高円寺にスターバックスやTSUTAYAがないのは、なくても誰も困る人がいないから。
日本にカフェブームを起こすきっかけとなったスターバックスは1996年に銀座で1号店をオープンしてからというもの、東京を中心に次々と日本のメジャーな都市にチェーン展開を行ってきました。
そうして現在、日本全国には1200以上もの店舗がオープンしているため、普段よく耳にする街には当然のこと、あまり知られていない街にまでスターバックスがある時代になりましたが、そんな中、サブカルの街として全国的に有名な東京・杉並区の高円寺という街にはスターバックスが一軒もありません。
高円寺にスターバックスがない理由は定かではないものの、スターバックスがある街とそうでない街とを比較すると、その理由が見えてくるような気がします。
スターバックスがある街というのは徹底的に人の居場所を破壊するようにできていて、例えば、ひと昔前にはどこの駅にもあった待合室や、歩行者がちょっと休憩できるベンチなどが見栄えやスペースの効率化のためにどんどん廃止されているのです。
そうやって見た目や効率ばかりが優先されて人が立ち止まることのできるスペースが街からなくなると、街の居心地というのは一気に低下します。
自分の居場所を失って居心地が悪いと感じる人が増えれば、そこにビジネスチャンスを見出す企業が現れるのは当然のことで、スターバックス、ツタヤ、そしてファミレスなどのチェーン店がそういった街に続々と参入してくるというサイクルは今や日本各地で起きているのです。
それは裏を返せば、日本中に居心地の悪い街がどんどん増えていることになりますが、一方で高円寺のようにチェーン店が割り込む余地がほとんど無い街というのは、人が自然に集まることのできる空間がたくさん残されていることの何よりの証拠だと言えます。
また、街の住み心地の高さが世界的に知られているオーストラリアで、スターバックスが参入してからたった8年で撤退に追い込まれたということからも、居心地の良い街にチェーン店が入るスキマがないことは一目瞭然です。
確かに高円寺は決してオシャレと呼べる街ではないのかもしれません。しかし、住んでいて本当に居心地が良い街というのは見た目や効率が多少悪くても、「ちょっとスタバ入ろうか」と言わなくてもいい街なんだと思います。
著者:高橋将人 2017/12/11 (執筆当時の情報に基づいています)
※本記事はライターの取材および見解に基づくものであり、ハウスコム社の立場、戦略、意見を代表するものではない場合があります。あらかじめご了承ください。