サグラダ・ファミリアよりも工期が長い新宿駅「新宿は時代の変化に呼応して発展し続ける」
新宿駅は毎日360万人を超える人々に利用されていて、2007年には乗降客数が世界で最も多い駅であるとしてギネスブックに登録されました。
ドイツの首都ベルリンの人口が約350万人であることを考えると、新宿駅はヨーロッパの一都市に住んでいる人の数に匹敵する人数を毎日さばいていることになります。(1)
駅の構造も「新宿ダンジョン」というスマホゲームができるほどに入り組んでおり、乗降客数が世界一であるぶん駅で迷う人の数も世界で一番なのかもしれません。
新宿駅の建造はスペインの建築家アントニオ・ガウディの代表的な建造物であるサグラダ・ファミリアの建設が開始された3年後に始まっていますが、新宿駅もサグラダ・ファミリアと同じように今日まで完成することなく工事を繰り返しているということはあまり知られていないのではないでしょうか。
サグラダ・ファミリアは永遠に完成しない建物であるとこれまでずっと言われ続けながら、3Dプリンターなどの建築技術の発展から、ガウディの没後100年となる2026年に完成することが見込まれているといいます。
一方で、駅ビルの高層化や西武新宿線乗り入れのためのプラットホーム建設など数々の構想がある新宿駅の工期は一向に終わる気配を見せておらず、新宿駅の工事がサグラダ・ファミリアよりも長くなることはどうやら確実なようです。
新宿駅がどうしてずっと工事中なのかというと、駅の開発計画を立てるときに将来の人口増加をある程度までは予測できても、その先がどうなるかということがわからないため、少し先の未来の姿を予測することしかできず、その予測に基づいて少しずつ駅の改良を行っているからなのだといいます。
もともと街の外れに作られた新宿駅は、関東大震災での被害が少なかったことで東京東部から人口が流入して、多くの私鉄が乗り入れるようになり、1964年の東京オリンピック後に新宿副都心の開発が始まったことをきっかけに大きく発展していきました。
現在は、2020年にある東京オリンピックを目指して行われている東口と西口の地下連絡通路の他、2040年までには駅前ロータリーの歩行者優先広場への再編や線路をまたいで駅の東西をつなぐウッドデッキの建設が計画されています。
今は新宿駅によって分断されてしまっている、歌舞伎町やゴールデン街といった駅東側のディープなエリアと、高層ビルが立ち並ぶ駅西側のビシネス街が簡単に行き来できるようになることで、それぞれの特色が混ざり合って、まだ誰も見たことのない姿へと新宿駅は変化してくのではないでしょうか。
田村圭介・上原大介『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』(SBクリエイティブ、2016年)Kindle
著者:天野盛介 2018/5/4 (執筆当時の情報に基づいています)
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