1店舗あたりの平均年商が1億円を超える千歳烏山の商店街「商店街は商品売買の場としての役割を終えた」
日本全国にある商店街の中で繁盛しているのはたったの2%で、残りの98%は衰退の危機にあると言われる中、世田谷区・千歳烏山(ちとせからすやま)にある烏山商店街は、周辺に新宿や吉祥寺といった商業集積地があるにも関わらず今日も大勢の人で賑わっています。
それもそのはずで、ここ千歳烏山の商店街は1店舗あたりの平均年商が1億円を超える日本でもっとも儲かっている商店街の一つであり、日本に約132万店舗ある商店のうち9割以上が年商1億円に満たず苦しい経営状態が続いていることを考慮すれば、これは驚異的な数字なのです。
そんな千歳烏山の商店街は当然、空き地問題や後継者問題とは無縁であるため、全国から視察団がやってくることで知られていますが、興味深いことに、この商店街の繁栄を支えてきたのはスタンプカード(ポイントカード)でした。
買い物をしたら100円ごとに1ポイント付与、といったポイント制度は今でこそ全国のあらゆる店に浸透しているものの、実はこのポイント制度はここ千歳烏山で生まれたと言われています。
ただ、千歳烏山のポイント制度が他と大きく違っているのはその付加価値の高さにあるようです。千歳烏山では、貯まったポイントを買い物に使える他に、なんと地元の金融機関への預金(現金化)、映画やコンサートのチケット、そしてバス・駐車場の回数券と交換など、通常の現金と遜色ない価値を持っており、地元では「第二の通貨」として流通しています。
近年、このポイントカードは紙製カードからICカードへとリニューアルされ、そこにクレジット機能が加わるなどして30年以上に渡って進化し続けており、なんと千歳烏山の通行客の95%がカードを持っているのだそうです。
そうして、ポイントカードのリニューアルと通行客の高いカード保有率を受け、テクノロジーと商店街をかけ合わせた新たな取り組みが近年始まりました。
それは千歳烏山エリアで一人暮らしをしている65歳以上の高齢者のカード利用状況を追跡するというもので、約20日間カードの利用が確認できなかった場合、商店街組合が事前に登録されている連絡先に電話で問い合わせ、それでも連絡がつかない場合には、世田谷区に連絡して区の職員が自宅に駆け付けて安否を確認するという画期的なシステムが導入されたのです。
日本がまだ物質的に貧しく、なかなか物が手に入らない時代に「商店街」というシステムは確立されましたが、大型スーパーやコンビニで溢れかえる現代社会において、商店街は単に商品を売買する場としての役割を終えたと言わざるを得ません。
そういった意味では、どこにも売っていない「安心」が買える千歳烏山が今日も大盛況なのは納得できますし、これが21世紀における生き残りをかけた商店街の進むべき姿だと言えるのでしょう。
著者:高橋将人 2018/2/27 (執筆当時の情報に基づいています)
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