夏になると、エアコンなしでは過ごせないという人も多いのではないでしょうか。夏場は部屋の温度が高くなりやすく、とくに密閉空間であるマンションでは、外気温より室内温度が高くなる傾向にあります。
しかし、エアコンを使うと電気代が気になったり、やはり自然の風を取り入れて、快適に過ごしたいと考えたりする人もいるかもしれません。そこで今回は、扇風機だけで快適に過ごす方法をご紹介します。
夏に部屋の室温が高くなるのはなぜ?

夏に部屋の室温が高くなるのは、部屋にこもった熱気が理由です。部屋の中に熱気がこもる原因は、窓などの開口部のほか、壁や天井から伝わって入ってきた熱が挙げられます。
昼間に直射日光があたり続けた建物には、熱が蓄えられます。その熱が壁や天井に伝わることで、室内温度を上昇させるのです。また、部屋に直接入ってくる強い日差しが、部屋のサッシをはじめ、床や壁、家具などにあたり続けると熱を持ちます。このような熱も、部屋の室温を高くする原因の一つです。
扇風機の風が涼しく感じられる理由
扇風機とは、羽根を回して風を起こす送風機のことです。扇風機の風が涼しく感じられるのは、その風があたると体の熱をとってくれるためです。汗などの水分が皮膚についていれば、その水分を蒸発させる際にも熱を奪っていきます。
扇風機だけで部屋を涼しくする方法
ちょっとした工夫をすると、扇風機だけで部屋を涼しくできます。ここでは、部屋を涼しくするためのアイデアをご紹介します。
こもった熱を外に逃がす

扇風機を回しても生ぬるい風しかこない場合は、部屋にこもった熱が原因です。部屋を涼しくするためには、まず部屋の中にこもった熱を外に出し、外の新鮮な空気と入れ替える必要があります。
そのためには、扇風機の置き方がポイントです。扇風機を窓の近くに置き、外に向けて一番強い風力にして30分程度回しましょう。こうすることで、部屋の中の空気が扇風機によって、外へと放出されます。
扇風機を使って部屋の空気を外に送り出すときは、扇風機を向けた窓以外、窓をはじめとした通気口をすべて閉めておきます。扇風機を回し始めてから30分ほど経ったらスイッチを切り、窓や通風口を全開にしてください。
こうすると、部屋にこもった熱が外に放出され、外の涼しい風が室内に入ってくるのです。外出から帰った後や、寝苦しい夜などにこの方法を行うと、効果を感じられます。
湿気が多いところは直接風をあてる
部屋の室温が高くなると、部屋の湿度も上がります。湿度が高くなると、まさに高温多湿となり、さらに部屋の室温が高く感じられてしまいます。
これを防ぐには、湿気が多いところに扇風機で直接風をあてて、湿気を逃がしてあげると良いでしょう。部屋の中で湿気が溜まりやすい場所は、寝室やクローゼットです。
布製品は湿気を吸収しやすいため、洋服などが収納されているクローゼットは、湿気が溜まりやすくなります。また、布団は部屋の中の湿気を吸うだけでなく、寝ているときに出た汗を吸収しているため、想像以上に水分が含まれています。
部屋干しの洋服なども部屋の室温を上げる原因になるため、扇風機を使って早めに乾燥させて、収納するようにしましょう。
風の通り道を遮らない方向に扇風機を向ける
扇風機を使う際には、部屋の中の風の通り道を遮らないように、置き場所を工夫するようにしましょう。窓からの風を遮ってしまうと、外気がうまく部屋に入ってこられなくなります。
扇風機を使うときは、風の通る方向にあわせて、置く場所や方向を工夫することが重要です。
ベランダに打ち水をする

夏にサッシを開けると、強い日差しとともに、熱気が入ってくることがあります。これは、直射日光あたっていることだけでなく、ベランダで「輻射熱」が発生したためです。
ベランダは直射日光にあたっているため、表面温度が高くなり、その熱が放出されて室内に入ってきてしまいます。ベランダの表面温度を下げ、涼しい風を室内にもたらすには、打ち水をするのが一つの方法です。
打ち水をすることで、ベランダの表面温度が下がるだけでなく、まいた水が蒸発する際に気化熱によって、周辺の空気を冷やす効果があります。また、水の蒸発によって気圧が変化することで、風が発生します。
昼間に涼しい風が室内に入ってくれば、扇風機だけで快適に過ごすことが可能です。
扇風機用の保冷剤を活用する
真夏になると外気温が高くなるため、扇風機だけでは暑くて過ごせないことも少なくありません。そこで、保冷剤を使って扇風機から送り出される風を冷やすと、室温を下げる効果もあります。
最近は、扇風機専用の保冷剤がホームセンターなどで販売されています。何度も繰り返し使え、簡単に扇風機に取り付けられるので、いくつか冷凍庫にストックしておくと良いでしょう。
このほか、市販されている保冷剤をタオルや手ぬぐいなどに包み、扇風機のカバーに取り付けるのも一つです。この際、水分がモーター部分に入らないようにすること、そしてタオルなどがほどけてファンに巻き込まれないように注意しましょう。
濡れたタオルを首に巻く

扇風機とあわせて、さらに涼しく過ごす方法の一つに、濡れたタオルを使う方法があります。首は皮膚が薄く、太い血管が通っている場所です。そのため、冷やすことで循環する血液の温度を下げ、全身を冷やす効果があります。
最近は、首元を冷やすクールストールやネックリングをはじめ、多くの冷感グッズがあり、部屋の中だけでなく外でも活用できます。「濡れタオルはなんだかかっこ悪い」という人は、このようなグッズを活用すると良いでしょう。
ハッカ油を用いる

ハッカ油を用いるのも、暑い夏を快適に過ごすのにおすすめです。清涼感のある香りが特徴のハッカ油は、気持ちを落ち着かせてくれるリラックス効果のほか、殺菌効果や消臭効果、防虫効果などがあります。
ハッカ油には体温を下げる効果もあるため、扇風機を使う際におすすめなのが「ハッカ水スプレー」です。「ハッカ水スプレー」を肌に吹き付けるだけでも涼しく感じますが、そこに扇風機の風があたることで、さらに体感温度が下がります。
「ハッカ水スプレー」は、スプレーボトルに水を入れ、数滴のハッカ油を入れるだけで簡単に作れます。使用する前には、少しの量を腕の内側につけて、湿疹などのアレルギー反応が出ないかを確認するようにしましょう。
入浴の際にお湯にハッカ油を入れれば、お風呂上がりが涼しく感じられます。このほか、化粧水にわずかに入れれば、引き締め効果も期待できるほか、防虫効果もあるため、虫よけにも効果的です。
風鈴を部屋の中に吊るす

室内に風鈴を吊るすと、その涼やかな音によって涼しく感じられます。これは、風鈴の音を聞くことで、脳が「風が吹いている」と勘違いすることで条件反射が起こり、体感温度が下がる効果があるためです。
【注意】暑いからといって扇風機の風に直接あたりすぎるのはNG
風が心地良いからと扇風機の風に直接あたり過ぎた場合、頭痛や体調不良になることがあります。扇風機に長時間あたることで、体が冷えて体温が下がります。そのため、頭痛や腹痛をはじめ、のどの痛みや吐き気などが起きることがあるのです。
「扇風機をつけたままにして寝てしまったら、朝起きたら寝違えたみたいに首が痛い…」という場合も、扇風機の風が原因の可能性があります。首振り機能やタイマーなどをうまく活用しましょう。
お部屋を快適にする扇風機の選び方
お部屋を快適にするためには、扇風機の選び方にも工夫が必要です。ここでは、扇風機の選び方について解説します。
扇風機の種類から選ぶ
室内用として家庭で使われる扇風機は、大きく3つにわけられます。目的やデザイン性などから選んでみましょう。
リビングファン
リビングファンとは、スタンダードな扇風機のことで、一般的に「扇風機」と呼ばれるものです。最近は、タワーファンやファンがない「羽根なし扇風機」も人気があります。
タワーファン
タワーファンとは、リビングファンと異なり、縦に細長いタワー型をした送風機のことです。省スペースで、回転するファンが外から見えないため、小さなお子さまやペットがいる家でも安心して使えます。
サーキュレーター
サーキュレーターとは、扇風機と同様に、風を発生させる送風機の一種です。強い風を直線的に送れるため、室内の空気を循環するために用いられます。最近では、扇風機とサーキュレーターの機能を兼用した機種も出されています。
羽根の枚数から選ぶ
扇風機を選ぶ際には、羽根の枚数で選ぶのも一つの方法です。
扇風機は羽根の枚数により、送り出される風に違いが出てきます。羽根の枚数が多いほど空気を細かく送れるため、風が柔らかくなります。枚数が多いから良いというわけではないので、好みにあわせて選ぶと良いでしょう。
しっかりとした強い風が良いなら、3枚羽根のような枚数の少ない機種、または就寝時など柔らかい風を求めるなら、7枚羽根おすすめです。ただし、羽根の枚数が多いほど、回転時の音が大きくなる傾向があります。
風量調整の段階数から選ぶ
多くの扇風機では、風量を調節する機能が備わっています。例えば、風量調整の段階数が多いモデルでは、非常に弱い風から強力な風まで、より細かく風量を調整することができます。
一方、段階数が少ない扇風機は操作がシンプルでわかりやすく、普段使用するのには十分でしょう。しかし、エアコンのない部屋のような条件下での使用を考えている場合には、風量調整の段階数が多い方が適しています。
そのため、購入前にはどの程度の風量調整の段階数が必要かを考え、使用目的に合った製品を選ぶことが重要です。
首振り機能の可動域から選ぶ
扇風機のほとんどは「首振り機能」がついていますが、首振り機能の可動域も、扇風機を選ぶポイントの一つです。
機種により可動域が異なりますが、可動域が大きくなるほど広範囲に風を送れます。リビングファンなどは、その多くが左右のみの可動がほとんどですが、首振り角度が機種によっても変わってきます。
機能性から選ぶ
扇風機には、風量調整や首振り機能のほか、タイマー機能などの機能があります。
風力調整には「強・弱」といった段階機能だけでなく、自動で強弱をつける「リズム風」機能がついたものや、首振り角度を調整できるもの、支持部を上下できるタイプのものが出されています。
使う場所や目的にあわせて、機能を選ぶと良いでしょう。
効率よく部屋を涼しくするための扇風機のメンテナンス方法
扇風機は風を起こすため、ホコリを巻き起こしたり、吸い込んだりします。カバーにホコリがついたまま使っていると、風が弱くなるだけでなく、ムダに電気を消費することになります。扇風機は、普段からこまめにお手入れをしましょう。
①電源を切り、コンセントを抜く
扇風機のお手入れをするときは電源を切り、ファンの回転が止まってから行うようにします。また、電源だけでなく、誤作動による事故を防ぐために、コンセントも必ず抜いておきましょう。
②ファンとカバーと取り外す

まずは、ファンとカバーを取り外します。最近の扇風機は、クリップやネジなどで固定するタイプが多いため、工具を使わずに取り外せるものがほとんどです。機種によって取り外し方法が異なるため、取扱説明書にしたがって、作業を進めていきます。
③ファンとカバーを洗浄する

取り外したファンとカバーを洗浄します。中性洗剤とスポンジを使い、ぬるま湯でファンとカバーを洗います。汚れがひどい場合は、家庭用の掃除洗剤などを用いると良いでしょう。
④モーター部分やコンセントのホコリをとる

ファンを回すモーター部分のホコリを取り除きます。機械部分は水に弱いため、掃除機でホコリを吸うようにします。
モーターのホコリを取り除いたら、掃除洗剤などを使って脚部や台座部分を拭いていきましょう。その際には、モーター部分に液剤がかからないように気をつけてください。
コンセント部分も、意外にホコリが溜まっているものです。コンセントはホコリがつかないよう、普段からお手入れしておきましょう。
⑤扇風機を元通りに組み立てる
洗浄したファンとカバーが乾いたら、組み立てます。ファンカバーを固定し、すべてのネジがしっかり締まっていることを確認しましょう。その後は、扇風機をコンセントに接続し、正常に動作するかを確かめてください。
扇風機だけでも部屋を涼しくできる!
酷暑、猛暑といわれる最近の日本の夏でも、工夫次第では扇風機だけで部屋を涼しくできます。ただし、涼しくなる工夫をせずに、ただ我慢をして高温の部屋で扇風機だけを使っていると、熱中症のリスクがあるため気をつけましょう。