隠れラーメン激戦区「北綾瀬」に知る人ぞ知る名店が集まる理由

池袋や神田など日本各地にラーメン激戦区と呼ばれるエリアがありますが、近年ラーメンファンの中で密かに注目されているのが足立区の北綾瀬駅周辺のエリア。

このエリアにはラーメン店が集中しており、グーグルマップで「北綾瀬 ラーメン屋」と検索すると綾瀬駅から北綾瀬駅にかけて数多くのラーメン店がヒットします。

北綾瀬と言えば住宅が密集したベッドタウンで、周辺にはスーパーなどが立ち並ぶ庶民的な雰囲気の東京の下町といった様相を見せていますが、実は美味しいラーメン店が軒を連ねる東京屈指の知る人ぞ知るラーメン激戦区でもあるのです。



北綾瀬エリアのラーメン店の特徴は、とにかくオリジナリティが高いということ。

家賃が良心的な北綾瀬は新しいチャレンジをするのに最適な街と言われていて、意欲的なラーメン店主による特徴的なラーメンが食べられる街なのです。

そもそもなぜ北綾瀬周辺のエリアにラーメン屋が集まるようになったのでしょうか。実は北綾瀬がある足立区にはもともとラーメン文化が根付いていました。

昔から長距離ドライバーが北へ向かう際の玄関口として栄えた足立区では、ドライバーが休憩の際に口にするラーメンが人気となり、日本屈指の豚骨ラーメン激戦区として古くからその名を馳せています。

足立区のラーメン文化を牽引する伝統の田中

足立区のラーメン文化を長きにわたって引っ張ってきたのが田中商店です。本場博多の長浜ラーメンに一切の引けを取らない田中商店は長らく足立区民に愛され、足立区全体で豚骨ラーメンの人気が高まりました。

しかし、2011年に北千住でオープンした牛骨ラーメンで有名な「マタドール」の登場によって、足立区のラーメン文化も大きな変化を迎えることになります。

徹底した素材へのこだわりによって瞬く間にラーメンファンから高い支持を得るようになったマタドールの登場によって、「牛骨」という新しいジャンルのラーメンが世間に認知されるようになり、ここから個性的なラーメン店が北綾瀬はもちろんのこと足立区各所に集まるようになりました。

伝統の田中商店と共に足立区のラーメン文化を牽引する、革新のマタドール

北綾瀬を歩いていると、手軽な値段で食べられる昔ながらのラーメン店から、徹底したこだわりを見せる個性的なラーメンまで本当に様々なラーメン店を目にしますが、ここまで作り手によって個性が出る食べ物は他にはないのではないでしょうか。

それを象徴するのがミシュランガイドでしょう。2014年12月に発売された『ミシュランガイド東京2015』からラーメン部門が新たに創設され、多くのラーメンファンを驚かせました。

2010年代から既存の枠を超えた個性的なラーメン店が次々と登場する中、2014年にミシュランがラーメンカテゴリを新たに設置し、B級グルメの代表格ともいえるラーメンを掲載に値すると判断したという事実は興味深いものがあります。



残念ながら北綾瀬にはミシュランガイドに掲載されたラーメン店はまだありませんが、北綾瀬周辺には多くのファンから支持を集める個性的なラーメン店がいくつもあります。

例えば、綾瀬駅から歩いて2分ほどのところにある「ラーメンしょっぷ中吉(ちゅうきち)」。

トロトロに煮込んだ牛すじを中華麺とかけ合わせた「牛すじぶっかけ」ラーメンが人気で、昔からある地元の煮込み料理のような味付けの牛すじとラーメンの組み合わせは一度食べたらクセになると評判を呼び、常連客からも高い支持を得ている評判のお店です。



また、北綾瀬駅から歩いて2分ほど歩いたところにある「波(シー)」も注目に値するお店の一つです。

知る人ぞ知る美味しい味噌ラーメンが食べられる店として評判で、近年人気が高まっている「ベジポタ系味噌ラーメン」が特徴です。

ちなみにベジポタとは、ベジタブル・ポタージュラーメンの略で、数種類の野菜をポタージュ状にした濃厚なスープのこと。

同店では豚骨と鶏をベースに根菜を中心にスープを作る、超濃厚豚骨ベジポタ系味噌ラーメンが堪能できる店としてファンから高い支持を集めています。



大手チェーン店による最大公約数の需要に合わせた大衆的なものとは異なり、ラーメンという食べ物は作り手のこだわりによってアウトプットが多種多様になるため、店ごとに意外性や驚きが強い食べ物です。

ただ、意外性や驚きが強い食べ物であるがゆえに、ファンはより強い刺激を求めて様々なお店を回り、その過程で淘汰されてしまうラーメン店も少なくありません。

実際、全国のラーメン店約35,000軒のうち14,000軒が1年以内に閉店し、その穴を埋めるように新たなラーメン店が新規参入するなど、入れ替わりが激しいのがラーメン店の特徴です。

ラーメン戦国時代とも言える今日、隠れラーメン激戦区「北綾瀬」のラーメンカルチャーが今後どのような歩みを進めるのか目が離せません。


2020/7/31 (執筆当時の情報に基づいています)
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