購入してから時間が経つと生えてしまうじゃがいもの芽。目にしたことがある方も多いと思いますが、実は毒があることを知っていますか?
今回は、そんな身近な毒であるじゃがいもの芽の危険性や取り除き方、芽が生える前に大量消費できるレシピを管理栄養士が紹介していきます。
なぜじゃがいもの芽は食べてはいけないのか
じゃがいもの芽には、ソラニンやチャコニンと言った天然毒素が含まれているため、食中毒を引き起こす危険性があり、食べてはいけないものとされています。
また、じゃがいもの芽以外にも、皮や緑色に変色した部分、傷がついたものや未熟なものにもこれらの毒がある場合があります。
そのため、じゃがいもは調理する前に適切な処理を行う必要があるのと同時に、購入する際にもそういったものを避けることが重要です。
じゃがいもの毒の成分と食中毒の症状
じゃがいもに含まれるソラニンやチャコニンは天然毒素の一種で、基本的にどのジャガイモにも含まれています。これらの毒素を摂取すると、吐き気や下痢、嘔吐などの消化管症状や、頭痛、めまいなどの症状を引き起こすと言われています。
ソラニンやチャコニンはじゃがいもの芽に最も多く含まれており、緑色に変色した部分にも多く含まれています。緑色に変色した部分は、100gあたり0.1gの毒素を含んでいるといわれているため、芽にはこれ以上の量の毒素が含まれています。
体重50kgの人の場合、0.05gの毒素を摂取すると症状が現れると言われているため、調理の際には芽や変色した部分は必ず取り除きましょう。
じゃがいもの芽が出たら!管理栄養士が教える取り除き方

適切に保存していても、じゃがいもに芽が出てしまうこともあります。また、芽が出ていなくても、芽が出るくぼみ部分は取り除いておくと安心です。
実際に、どのような方法で芽を取り除けば良いのでしょうか?ピーラー・包丁・ティースプーンそれぞれでの取り除き方を見ていきましょう。
ピーラーを用いた取り除き方
ピーラーを用いてじゃがいもの芽を取る場合は、ピーラーの刃の横についている丸い部分を使いましょう。
この丸い部分は芽取り部分といい、じゃがいもの芽などを取るためについているものです。じゃがいもの芽の少し横に芽取り部分を当て、くぼみに押し込むように力を加えることで芽を取ることができます。
このとき、くぼみが大きかったり、芽が広く生えていると、一回では取り切れないため、何度か場所を変えてしっかりと取り切るように意識しましょう。
包丁を用いた取り除き方
包丁を用いてじゃがいもの芽を取る場合は、包丁の刃元(刃の下の部分)を使いましょう。
じゃがいもを持ち、くぼんだ部分に包丁の刃元を斜めに入れ、じゃがいもをクルッと1回転させれば、芽を取り除くことができます。このとき、包丁をじゃがいもに対してまっすぐ入れてしまうと、1回転してもくり抜くことができないため、斜めに入れることを意識しましょう。
また、包丁が滑って手を怪我する危険性があります。じゃがいもの皮を剥く前にやっておくと滑りづらいため安全でしょう。
ティースプーンを用いた取り除き方
ティースプーンを用いてじゃがいもの芽を取る場合は、じゃがいものくぼみに対して斜めにスプーンを入れ、1回転してくり抜きましょう。スプーンの形状によってはうまくくり抜けないため、先が尖っているものや、ギザギザになっているものがおすすめです。
また、通常サイズのスプーンでも芽を取ることができますが、小さいくぼみをくり抜く際に可食部まで大きくくり抜いてしまうため、ティースプーンの方がおすすめです。
じゃがいもの芽が出やすくなってしまう条件
じゃがいもの芽が出た場合は紹介したような方法で取り除けば良いのですが、そもそもじゃがいもには、芽が出やすくなってしまう以下の条件があります。
・15〜20℃の場所で保管する
・光の当たる場所で保管する
・湿度の高い場所で保管する
そのため、これらの条件を避けることでじゃがいもに芽が出にくくなり、安全に食べられる期間が長くなります。
じゃがいもの芽を出にくくする保存方法

では、じゃがいもに芽が出やすくなる条件を避けるためには、どのように保存するのが良いのでしょうか?季節によって適切な保管方法が異なるため、注意して見ていきましょう。
【冬場】光が当たらず風通しの良い15℃未満の場所で常温保存
冬場は、光が当たらず風通しの良い15℃未満の場所で常温保存することを意識しましょう。いわゆる、冷暗所と呼ばれる場所での保存が望ましいです。新聞紙やキッチンペーパーで包めば、湿気を吸収してくれるため長持ちします。
ただし、室内だとどうしても風通しが悪く温度も15℃を超えてしまう可能性があるため、床下収納や外での保存がベストです。
【夏場】冷蔵庫の野菜室で保存
夏場は、15℃以下で保存することが難しいため、冷蔵庫の野菜室での保存が望ましいです。こちらも新聞紙もしくはキッチンペーパーで包んでおきましょう。
ただし、冷蔵庫内は風通しも悪く、他の食材との兼ね合いで湿度が上がったりもするため、早めに調理するように心がけましょう。
リンゴと一緒に保存することで発芽抑制効果が期待できる
実は、リンゴと一緒に保存することでも発芽抑制効果が期待できます。
リンゴは、エチレンと呼ばれる物質を放出するという特徴があり、これがじゃがいもの発芽抑制作用を持っています。そのため、じゃがいもとリンゴを一緒に保存することで発芽を抑制できるのです。
じゃがいもを保存しやすい床下収納などがある物件であれば、ある程度多めに買い込んでも安心でしょう。
調理後のじゃがいもの保存方法
じゃがいもはボリュームのある食材でもあるため、調理後に食べきれずに保存してダメにしてしまった…ということも多いのではないでしょうか。次に、調理後のじゃがいもの保存方法について紹介していきます。
【皮を剥いて切った場合】水を加えて保存容器に入れ冷蔵庫で保存
じゃがいもの皮を剥いて切った場合は、水を加えて保存容器に入れて冷蔵庫で保管しましょう。
じゃがいもは切ると、空気に触れて酸化反応が進み、黒く変色します。この場合でも特に問題なく食べられますが、見た目が悪い上に菌に触れる危険性があるため、空気に触れないよう水にさらし、冷蔵庫で保管しましょう。
【マッシュポテトにした場合】ラップで包んで冷凍庫で保存
じゃがいもをマッシュポテトにした場合は、冷凍ご飯のようにラップで包んで冷凍庫で保管しましょう。
一度じゃがいもを加熱すれば、冷凍保存が可能です。特にマッシュポテトは流動的な形態ではないため、そのままラップに包んでの冷凍が可能です。
じゃがいもを簡単に消費できるレシピ7選

芽が出てしまうまで保存するというのは、じゃがいもが短期間では消費しきれなかった場合に起こり得ます。そこでここからは、そんなじゃがいもを簡単かつおいしく大量消費できるおすすめレシピを7つご紹介します。
使い勝手が良い!基本のマッシュポテトのレシピ
一度マッシュポテトにしてしまえば、様々な料理の付け合せとして消費できますよ。
用意するもの
・じゃがいも(中) 4個
・無塩バター 30g
・牛乳 100ml
・塩 適量
・こしょう 適量
作り方
①じゃがいもを洗って芽を取り、皮付きのまま鍋に入れてかぶる程度の水を注ぎ、柔らかくなるまで茹でる(約20分)。
②茹で上がったじゃがいもの皮を熱いうちにむき、ボウルに入れる。
③フォークやマッシャーでじゃがいもをつぶし、滑らかにする。
④鍋にバターと牛乳を入れて弱火で温め、つぶしたじゃがいもに加える。
⑤塩とこしょうで味を調え、全体がよく混ざったら完成。
ポテトとトマトのチーズ焼きのレシピ
トマトやチーズと合わせることで、おしゃれな居酒屋で出てくるメニューに早変わり。晩酌などにもおすすめです。
用意するもの
・じゃがいも(中) 3個
・トマト(中) 2個
・ピザ用チーズ 100g
・オリーブオイル 大さじ1
・塩 適量
・こしょう 適量
・乾燥バジル 適量
作り方
①じゃがいもは洗って芽を取ったあと皮をむき、5mm幅の輪切りにする。鍋にじゃがいもを入れ、かぶる程度の水を加えて茹で、竹串がスッと通る程度に柔らかくする(約10分)。
②トマトはヘタを取り、5mm幅の輪切りにする(好みに応じて湯剥きする)。
③耐熱皿にオリーブオイルを薄く塗り、じゃがいもとトマトを交互に並べる。
④塩、こしょうを振り、全体にピザ用チーズをまんべんなくのせる。
⑤200℃に予熱したオーブンで10〜15分、チーズがこんがりと焼き色がつくまで焼く。
⑥仕上げに乾燥バジルを振りかけて完成。
じゃがいもの煮物のレシピ

ほっこり安心する煮物にすることで、年齢を問わないおいしい食事になります。晩ご飯にもう一品、というときに活躍しますよ。
用意するもの
・じゃがいも(中) 4個
・にんじん(小) 1本
・玉ねぎ(中) 1個
・だし汁 300ml
・しょうゆ 大さじ2
・みりん 大さじ2
・砂糖 大さじ1
・サラダ油 大さじ1
作り方
①じゃがいもは洗って芽を取ったら皮をむき、一口大に切って水にさらしてアクを抜く。にんじんは皮をむいて乱切り、玉ねぎは皮をむいてくし形切りにする。
②鍋にサラダ油を熱し、じゃがいも、にんじん、玉ねぎを中火で軽く炒める。
③だし汁を加え、煮立ったらアクを取り、しょうゆ、みりん、砂糖を加える。
④落とし蓋をして弱火で15〜20分、じゃがいもが柔らかくなるまで煮る。
⑤味を調え、全体に味が染み込んだら火を止める。
⑥器に盛り付けて完成。
アレンジのきくポテトフライのレシピ
じゃがいもの大量消費といえばポテトフライを真っ先に思い浮かぶ人も多いでしょう。王道のケチャップやマヨネーズはもちろん、家庭に余っている調味料を振りかけることでもおいしい一品に仕上がります。
用意するもの
・じゃがいも(中) 4個
・片栗粉 大さじ2
・サラダ油 適量
作り方
①じゃがいもをよく洗って芽を取り、皮付きのまま1cm幅のスティック状に切る(水にさらしてアクを抜く)。
②キッチンペーパーでしっかり水気を拭き取り、片栗粉をまぶす。
③フライパンにサラダ油を1cmほど注ぎ、170℃に熱したらじゃがいもを入れ、表面が薄く色づくまで約5分揚げる。
④温度を180℃に上げ、さらに2分揚げてカリッと仕上げる。
じゃがいものポタージュスープのレシピ

少し手間暇加えた料理を作りたい、という方にはじゃがいもを使ったポタージュスープがおすすめ。寒い時期に嬉しいおいしさです。
用意するもの
・じゃがいも(中) 4個
・玉ねぎ(中) 1個
・バター 20g
・コンソメスープ 500ml
・牛乳 300ml
・塩 適量
・こしょう 適量
作り方
①じゃがいもは皮をむいて芽を取り、一口大に切る。玉ねぎは薄切りにする。
②鍋にバターを溶かし、玉ねぎを透明になるまで炒める。
③じゃがいもを加えて軽く炒めたら、コンソメスープを注ぎ、中火でじゃがいもが柔らかくなるまで煮る(約15分)。
④火を止め、粗熱を取ってからミキサーで滑らかになるまで撹拌する。
⑤鍋に戻し、牛乳を加えて弱火で温める。塩、こしょうで味を調える。
⑥器に盛り付け、お好みでパセリやクルトンを添えて完成。
じゃがいもコロッケのレシピ
家で作るのは大変…と出来合いのものを買ってきがちなコロッケですが、家で作れば揚げたてが食べられます。じゃがいも多めでもぺろりと平らげてしまうおいしさなので、意外にも大量消費におすすめな一品ですよ。
用意するもの
・じゃがいも(中) 5個
・合いびき肉 150g
・玉ねぎ(中) 1個
・バター 10g
・塩 適量
・こしょう 適量
・小麦粉 適量
・卵 2個
・パン粉 適量
・サラダ油 適量
作り方
①じゃがいもの皮をむいて芽を取ったら一口大に切り、鍋で柔らかく茹でる(約15分)。茹で上がったら水気を切り、熱いうちにつぶす。
②フライパンにバターを溶かし、みじん切りにした玉ねぎを透明になるまで炒める。ひき肉を加えてさらに炒め、塩、こしょうで味を調える。
③つぶしたじゃがいもと炒めた具材を混ぜ、冷ましてから小判型に成形する。
④成形したじゃがいもに小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせ、パン粉をまぶす。
⑤フライパンにサラダ油を2cmほど注ぎ、170℃に熱したらコロッケを揚げる。両面がきつね色になったら取り出して完成。
じゃがいものガレットのレシピ

ちょっと変わったものを作ってみたい、という人には、じゃがいものガレットがおすすめ。乗せたチーズがとろっと溶けて、お酒が進む一品です。
用意するもの
・じゃがいも(中) 4個
・ピザ用チーズ 50g
・塩 適量
・こしょう 適量
・オリーブオイル 大さじ2
作り方
①じゃがいもの皮をむいて芽を取り、スライサーを使って細切りにする。
②ボウルに細切りにしたじゃがいも、塩、こしょうを入れて混ぜる。
③フライパンにオリーブオイルを熱し、じゃがいもを平らに広げて中火で焼く。
④表面がこんがりしてきたらピザ用チーズを全体にのせ、裏返して両面を焼く(片面約5分)。
⑤カリッと焼き上がったら取り出し、切り分けて完成。
じゃがいもの芽が出たら適切な方法で取り除いて美味しく食べよう
じゃがいもの芽に含まれるソラニンやチャコニンは身近な自然毒であり、食中毒の危険性があります。しかし、今回紹介した芽の取り方や保存方法を実践することで、安全に美味しく食べることが可能です。
今回紹介したレシピのように多くの応用ができるじゃがいもを、ぜひ安全に美味しく食べてみてくださいね。