昭島発、自然を遊ぶジムPLAY「スポーツを『運動』ではなく『生活』として捉える」

新宿から電車で40分、東に立川、南に八王子が位置する昭島市。多摩川の左岸にあり、さらに市北部に玉川上水が流れる自然豊かな昭島のまちは、「都市型リゾート」として近年注目を集めています。

昭和飛行機工業という昭島の老舗企業や市の計画により、駅を降りれば、巨大ショッピングモールやホテル群、スポーツ施設、ゴルフ場など、徒歩圏内に魅力溢れる施設がいくつも建てられているんです。

そのなかでも特徴的な場所が「モリパーク アウトドアビレッジ」というアウトドア専門ショッピングセンター。2015年に誕生した新しい施設で、スポーツ用品店が軒を連ねるのはもちろんのこと、トレッキングを疑似体験できる小道「トレイルレーン」が敷かれるなど、施設全体が森を意識した、昭島のスポーツ拠点になっています。

昭島駅北口から徒歩5分ほどの場所にある「モリパーク アウトドアビレッジ」

アウトドアビレッジを歩いていると、店の連なりの先に巨大なクライミングウォールがそびえ立っているのが見えます。これは「PLAY」と呼ばれるクライミング&ヨガスタジオの一角で、4年前にオープンして以来、連日多くの地元民で賑わいを見せる施設です。

▼ スポーツのコミュニティ化を図る。「運動がコミュニケーションの潤滑油になる」



PLAYの入り口をくぐると、まず広大なカフェスペースが広がっていて、その先のガラス越しにクライミングスペースがあります。この一風変わったレイアウトの狙いについて、運営企業である株式会社タベイプランニングのPLAYマネージャー・森善久さんが語ってくれました。

「カフェでお茶していて何気なく横を見ると、壁面を多くの人が登っている。見ているうちに、自分にもできそうかも、とハードルが下がっていくことがあるんです。それに、女性でも大丈夫なのか、どれくらい本気なのか、そうした空気感がわざわざ体験せずとも分かるんですよ。もちろんお茶だけして帰っていくお客様も多くいらっしゃいます」

森善久さん。以前は月の半分ほど風邪を引いていた時期もあったものの、スポーツを始めてからは体調を崩すことはあまりないそう

「体験」以前の「下見」ができてしまうPLAY。幅広い年齢層のなかでも、産後の女性が子供を連れている姿を多く目にします。それには、このカフェスペースが「コミュ二ティ化」していることが関係しているようです。この現象について森さんは、次のとおり説明してくれました。

「運動した仲間がコーヒーを飲んでくつろぐ場所がある。スポーツをして汗をかいた仲間って、打ち解けやすいですよね。そうすると、『わたしが子供見てるから、登ってきていいよ』というようなコミュニケーションが生まれるんです。もちろんスタッフも見てますし、お母さんもガラス越しに子供を見れるし安心なんです」

「要するに、スポーツというものがコミュニティやコミュニケーションの潤滑油になるんです。だからこそコミュニティを温める場、深められる場、つまりカフェスペースのような場所が必要になるんです」

ヨガスペースからも、クライミングエリアを見通すことができる

このようにスポーツにのぞみやすい環境が整備されているのには、「運動」に感じるハードルを下げてほしいというPLAYの意向があります。

そこには、競合他社とお客様を取り合うのではなく、競技者人口そのものを増やしていきたいという、PLAYのスポーツそのものへの思想が根底に存在します。

平成29年にスポーツ庁が全国の男女2万人に行った調査では、週1日以上運動している人の割合は全体で51.8%。実際に約半数の人は、週1回も運動していないという現状があります。

森さんは、ここをきっかけにして、多くのスポーツに挑戦してほしいと、以下のように語ります。

「弊社のモットーは、『地球が遊び場』なんです。メディアが多様化して、人間は自然で遊ばなくなりました。それだけでなく、最新技術で森や川をジムの壁に映し出し自然を演出するというような、一種の矛盾すら生じています。背中を丸めてスマホと向き合ってる人たちに、もう一度外で遊ぶということを思い出してほしいんです」

その言葉通り、PLAYはクライミングやヨガに限らず、青梅市の御嶽などに足を伸ばし、山道を歩いたりと遠征プログラムを頻繁に開催しています。

▼ スポーツを通じて自然にアクセスする。身体を動かすことで、人間本来の姿に近づいていく

多摩川の水面を漂うSUP。森、山、海、これらの繋がりを遊びながら理解する

このようなことをつづけていくうちに、PLAYは昭島の健康のためにはなくてはならない存在になりました。とくに昭島のスポーツ拠点「アウトドアビレッジ」は中心的な役割を担っていて、PLAYの会員証を持って提携先店舗に入ると割引などが受けられ、逆にPLAYでスポーツに魅了された人を好みに合った店舗に送客する、というような循環ができています。

PLAYの入り口は一つ。「CAFE&SHOP」と一見スポーツ施設に見えないのが特徴

こうしてスポーツの輪を広げ、敷居を下げつづけるPLAYですが、今後はさらにハードルの低いものにしたいと、森さんは語ります。

「スポーツって、それぞれに名前がついてるから仰々しく聞こえちゃうと思うんですよ。だからもう、名前を取っ払っちゃおうって。『ボルダリング』ではなく、『ちょっとぶら下がってみる』といったように、動作レベルに落とした表現にして、細かく教える。実際、そういう小さな動きの連続で『ボルダリング』となるわけで」

「そうやって動きを分解していくと、どのスポーツも繋がりを見せる。あ、この動きは、あのスポーツのこの動きに似てるな、とか」

自然の岩場を登る森さん。遠征プログラムに森さん自身が同行することも多いのだそう

このようにひとつひとつの動きを分解していくと、徐々に「自然」というのものと接続されていくような感覚があると、森さんは話します。

「もともと人は、自然で生活をしていましたよね。崖を登ったり、山を歩いたり、川を渡ったり、そういうものをスポーツではなく、生活として捉えていた。だから『運動をする』ということは『自然で暮らす』という人間本来の姿に近づいていくことを意味するんです」

「それにこの先、予期せぬ自然災害が起こってしまった時の準備にもなります。何もなくなってしまった時に生き抜ける人は、家でゲームをしている人ではなく、普段から外で遊んでいる人だと思います」

PLAY入り口のロゴ。植物を多く置かれた店内は、運動後の心地よい爽快感を与える

PLAYを運営する株式会社タベイプランニングは、もともと福島で旅館経営をしていた会社で、震災があった際に町が半壊し子供たちが自然で遊べなくなってしまったのを見て、市外に連れていって外遊びをさせるといった活動を行っていました。そうした「自然との接点」こそが、PLAYの起源なんだそうです。

だからこそPLAYは、人一倍スポーツや外遊びを広めていきたいとの願いを強く持っています。スポーツと日常、外遊びと日常、そこに境目を感じる人の多いこの現代。その敷居を跨ぐきっかけは、PLAYのコーヒー1杯なのかもしれません。



【取材協力】

株式会社タベイプランニング 

クライミングジム&ヨガスタジオ「PLAY」マネージャー/森 善久

【アクセス】

東京都昭島市 田中町 610-4 MORIPARK Outdoor Village内

昭島駅北口より徒歩5分ほど


著者:清水翔太 2019/5/17 (執筆当時の情報に基づいています)
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