「ベッドタウン」とはどういったエリア?住むメリットと代表的な街を紹介

目次

「ベッドタウン」という言葉を耳にしたことはあっても、その具体的な意味や特徴、住む上でのメリット・デメリットを詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。

ベッドタウンは、多くの人にとって住まい探しの有力な選択肢ですが、その特性を理解せずに選んでしまうと「こんなはずではなかった」というミスマッチが生じる可能性もあります。

そこで今回は、「ベッドタウン」とは何か、その定義と歴史的背景から、住む上でのメリットや注意点、そしてどんな人におすすめなのかを詳しく解説します。

さらに、関東・関西・九州の代表的なベッドタウンもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みいただき、あなたの住まい探しの参考にしてみてください。

ベッドタウンとは?定義と特徴

まず、「ベッドタウン」とはどのような街を指すのか、その基本的な定義と特徴、そしてなぜ日本に多くのベッドタウンが存在するのかを見ていきましょう。

実は、「ベッドタウン」に法的な定義はありません。一般的に、都心に通勤・通学する人々が暮らす、郊外の住宅中心の街を指す言葉として使われています。夜間は居住者(寝るためのベッド)が多いのに対し、昼間は都心へ人が流出するため人口が少なくなる、という特徴からこの名で呼ばれるようになりました。

ベッドタウンが存在する理由

日本の大都市圏にベッドタウンが発展した最大の理由は、高度経済成長期以降の都心部への急激な人口集中です。都心に働き口が増え、多くの人が集まった結果、住宅が不足し、地価や家賃が急騰しました。

この「都心に住めない」という課題の受け皿として、郊外に大規模な住宅地(ニュータウン)が計画的に開発されたのです。これを可能にしたのが、鉄道網の発達でした。大手鉄道会社が中心となり、都心と郊外を結ぶ路線を延伸させると同時に、駅を中心とした住宅地の一体開発を進めたことが、多くのベッドタウン誕生の直接的なきっかけとなりました。

近年では、単に「寝に帰る街」ではなく、駅前に大型商業施設や文化施設、オフィスなどを備え、街自体が豊かな都市機能を持つ魅力的なベッドタウンも増えています。

ベッドタウンに住むメリット

では、ベッドタウンに住むと具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つの魅力をご紹介します。

都心に比べて家賃が安い傾向にある

最大のメリットは、経済的な負担を軽減できる点です。

一般的に、不動産の価格や家賃は都心から離れるほど安くなる傾向があります。同じ予算でも、都心より広く、築年数の浅い物件を選べる可能性が高まるため、住まいの選択肢が大きく広がる点がメリットといえるでしょう。

住環境として整っている傾向にある

ベッドタウンの多くは、居住地として計画的に開発されているため、住環境が非常に整っています。

広い公園や緑地が確保されていたり、歩道が整備されていたり、学校や図書館、病院といった公共施設が計画的に配置されていたりする街が多く見られます。穏やかで落ち着いた環境は、特に子育て世代のファミリー層にとって大きな魅力です。

公的なサービスや補助が充実していることがある

ベッドタウンとして発展した自治体は、子育て世代や若いファミリー層を積極的に誘致してきた歴史があります。そのため、子育て支援の補助金や医療費助成制度など、公的なサービスが充実している場合があります。

こうした自治体ごとの支援策も、ベッドタウン選びの重要なポイントの一つです。

ベッドタウンに住む際の注意点

多くのメリットがある一方、ベッドタウンでの暮らしには、事前に理解しておくべき注意点も存在します。

通勤に時間がかかる可能性がある

都心で働く場合、通勤や通学に時間がかかることは避けられません。毎日の通勤ラッシュや、終電の時間を気にする必要がある点は、デメリットと感じる人も多いでしょう。ドアツードアでどれくらいの時間がかかるのか、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。

都市機能が手薄なことがある

駅周辺には商業施設が揃っていても、少し離れると夜遅くまで営業している飲食店や、娯楽施設が少ない場合があります。「仕事帰りに気軽に立ち寄れるお店が少ない」といった点に、物足りなさを感じる可能性もあります。

自動車がないと不便に感じる可能性がある

駅周辺は便利でも、駅から少し離れた住宅街では、日々の買い物や家族の送迎、病院へのアクセスなどに自動車が必須となるケースが少なくありません。特に坂の多い地形のエリアや、バスの本数が少ない地域では、車中心の生活になることを想定しておく必要があります。

都心居住で比較した際にベッドタウンに住むのがおすすめの人

これまでのメリットと注意点を踏まえると、ベッドタウンでの暮らしは特に以下のような方に適していると言えます。

ファミリー世帯

ベッドタウンの多くは、子育て世代を主なターゲットとして計画的に開発されてきた歴史があります。そのため、緑豊かな公園や整備された歩道、児童館や図書館といった公共施設が充実している街が多く、子どもをのびのびと安心して育てられる環境が整っています。

また、同世代の家族が多く住んでいることで、地域コミュニティに溶け込みやすく、親にとっても子どもにとっても友人関係を築きやすい点も、大きな魅力と言えるでしょう。

家賃を抑えたい人

家賃は、家計における大きな固定費です。ベッドタウンを選ぶことで、この負担を大幅に軽減できる可能性があります。

例えば都心ではコンパクトな1LDKの家賃で、ベッドタウンなら広々とした2LDKや3LDKに住めるケースも珍しくありません。浮いた分の住居費を、将来のための貯蓄や投資、あるいは趣味や自己投資、子どもの教育費などに充てることで、日々の暮らしに大きなゆとりを生むことができます。

閑静な住環境を希望している人

仕事とプライベートの時間を明確に分け、オンとオフをしっかりと切り替えたい人にとって、ベッドタウンは理想的な環境です。都心の喧騒や夜遅くまでの賑わいから離れ、静かな生活を手に入れることができます。

仕事で疲れた心身を、穏やかな住環境でリフレッシュさせる。そんな自分自身や家族との時間を何よりも大切にしたいと考える人に、ベッドタウンの暮らしは最適です。

車を持っている人や車中心の生活をしている人

都心部で月極駐車場を探すのは一苦労であり、その費用も高額です。その点、ベッドタウンでは駐車場付きの物件が豊富で、比較的安価に見つかります。

車で郊外の大型商業施設へ買い物に出かけたり、家族でドライブやアウトドアレジャーを楽しんだり、子どもの習い事の送迎をしたりと、車があると選択肢が格段に広がります。ストレスのないカーライフを送りたい人にとって、ベッドタウンは暮らしやすい環境と言えるでしょう。

賃貸でベッドタウンの住まいを検討する際のポイント

実際にベッドタウンで賃貸物件を探すときには、以下の3つのポイントを重点的にチェックしましょう。

交通アクセス

都心までの所要時間だけでなく、「乗り換え回数」「ラッシュ時の混雑具合」「終電の時間」なども必ずチェックしておきましょう。また、最寄り駅から物件までの距離、坂道の有無、バスを利用する場合は「運行本数」や「深夜バスの有無」も、日々の暮らしの快適さを大きく左右するポイントです。

周辺施設

スーパーマーケットやドラッグストア、病院、銀行、郵便局といった生活に必須の施設が、徒歩や自転車で行ける範囲に揃っているかを確認しましょう。また小さなお子様がいる場合は、公園や保育園、学校、図書館などの場所も重要なチェックポイントです。

治安・ハザードマップなど

地域の治安情報を、自治体のウェブサイトや警察署の犯罪発生マップなどで確認しておくと安心です。また、川の近くや丘陵地にある物件の場合は、自治体が公開しているハザードマップで、洪水や土砂災害のリスクについても必ず確認しておきましょう。

関東の代表的なベッドタウンエリア

関東エリアでは、東京へのアクセスが良い各県の都市が、人気のベッドタウンとして発展しています。

東京都…立川、三鷹、府中などの都心東エリア

都心へのアクセスも良好でありながら、豊かな自然や商業施設も充実しているのが東京都のベッドタウンの魅力です。

JR中央線や京王線が都心への主要なアクセスルートとなり、通勤・通学にも便利。特に立川駅周辺は大型商業施設が集まる多摩エリアの中心地として賑わう一方、少し離れれば国営昭和記念公園のような広大な公園や緑豊かな住宅地が広がります。

都心の利便性と郊外の落ち着きを両立させたいファミリー層や、学生にも根強い人気があります。理想の住まい探しをここから始めてみてはいかがでしょうか。

神奈川県…相模原、厚木、大和などの県央・県北エリア

多様な路線が乗り入れ、都心だけでなく横浜方面へのアクセスも良いのが神奈川県のベッドタウンの特徴です。

小田急線や相鉄線、JR横浜線などが縦横に走り、新宿・渋谷・横浜といった複数のターミナル駅へアクセスしやすいのが強み。都心部に比べて家賃も手頃で、駅周辺には商業施設が充実している街も多く、コストパフォーマンスを重視する若い世代やファミリー層に選ばれています。

埼玉県…和光、さいたま、川口などの東京隣接・県南エリア

都内に隣接し、通勤の利便性が非常に高いエリアが多く、近年再開発によってさらに人気が高まっています。

東武東上線やJR埼京線、京浜東北線などを利用すれば、池袋・新宿・東京といった都心の主要駅へ30分前後でアクセス可能。駅前のタワーマンション建設や商業施設の再開発も活発で、都心で働く単身者やDINKSからも、暮らしやすい街として注目されています。

関西の代表的なベッドタウンエリア

関西エリアでは、大阪や神戸といった大都市を取り巻くように、特色豊かなベッドタウンが形成されています。

大阪府…吹田・豊中などの北摂エリア

古くから高級住宅街として知られ、教育・文化施設が充実した、非常に人気の高いエリアです。

御堂筋線や阪急電鉄の沿線を中心に、整然とした街並みが広がり、治安の良さや教育水準の高さから「子育て世帯の聖地」とも呼ばれます。万博記念公園のような広大な緑地もあり、利便性と良好な住環境を両立させたいと考える層のほか、新大阪駅が近いことから単身赴任者からも絶大な支持を得ています。

兵庫県…西宮などの阪神間エリア、明石市などの西部エリア

大阪と神戸という二大都市の間に位置する「阪神間エリア」は、JR・阪急・阪神という3つの路線が並走する交通至便の地であり、住環境の良さで常に高い人気を誇ります。

また、近年では手厚い子育て支援策で全国的に有名になった明石市なども、若いファミリー層を中心に「選ばれる街」として注目度が急上昇しています。

奈良県…生駒市など大阪中心部へのアクセスが良好なエリア

大阪中心部まで近鉄奈良線を利用すれば30分圏内という利便性と、生駒山系に抱かれた豊かな自然環境を両立できるエリアとして、根強い人気があります。

家賃も手軽であるほか、都会の利便性を享受しつつも、休日には自然の中でリフレッシュしたい、というライフスタイルを望む人々にとって、魅力あるエリアです。

九州の代表的なベッドタウンエリア

九州エリアでは、大都市・福岡市へのアクセスの良さを武器に、魅力的なベッドタウンが広がっています。

福岡県…春日・大野城・那珂川などの福岡市南エリア、古賀・福津・直方などの福岡市北エリア

福岡市に隣接し、JRや西鉄電車で天神・博多といった都心部へスムーズにアクセスできるエリアです。

特に春日市や大野城市は、福岡市中心部に通うファミリー層のベッドタウンとして発展してきました。また、東エリアの古賀市や福津市は、沿岸部の自然環境と大型商業施設の利便性を兼ね備えた、新たな人気エリアとなっています。

佐賀県…鳥栖市や三養基郡などの福岡中心部、久留米、佐賀の中間エリア

県境を越えて福岡市のベッドタウンとして大きく発展しているのが、佐賀県東部の鳥栖市や三養基郡です。

JR九州の二大幹線である鹿児島本線と長崎本線が交差し、九州自動車道の鳥栖ジャンクションも位置する、いわば「九州交通の要衝」。福岡市だけでなく久留米方面や九州各県へのアクセスも良好ですので、さまざまな勤務地の人々から選ばれ、ユニークなポジションを確立しています。

ベッドタウンとは何かを理解し、住む場所の選択肢に加えよう

今回は、ベッドタウンの定義からメリット・注意点、そして具体的な街の例までを解説しました。

ベッドタウンでの暮らしは、都心への通勤時間というデメリットがある一方、家賃の安さや整った住環境といった、大きなメリットを享受できる可能性があります。重要なのは、ご自身のライフスタイルや価値観と照らし合わせ、「何を優先したいのか」を明確にすることです。

都心での暮らしも、郊外のベッドタウンでの暮らしも、それぞれに魅力があります。この記事を参考に、ぜひベッドタウンという選択肢も視野に入れ、理想の住まい探しに役立ててください。