現在の手取りが18万円ほどの人が抱えがちな不安の一つに、一人暮らしに対する生活のきつさがあります。家賃や光熱費、物価の高騰により、収入に対して支出が追いつかないと感じる人も多いでしょう。
しかし、支出のバランスを見直し、節約ポイントを押さえることで、手取り18万円でも無理のない一人暮らしは十分に実現可能です。本記事では、宅建・FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持つ筆者が、家賃の目安や生活費のシミュレーション、節約術、物件選びのコツなど、生活設計に関するヒントを多角的に解説します。
「この収入でやっていけるのかな」と不安に感じている方は、本記事を参考に、自分に合った現実的なライフプランを描いてみてください。
手取り18万円で一人暮らしは本当にきつい?
家賃や生活費、物価の上昇などを考えると、手取り18万円での暮らしに不安を感じる方が多いのも無理はありません。ここでは、なぜ「きつい」と言われるのか、その理由とあわせて、無理のない生活を実現するための考え方をご紹介します。
手取り18万円の一人暮らしが「きつい」と感じる理由
手取り18万円の一人暮らしが「きつい」と感じられる主な理由は、収入に対して支出の割合が高く、家計に余裕が生まれにくいためです。近年は、食料品や日用品の値上がりに加えて水道光熱費の負担も増えており、生活にかかるコスト全体が上昇しています。
また、手取り18万円という金額は、すでに税金や社会保険料を差し引いた後の収入であり、額面月収が23万円前後あったとしても、実際に自由に使えるお金(可処分所得)は決して多くありません。社会保険料などがあらかじめ引かれていることで手元に残る金額が少なくなり、家賃や日々の生活費とのバランスが取りにくくなるのです。
このように、家賃負担や物価上昇といった支出要因が重なることで、工夫をしなければ金銭的なゆとりを感じにくいのが、手取り18万円の一人暮らしの実情と言えるでしょう。
工夫次第で一人暮らしは十分可能
手取り18万円だからといって、一人暮らしができないわけではありません。支出を見直し、生活スタイルを調整することで、無理のない範囲で快適な生活を送ることは十分に可能です。
例えば、家賃は手取りの25%以下を目安に抑え、通信費や保険料などの固定費を見直すことで、支出全体を引き締められるでしょう。
また、自治体によっては家賃補助や生活支援制度が用意されている場合もあり、条件に合えば積極的に活用したいところです。
さらに自炊中心の食生活やサブスクの見直し、不要な買い物を控えるといった日常的な工夫も、家計に大きく影響します。生活リズムを整えることで健康面にも好影響を与え、医療費の節約にもつながるため、トータルで見れば手取り18万円でも十分に暮らしていける環境は整えられるでしょう。
手取り18万円の場合に目安となる家賃相場
毎月の支出のなかでも特に大きな割合を占めるのが「家賃」です。手取り18万円で一人暮らしをするうえでは、無理のない家賃設定が家計全体の安定につながります。ここでは、適切な家賃の目安と、都市・地方ごとの家賃相場の違いについて解説します。
手取り収入の3分の1(6万円)が一般的な上限の目安
家賃の目安としてよく挙げられるのが「手取り収入の3分の1以内」という基準です。これは不動産業界や家計管理の基本的な考え方として広く浸透しており、手取り18万円の場合であれば、家賃は上限6万円までが目安となります。これを超えると食費や光熱費、貯金にまわすお金が不足し、日常生活に支障をきたす可能性があります。
また、物件を探す際にも、「手取りの3分の1以内」という基準は入居審査の一つとして参考にされることも多いです。家賃が収入に対して高すぎると、安定した生活が難しいと判断される場合もあるため、家賃設定は慎重に行う必要があります。
理想は手取り収入の25%程度(4.5万〜5万円)
実際の生活をより安定させるためには、家賃は手取り収入の25%前後、つまり4.5万〜5万円程度に抑えるのが理想的です。このラインであれば、生活費や貯金にまわせる余裕が生まれ、急な出費にも対応しやすくなります。特に食費や光熱費の上昇が続く近年では、住居費の圧縮が家計全体に与える影響は非常に大きくなっています。
無理のない家賃設定は、精神的な安心感にもつながります。「月末になるとお金が足りない」と感じることが減るだけでなく、将来に向けての貯金や趣味の支出にも余裕が持てるようになります。
生活の質を落とさずに経済的なバランスを保つためにも、家賃は「払える金額」ではなく、「無理なく払える金額」を意識することが大切です。
都心・地方の家賃相場の違いと選択のポイント
家賃相場は住むエリアによって大きく異なります。例えば都心部やその周辺においては6万円以上の家賃が主流である一方、地方都市では同じ広さでも4万円台で借りられることもあります。手取り18万円という限られた収入で暮らす場合、家賃相場が高い地域にこだわりすぎると、生活費や貯金の余裕がなくなってしまう可能性があるため注意が必要です。
また、家賃を抑えるには「駅からの距離」や「築年数」「設備条件」などのバランスを取ることも重要です。自分のライフスタイルや通勤環境をふまえて、家賃とのバランスを取りながら住まいを選ぶことが、一人暮らし成功のカギになります。
手取り18万でも無理なく暮らすための生活費の目安

手取り18万円で一人暮らしをするには、毎月の支出をしっかり管理することが欠かせません。特に家賃の金額によって生活全体のバランスが大きく変わるため、自分に合った支出配分をイメージすることが大切です。ここでは、家賃ごとの生活費シミュレーションと、理想的な家計バランスの考え方をご紹介します。
家賃6万円の場合の支出シミュレーション
手取り18万円のうち、家賃に6万円を充てた場合、残りは12万円です。このなかで食費や光熱費、通信費、交際費などをまかなうことになります。以下はその一例です。
| 支出項目 | 金額(円) |
|---|---|
| 家賃 | 60,000 |
| 食費 | 35,000 |
| 光熱費 | 10,000 |
| 通信費 | 7,000 |
| 日用品・雑費 | 10,000 |
| 交際費・娯楽費 | 20,000 |
| 合計 | 142,000 |
| 手残り | 38,000 |
このように、最低限の生活費は確保できても、貯金や急な出費に備える余裕は少なめです。家賃が高めになる分、その他の支出を細かくコントロールする必要があり、生活費のやりくりに苦労する可能性が高くなります。突発的な支出が発生した際の備えも考えると、かなりタイトな家計になることがわかります。
家賃4.5万円の場合の支出シミュレーション
次に、家賃を4.5万円に抑えた場合の支出例を見てみましょう。固定費を減らすことで、生活に余裕が生まれやすくなります。
| 支出項目 | 金額(円) |
|---|---|
| 家賃 | 45,000 |
| 食費 | 35,000 |
| 光熱費 | 10,000 |
| 通信費 | 7,000 |
| 日用品・雑費 | 10,000 |
| 交際費・娯楽費 | 20,000 |
| 合計 | 127,000 |
| 手残り | 53,000 |
家賃6万円と比較すると、毎月の生活費に約1.5万円の余裕が生まれます。この差は大きく、貯金や趣味、緊急時の支出にも対応できる柔軟な家計設計が可能になります。物件選びの段階で「駅距離」や「エリア」「築年数」を妥協することで、このような家賃帯の物件も見つかる可能性があるでしょう。
生活費のバランス配分と目標設定
アパート・マンションで生活する一人暮らしの平均的な支出は、総務省の調査によると「月約187,628円」とされています。これは手取り18万円をやや上回る水準であり、収入だけで生活をまかなうには支出を抑える努力が必要だとわかります。
そのため、収支のバランスは「家賃30%・生活費50%・貯金20%」のように意識するとよいでしょう。手取り18万円の場合であれば、家賃は54,000円、生活費90,000円、貯金36,000円が理想的な配分となります。
いきなり完璧な割合を目指す必要はありませんが、支出の配分に目を向けて家計を管理することで、将来的な安定にもつながっていきます。
手取り18万円の場合に狙いたい物件条件
手取り18万円で一人暮らしをする場合、物件選びは非常に重要なポイントです。家賃を抑えるだけでなく、毎月の固定費や初期費用を削減できる物件を選ぶことで、家計に大きな余裕が生まれます。ここでは、家計に優しい4つの物件の条件についてご紹介します。
敷金・礼金なしの物件
引っ越し時の費用負担を軽減するには、敷金・礼金なしの物件を選ぶのが効果的です。敷金・礼金は通常、家賃1〜3ヶ月分が必要になるケースも多く、家賃を抑えたいと考えている方にとって大きな負担になりかねません。そこで注目したいのが、「敷金・礼金なし」の物件です。
これらの費用が不要な物件を選ぶことで、初期費用を数万〜十数万円単位で節約できます。浮いた分を家具・家電の購入や引っ越し代に充てることで、スムーズに新生活をスタートできるでしょう。ただし、原状回復費用の扱いや契約内容は事前にしっかり確認することが大切です。
インターネット無料の物件
通信費の節約を狙うなら、インターネットが無料で使える物件に注目してみましょう。月々の通信費は意外と見落とされがちですが、節約の観点では重要な固定費です。特にスマホと自宅インターネット回線を併用している場合、毎月5,000〜10,000円程度の出費になることがあります。
その点、「インターネット無料」の物件であれば、この費用の大半をカットでき、年間で5万円以上の節約につながることも珍しくありません。最近では初めからWi-Fi環境が整っている物件も増えており、テレワークや動画視聴が多い方にもおすすめです。
駅からやや距離のある物件
駅から少し離れるだけで家賃が下がる傾向があり、コスパ重視の方におすすめです。駅近の物件は人気が高く、家賃も相場より高く設定されている傾向があります。そこで候補に入れたいのが、「駅から徒歩15分以上」や「バス便エリア」の物件です。少しだけ利便性を下げることで、家賃を1万円以上抑えられることもあります。
通勤・通学の負担はありますが、家計に余裕が生まれる分、趣味や貯金に回すことができます。バス路線が充実している地域や、自転車移動がしやすい立地を選べば、駅距離のハンデを感じにくくなるでしょう。
築年数の経過した物件
築年数が古い物件というと「住みにくいのでは?」と敬遠されがちですが、実はコストパフォーマンスに優れた選択肢のひとつです。築20年以上の物件でも、内装がリフォームやリノベーションされていれば、見た目や設備が新築同様に整っていることもあります。
家賃を抑えつつ、広さや機能性を重視したい方には特におすすめです。近年では、システムキッチンやシャンプードレッサーなどの人気設備が備えられた物件も増えており、「築年数」よりも「中身の快適さ」で選ぶ視点が重要になります。条件によっては、築浅以上の快適さを得られることも十分にあるでしょう。
一人暮らしで節約すべきポイント・固定費

毎月の支出の中で特に見直しやすく、効果が大きいのが「固定費」です。一度見直すだけで継続的な節約につながるため、家計改善の第一歩として取り組みたいポイントです。ここでは、手取り18万円で暮らすうえで注目すべき固定費4つをご紹介します。
通信費(スマホ・インターネット)
スマホやネットは生活に欠かせませんが、意外と節約余地の大きい項目です。
通信費は毎月かかる支出の中でも削減しやすく、見直し効果の高い固定費です。特に、スマホやインターネットは多くの人が利用しているサービスでありながら、プラン内容や契約会社に無頓着なまま利用しているケースも少なくありません。
例えば、大手キャリアから格安SIMに乗り換えるだけで、スマホ代は月額1,000〜2,000円台に抑えられます。また、自宅のインターネット回線もプロバイダや契約プランを見直すことで、月数千円の節約が可能です。品質を落とさずに固定費を減らせるため、最初に取り組むべき節約ポイントと言えるでしょう。
動画配信サービス(VOD)
動画配信サービス(VOD)は、手軽に楽しめる娯楽として人気ですが、気づかないうちに複数のサービスを契約してしまいがちです。Netflix、Amazonプライム、U-NEXT、Disney+など、「安いからいいか」と思って続けていると、合計で3,000〜5,000円以上支払っているケースも珍しくありません。
このようなサービスは、使用頻度が低いものから見直し、必要なものだけに絞るのがポイントです。無料トライアル期間や期間限定キャンペーンをうまく活用すれば、一定期間は実質無料で楽しめる場合もあります。また、作品のラインナップや自分の視聴スタイルを比較して、どのサービスが本当に自分に合っているかを見極めることも大切です。
保険や積立金など
過剰な保障や不要な積立が、家計を圧迫していないか見直してみましょう。保険や積立金は、「よくわからないけどとりあえず入っている」という状態になりやすい項目です。収入に対して過剰な保険料を払っていたり、自動積立が生活を圧迫しているケースも少なくありません。
将来の備えは大切ですが、まずは日々の生活を安定させることが優先です。必要な保障を見直し、目的に合ったプランへ見直すことで、毎月数千円の支出を抑えることが可能になります。定期的に契約内容をチェックする習慣をつけることが大切です。
家賃(減額交渉の実施)
家賃は固定費の中でも最も大きな支出項目であり、見直しによる効果も非常に大きくなります。今の家に住み続ける予定があるなら、契約更新時などを機に家賃の減額交渉をしてみるのも有効な方法です。
特に、長期入居している場合や築年数が経過している物件、周辺の家賃相場が下がっているエリアでは、交渉が成立しやすい傾向にあります。管理会社や大家さんとしても空室リスクを避けたいという事情があるため、現実的な金額であれば応じてもらえる可能性があります。
たとえ月々3,000円の減額でも、年間にすると36,000円の節約です。敷金や礼金のように一時的なコスト削減ではなく、長期的に家計を助ける節約策として、検討する価値は十分にあるでしょう。
一人暮らしで節約すべきポイント・変動費
変動費は、日々の意識と習慣でコントロールしやすい支出です。家賃などの固定費を見直したうえで、毎月のやりくりに直結する変動費も賢く抑えていきましょう。ここでは特に節約効果が高い4つの費目について解説します。
水道光熱費
水道・電気・ガスなどの光熱費は、固定費と変動費の中間的な存在で、生活に必要不可欠な支出です。とはいえ、意識と工夫次第で毎月1,000〜2,000円単位の節約が期待できる領域でもあります。まずは電力・ガス会社のプランや契約内容を見直し、自分のライフスタイルに合った料金体系を選ぶことから始めましょう。
エリアによっては乗り換えだけで年間1万円以上の節約になることもあります。また、LED照明や節水シャワーヘッドの導入、冬場のこまめな暖房オフ、夏場のエアコン温度設定の工夫など、日々の使い方でも差が出ます。短時間のシャワー使用や「つけっぱなし」を防ぐ行動を意識し、小さな節約を積み重ねていきましょう。
食費
食費は自炊を基本にするだけで、月に1万円以上の節約も十分に可能な支出項目です。外食やコンビニ利用は手軽で便利な反面、1回あたりの単価が高く、週に数回利用するだけでも月3万〜5万円以上かかることも珍しくありません。特に昼夜ともに外食が続くと、家計を圧迫しやすくなります。
これに対して、自炊を中心にすれば1日1,000円以下の食費も十分に実現できます。節約効果を高めるには、週末にまとめ買いをして、冷凍保存や作り置きで食材を無駄なく活用することがポイントです。スーパーの特売日や割引シールのタイミングを狙えば、同じ予算でも量・質ともに充実した食生活が可能になります。
さらに、自炊は栄養バランスを整えやすく健康維持にもつながるため、将来的な医療費の削減にも効果が期待できます。
交際費・娯楽費
「気づけば財布が空に」となりやすいのが、交際費や娯楽費です。生活に潤いや楽しさを与えてくれる大切な支出ではありますが、感覚的に使ってしまうことが多く、知らないうちに家計を圧迫していることもあるでしょう。だからこそ、計画的な管理が節約のカギとなります。
おすすめは、月ごとに「上限予算」を設定しておくこと。例えば交際費は1万円まで、娯楽費は5,000円までといった具合にルールを決めておくだけで、使いすぎの抑止力になります。
また、無料の地域イベントや公園・図書館など、コストをかけずに楽しめる場所を活用するのも有効です。映画館や美術館でも、割引デーや招待券を使えば出費を抑えながら充実した時間が過ごせるでしょう。
日用品・消耗品
日用品は「単価が安いから大丈夫」と油断しがちですが、実は家計にじわじわ効いてくる支出です。洗剤やトイレットペーパー、ティッシュなどは毎月確実に消費されるため、積み重なると意外に大きな金額になります。買い方や選び方を少し工夫するだけで、毎月の生活費をしっかり抑えることが可能です。
例えば同じ商品でも、スーパーやコンビニ、ドラッグストアでは価格が数十〜数百円違うこともあります。節約を意識するなら、100円ショップやドラッグストアのPB(プライベートブランド)、ネット通販などを賢く活用しましょう。
さらに、必要以上に買いだめをせず、適切なストック管理を行うことで「在庫があるのにまた買ってしまった」といった無駄を防げます。まとめ買いよりも“使い切る意識”が大切です。
手取り18万でも工夫次第で一人暮らしは可能!
手取り18万円の収入でも、支出の配分と生活スタイルを見直すことで、一人暮らしは十分に可能です。家賃・光熱費・通信費などの固定費、食費や交際費といった変動費、それぞれを少しずつ見直すことが、将来的な安定と安心につながります。
まずは「今の支出を把握すること」から始め、小さな節約を積み重ねていくことが大切です。今日からできる工夫をひとつずつ実践することで、暮らしは必ず変わります。自分らしい無理のない生活を築きながら、少しずつゆとりを生み出していきましょう。





