夏になると30℃を超える「真夏日」が続き、最近では35℃を超える「猛暑日」になることも珍しくありません。しかし、猛暑・酷暑といわれる夏の季節でも、工夫次第では涼しく過ごすことができます。
エアコンを使ってもなかなか部屋が涼しくならないのは、室内にこもった熱気や湿気が原因です。そのままにしておくと不快なだけでなく、屋内熱中症などを引き起こすことにもつながります。
そこで今回は、暑い夏を涼しく過ごすための方法についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
部屋が暑くなってしまう原因
夏場に部屋が暑くなるのは、窓から入ってくる直射日光のほか、日差しによって熱くなったベランダや道路からの輻射熱、建物外部の熱伝導などが原因です。
日差しによって直接部屋が暖められるだけでなく、熱せられた窓ガラスやサッシなど建物外部の熱が天井や壁などに伝わって、室温が上昇します。
ここでは部屋が暑くなってしまう原因について説明していきます。
原因①窓から入ってくる直射日光
大きな開口のある部屋は、差し込む日の光で明るく、心地よく過ごせます。しかし、夏場の直射日光は、室内の温度を上昇させる原因のひとつです。
直射日光によって室内の空気が暖められるだけでなく、ガラスやサッシ、床や壁、家具などの表面温度が高くなります。そのため、表面近くにある空気が暖められることにより、さらに室内温度が上昇し部屋が暑くなってしまうのです。
原因②日差しによって熱くなった建物外部の影響
熱は高い方から低い方へと伝わる性質があるため、建物外部が強い日差しによって熱くなると、その熱が天井や壁などに伝わり、部屋が暑くなります。
また、鉄筋コンクリート造のマンションは、木造に比べて気密性が高いです。これが、暑い夏の季節に熱がこもり、室温を上昇させる原因のひとつとなっています。
原因③ベランダや道路からの照り返し
夏場に部屋が暑くなるのは、窓から入ってくる直射日光のほか、日差しによって熱くなったベランダや道路からの輻射熱も原因のひとつです。
特に1階に住んでいる人は、ベランダや道路からの照り返しを感じやすいでしょう。ベランダや道路からの照り返しによる暑さを軽減したいのならば、2階以上の物件がおすすめですよ。
暑くなりやすい部屋の特徴
夏になると、直射日光や照り返しによって、部屋の室温が上昇するため、時には「家の中の方が外より暑い!」ということもよくあります。
エアコンをつけても、いつまでたっても室温が下がらない、エアコンが効かない…というのは、部屋のある環境が大きく影響していることもあります。こうした部屋に住んでいる場合、夏になると光熱費が必要以上にかかってしまうことも予想されます。
今住んでいる部屋を見直し、次に挙げる原因に当てはまるという人は、部屋の住み替えを考えてみてはいかがでしょうか。
特徴①日当たりの良い西向きの部屋
前述の通り、日当たりの良い建物は、夏になると直射日光によって外壁やベランダなどが熱せられやすく、室内温度の上昇につながります。また、窓から入ってくる日差しも室温が高くなる原因になります。
とくに西向きの部屋の場合、夏は夕方ごろから温度が上昇し、夜になっても室内の熱が逃げないため、「外の気温が下がっても部屋の中は暑いまま」という状態になりやすい傾向にあります。
特徴②断熱材の薄い、古い鉄筋コンクリート造住宅
室内の温度は、直射日光に伴う外壁から伝わる熱によって高くなりますが、壁内部の断熱材が薄い場合はその熱がさらに伝わりやすいため、より室内温度が上昇しやすくなります。
鉄筋コンクリート造の建物は、木造と比べると熱伝導率が高いため、外気温の影響を受けやすい傾向にあります。そのため断熱材が用いられていない古い鉄筋コンクリート造の建物では「夏熱く、冬寒い」部屋になりがちなのです。
特徴③窓が一面しかなく風通しの悪い部屋
角部屋ではない両隣を部屋に挟まれた部屋の場合、窓がベランダのある面にしかない、ということも少なくありません。こうした部屋は風の通り道が一方向しかないため、風通しが悪く、室内の熱が逃げにくいという傾向にあります。
そのため、部屋に熱がこもりやすく、エアコンをつけてもなかなか適温まで下がらない、ということも予想されるでしょう。
特徴④最上階の部屋
マンションの場合、屋上に貯水タンクなどを設置することが多いため、屋上部分が勾配のない、平らな「陸屋根」と呼ばれる構造になっていることが多いものです。
「陸屋根」は屋上が利用できるメリットがある一方で、勾配のある屋根に存在する天井と屋根の間の「小屋裏」がありません。そのため夏になると、階下に熱が伝わりやすいというデメリットがあります。そのため屋根の形状にもよりますが、最上階の部屋は階下の部屋に比べると室内の温度が上昇しやすくなります。
特徴⑤窓のある側に隣接する建物がある部屋
風の通り道となる窓のある側に隣接する建物があると、風通しが悪くなりがちです。そのため、部屋にこもった熱が逃げにくく、部屋の温度が下がりにくい傾向があります。
また、隣家が設置している室外機や給湯器などが窓の近くにある場合、室外機などから発せられた熱によって窓周辺の空気が熱せられ、室内の温度が上昇することもあります。
部屋を涼しくする方法12選
部屋を涼しくするためには、まず部屋にこもった熱を外部に逃がしましょう。そして、外部からの熱を遮ることが大切です。暑い部屋を閉め切ったままエアコンを使うと、暑くなった部屋の温度を下げるために、多くの電気を消費してしまいます。
また、エアコンや室外機に直射日光があたると、冷房効率が下がる点にも注意が必要です。必要以上にエネルギーを使ってしまい、ムダに光熱費がかかってしまいます。
ここでは、部屋を涼しくする方法についてご紹介します。
窓を開けて部屋に風を通す
部屋を涼しくするためには、まず窓を開けて風を通すことです。室内にこもった熱気と湿気を逃がすことで、部屋の温度を下げられます。
窓を開ける際は、できれば対角線上に、風の入口と出口となる2方向の窓があれば、風が通りやすいです。
サーキュレーターを使う
部屋を涼しくするためには、部屋にこもった熱気と湿気を逃がしてやることが大切ですので、換気扇を回すのもおすすめです。
部屋の空気を入れ替えるためには、排気と給気を行う必要があります。窓がベランダに面したところにしかない部屋の場合は、換気扇で排気を行い、窓から外気を給気することで、部屋の空気が入れ替わりやすくなります。
扇風機や冷風扇(冷風扇風機)を使う
外出からの帰宅時やお風呂上りなど、できるだけ早く涼みたいときには扇風機が便利です。
また、冷風扇(冷風扇風機)は、タンクの水を蒸発させることにより、熱い空気を冷やして送風します。タンクの水に氷や保冷剤を入れることで、さらに涼しい空気を送り出すことが可能です。空気清浄や除菌などの機能がついているものもあります。
ただし、冷風扇は水を蒸発させることで空気を冷やすため、部屋の湿度が上がらないよう、十分に換気することが必要です。
ベランダに打ち水をする
打ち水とは、水をまくことで涼をとる昔ながらの方法です。ベランダに打ち水をすることにより、熱くなったベランダの表面が冷やされ、輻射熱を抑えられます。
また、水をまいた場所から水蒸気が発生し、打ち水をしたところからしないところへと風が生じるため、部屋に心地よい風が入ってきます。
遮光タイプのカーテンを使う
遮光タイプのカーテンを使うと、直射日光を遮れるため、室内の温度上昇を抑えることが可能です。
遮光タイプのカーテンにはレベル(等級)がありますので、以下の表を参考にして選んでみてくださいね。
完全遮光(遮光率100%) | まわりの状況が分からない |
---|---|
1級遮光(遮光率99.99%) | 人の表情が識別できない |
2級遮光(遮光率99.80%) | 人の表情が分かる程度 |
3級遮光(遮光率99.40%) | 人の表情は分かる程度。ただ作業を行うのが難しい。 |
窓にすだれを取り付ける
窓にすだれを取り付けるのも、部屋を涼しくする方法のひとつです。熱い日差しを遮るだけでなく、外部に取り付けることで、すだれとガラスやサッシの間に空気の層を作れるため、窓から室内に伝わる熱が少なくなります。
また、目隠しにもなるので、風を室内に入れるためにカーテンを開けても、室内が外から見られる心配もありません。
サンシェードやオーニングを設置する
サンシェードやオーニングを設置することで、大きな日陰スペースを作れます。
ベランダに設置すると、ベランダの表面の温度上昇を抑えられるので、輻射熱による室内の温度上昇を抑えることが可能です。
植物を植えてグリーンカーテンを作る
グリーンカーテンを設置すると、日差しを遮るだけではありません。植物の光合成により水分が放出されるため、この水分によって空気を冷やす効果が期待できます。
置き畳やい草ラグを使う
置き畳やい草ラグを用いるのも、方法のひとつです。畳の材料であるい草には、高い調湿性能があります。空気中の水分が多いときは湿気を吸収し、乾燥すると湿気を放出してくれるのです。
また、消臭効果や空気浄化作用があるため、暑い夏場も心地よく過ごせます。
ミントなどのアロマを用いる
ミントなどのアロマを用いて体感温度を下げるのも、夏を快適に過ごすためのひとつの方法です。ミントの成分である「L・メントール」には冷感作用があり、使用することで体感温度が4℃下がるといわれています。
ミントをアロマとして用いると、不快さを軽減するだけでなく、蚊などの虫よけ効果もあります。
風鈴を飾る
風鈴は、風にあわせて音を鳴らすため、風を感じられます。
その音によって涼しく感じられるものですが、音の感じ方はひとそれぞれです。飾る際には、生活騒音の加害者とならないよう、外部に音がもれにくいように室内の風通しのよい場所に飾りましょう。
使っていない電化製品の電源を切っておく
電化製品は使用していると熱を発し、部屋を暑くする原因のひとつです。使っていない電化製品は電源を切っておいたり、コンセントを抜いておいたりすることで、室内の温度上昇を抑えるとともに節電にもつながります。
間取りや設備の見直しで部屋が涼しくなる
「夏場に部屋が暑い」「エアコンをつけていても、なかなか部屋の温度が下がらない…」といった場合は、間取りや設備の見直しをすることで、暑い夏を快適に過ごせるようになります。
夏に涼しく過ごせる住まいを探す際には、次にご紹介する間取りや設備などを参考に、しっかりチェックしましょう。
風通しのよいレイアウト
部屋を涼しくするためには、室内にこもった熱気や湿気を室外へ逃がしてやる必要があります。そのためには、風通しがよいレイアウトであることが重要です。
風通りを遮らないように、なるべく間仕切りの少ないワンフロアや角部屋のレイアウトをおすすめします。
2方向以上に窓がある部屋
2方向以上の窓がある部屋なら、風の通り道ができ、室内の熱気や湿気を外にうまく逃がしてくれます。
エアコン設置の部屋
エアコン設置の部屋なら、入居後にエアコンを購入する必要がありません。
広いベランダのある部屋
ベランダの奥行きのある部屋なら、ひさしとなる部分が長くなるため、夏でも部屋に日差しが入りにくくなります。そのため、直射日光による室内の温度上昇を抑えることが可能です。
また、スペースが広いため、サンシェードやオーニングなども設置できます。
熱交換型24時間換気システムのある部屋
シックハウス症候群を防ぐために、2003年以降に建てられた住居には、すべて24時間換気システムの設置が義務付けられています。
熱交換型24時間換気システムは、室内の空気を入れ替える際に、室温を保ちながら湿度を調整してくれるため、1年を通じて心地よく過ごすことが可能です。
ただし、24時間換気システムは大きくわけて3種類ありますが、種類によっては夏の外気をとりこんで、室内の温度が上がってしまうものもあります。
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複層ガラスサッシのある部屋
熱の出入りが最も多いのが開口部です。外部からの熱を遮断し、快適な室内温度を保つためには、ガラスやサッシの性能にもこだわりましょう。
複層ガラスサッシのある部屋なら、外気の影響を受けずに、快適な室内温度を保てます。
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周辺に緑などが多い立地
周辺に緑が多い立地は、夏を涼しく過ごす部屋としておすすめです。昼は植物の光合成で放出される水分によって、緑を通り抜けて涼しくなった風が室内に入ってきます。
また、田んぼに近い立地なら、夏は水面を通り抜けた心地よい風が、部屋の中にもたらされます。
暑い夏でも、工夫次第で部屋を涼しくできる!
夏を涼しく過ごすためには、室内にこもった熱気と湿気を逃がしてやること、そして部屋の温度上昇を抑えるために外部からの熱を遮り、部屋に入れないことが重要です。
その条件に合う、風通しのよいレイアウトの部屋や広いベランダがある部屋、周辺に緑が多い立地の部屋は、暑さが厳しい夏でも涼しく過ごせます。
また、防犯や周辺環境のために窓を開けられないなら、窓ガラスに断熱性の高い複合ガラスのサッシがついている部屋、熱交換型24時間換気システムのある部屋がおすすめです。私自身はすだれとサンシェード、冷風扇を用いることで、ここ数年の夏はほとんどエアコンを使うことなく、快適に過ごしています。