱面がフラットなため拭き掃除がしやすく、油汚れも簡単に落とせる点が魅力です。
給湯には、電気温水器やエコキュートが使われることが一般的です。これらは夜間の安価な電力を利用してお湯を沸かし、貯湯タンクに蓄えておく仕組みになっています。さらに、停電への備えとして蓄電池や太陽光発電を組み合わせる家庭も増えており、万が一のライフライン停止時にも一定の対応が可能です。
電気料金プランとの関係性と注意点
オール電化向けの電気料金プランは、一般的に「時間帯別」の設定がされています。夜間の電気代を安く、昼間の電気代を高く設定することで、光熱費の節約が図れる仕組みになっています。正しく使えばコストを抑えられる反面、ライフスタイルに合っていないと逆効果になることもあります。
特に注意が必要なのは、日中に電気を多く使う家庭です。在宅勤務や育児、介護などで日中にエアコンや調理家電を頻繁に使うと、割高な昼間料金が適用され、電気代が想定以上に高くなることもあります。契約プランの内容をよく理解し、ライフスタイルに合った使い方をすることが大切です。
オール電化のデメリット・懸念点
暮らしを快適にするオール電化ですが、思わぬ不便さやコスト面での不安も指摘されています。ここでは、実際に住んでみて感じるリスクや注意点を見ていきましょう。
電気料金が高くなる場合がある
オール電化では、契約する電力プランによって電気料金に大きな差が生まれます。夜間電力の安さを活かせる家庭にとってはお得ですが、日中の電気単価が高く設定されていることが一般的です。そのため、昼間に電力使用が集中する家庭では、思った以上に電気代が高くなることがあります。
特に在宅時間が長い家庭や、エアコン・洗濯乾燥機などを昼間に多用する場合は、従来のガス併用住宅よりも光熱費が高くなるリスクがあります。電気の使用時間帯や量を意識して調整できないと、オール電化のコストメリットを感じづらくなる点に注意が必要です。
災害時・停電時にライフラインに制限がかかる
オール電化住宅では、すべての生活インフラが電気によって動いているため、停電が発生すると一斉に機能が停止します。IHコンロが使えなくなり、暖房も効かず、エコキュートも新たにお湯を沸かせなくなるため、災害時には特に不便を感じる場面が多くなります。
もちろんタンクに残っているお湯を使ったり、蓄電池や太陽光発電があればある程度の対策は可能ですが、あくまで「備えている場合」に限られます。
導入・修理費用が割高になるケースが多い
オール電化設備は、ガス機器に比べて導入費用が高くなる傾向があります。特にエコキュートは本体価格・工事費込みで数十万円規模の出費となることもあり、新築やリフォーム時にコスト負担が大きくなることがあります。さらに、IHコンロや床暖房なども加えると、トータルコストはさらに上昇します。
また、故障した際の修理費も注意が必要です。IHコンロやエコキュートの修理・交換は専門業者による対応が必要で、部品代や出張費を含めて高額になるケースがあります。賃貸物件の場合は貸主側の判断となるものの、対応に時間がかかることもあるため、入居前に設備の築年数やメンテナンス状況を確認しておくと安心です。
オール電化のメリット

オール電化は使い方次第で、家計や安全性の面で大きなメリットが得られます。ここでは、暮らしにプラスになる具体的な利点について解説します。
火を使わないため安全性が高い
オール電化住宅では、調理や給湯、暖房などをすべて電気で行うため、ガスの使用が不要です。火を使わないことで火災やガス漏れといったリスクを抑えられるのは大きなメリットです。
特に、小さな子どもや高齢者のいる家庭では、IHクッキングヒーターの表面が加熱しすぎない設計や自動停止機能など、安全性の高さが重視されています。
また、万が一の地震発生時にもガスの元栓を閉める必要がなく、火災への警戒が減る点も安心材料となります。ガス機器の定期点検や元栓の開閉管理が不要になるため、日常的な安全管理の負担が軽減されるという点も魅力です。
光熱費を一本化できるため家計管理がしやすい
オール電化住宅では、光熱費がすべて電気代に集約されるため、家計管理が非常にシンプルになります。ガス代と電気代を分けて支払う必要がなく、請求書が1本にまとまることで、月々の固定費の把握がしやすくなります。基本料金の重複もなくなるため、その分無駄な支出を抑えることも可能です。
また、時間帯別の電気料金プランを上手に活用すれば、夜間に洗濯やお風呂の湯沸かしなどをまとめて行うことで、光熱費全体の削減も期待できます。生活リズムと設備の特性を上手く合わせれば、コストパフォーマンスの高い暮らしが実現可能です。
断水時においてもお湯が使える
電気温水器やエコキュートのような貯湯式給湯器には、常に一定量のお湯がタンク内に蓄えられています。断水時であっても、そのタンク内のお湯を生活用水として使うことができるため、いざというときの備えとして非常に役立ちます。キッチンや洗面所での最低限の使用はもちろん、洗濯や簡易シャワーにも活用できるのが魅力です。
特に災害時には、水が使えないことが大きな不便となりますが、オール電化の設備はその点でもメリットを発揮します。ただし、タンク内のお湯は限りがあるため、使用量を意識した使い方が求められます。非常時に備えて、貯湯タンクの構造や使い方を事前に確認しておくと安心です。
オール電化が向いている人
オール電化が快適に感じられるかどうかは、住む人の生活スタイルによって異なります。ここでは、オール電化に向いている人の特徴を具体的に紹介します。
共働きで昼の電気使用量が少ない家庭
オール電化の電気料金プランは夜間の電力が安く、昼間の電力が高く設定されているケースが多いため、昼間に電気をあまり使わない家庭と相性が良いです。共働きで日中は家に誰もいないという家庭では、電気を使う時間帯が夜間に集中しやすく、電気料金の安い時間帯を有効活用できます。
また、夜間の時間帯にエコキュートでお湯を沸かす、タイマー機能で洗濯や食器洗いを行うなど、工夫次第で光熱費をさらに抑えることが可能です。日中の在宅率が低い家庭であれば、オール電化の料金体系にうまく乗れるため、経済的なメリットを享受しやすくなります。
ガス火に不安を感じている人
火を使わないオール電化は、ガス火に不安を感じる方にとって理想的な選択肢です。IHクッキングヒーターは火が見えず、加熱面が比較的冷たいまま調理ができるため、小さな子どもがいる家庭や、高齢者のいる家庭でも安心して使うことができます。火災リスクも低く、安全性を重視したい方には非常に向いています。
また、地震などの災害時においても、ガスの元栓を閉める手間がなく、揺れで火が出る心配もありません。過去にガスの取り扱いで怖い思いをしたことがある人や、火の管理に自信がない人にとっては精神的な安心感を得られるでしょう。
光熱費の支払いをまとめたい人
オール電化は、電気のみで生活に必要なエネルギーをまかなうため、ガス料金が発生せず、光熱費が一本化されます。これにより、月々の請求管理が非常にシンプルになるほか、家計簿の管理や家計の見直しも行いやすくなります。
特に一人暮らしや忙しい共働き家庭など、支払いをシンプルにしたいと考えている方にとって、オール電化は便利な選択肢になるでしょう。
オール電化の賃貸物件を検討している人向け物件チェックポイント

賃貸物件でオール電化を選ぶ際は、設備や契約内容の確認がとても重要です。ここでは、入居前にチェックしておきたいポイントを整理して解説します。
電気料金の契約プランを確認する
賃貸物件においてオール電化を選ぶ際は、まず電気料金の契約プランを確認することが重要です。オール電化向けプランは「時間帯別料金(深夜割引)」が基本となっているため、ライフスタイルに合っているかを見極める必要があります。夜間に多く電気を使う家庭であれば、電気代を抑える効果が期待できます。
一方で昼間の在宅時間が長く、日中にエアコンや調理器具を頻繁に使うような生活スタイルでは、電気料金が割高になる可能性もあります。入居する前に、選択可能な電力会社・プランについて確認しておくと安心です。
IHコンロや電気温水器の状態・年数をチェックする
オール電化物件の設備が古い場合、効率や快適性に大きく影響することがあります。IHクッキングヒーターや電気温水器(エコキュート)は耐用年数が10〜15年とされており、特に耐用年数を大幅に超えた設備がそのまま使われているケースでは注意が必要です。
また、古い機器では加熱時間が遅かったり、お湯の沸きが悪いなどの不満につながるケースもあります。可能であれば管理会社やオーナーに設備の交換履歴を確認するほか、型番から製造年を調べるとより正確な判断ができます。
停電時の備えができるかどうか確認する
オール電化物件では、停電時に調理・暖房・給湯すべてが使えなくなるリスクがあるため、非常時の備えがどの程度できているかも重要なチェックポイントです。特にファミリー世帯や在宅時間が長い方は、蓄電池の設置有無や、電気温水器・エコキュートの貯湯タンクの容量を確認しておくと安心です。
また、ポータブル電源やカセットコンロなど、代替手段を備えておきましょう。事前に備えの体制が整っているかどうかで、災害時の安心感が大きく変わってきます。万が一のときに困らないよう、備蓄や避難計画も含めた視点で検討することが大切です。
「オール電化はやめとけ」という意見に流されず、自分の意思で必要性を検討しよう
「オール電化はやめとけ」といった意見を耳にすることもありますが、実際にはライフスタイルによって向き・不向きがあるのが現実です。使い方や暮らし方によっては、オール電化のメリットを十分に活かせるケースも少なくありません。
たしかに停電時の不便さや初期費用の高さ、電気料金プランによっては光熱費が割高になるといった注意点はあります。ただし、これらのデメリットはあらかじめ理解し、対策を講じることでカバーできる部分も多く、一概に「やめた方がいい」とは言えないのが実情です。
大切なのは、周囲の意見に流されるのではなく、自分や家族の生活スタイル・価値観に合っているかをしっかり見極めることです。安全性や家計管理のしやすさに魅力を感じるなら、前向きに検討してもよいでしょう。物件を選ぶ際は、設備の状態や電気料金の契約内容、災害時の備えなども含めて、総合的に判断することが大切です。





