足立区の食器ブランドがインスタグラムでレシピを更新し続けるワケ

東京のデザイン会社2社と富山の樹脂メーカーの共同開発プロジェクトによって生まれた、「調理」「食事」「保存」を兼ね備えた食器「9°(以下、クド)」

耐熱温度がマイナス20度から220度までと幅広いクドは、冷凍冷蔵の短時間の保存から冷たい調理、電子レンジでの温め直しから高温加熱調理までを可能とし、そのまま食卓に出すことができるため食後の時間にゆとりを生み出すことができます。

(写真提供:9°)

そんなクドブランドの販売を行うのは東京・足立区に拠点を構える株式会社カブデザイン(KaB DESIGN INC.)です。

同社は、単に商品をデザインするだけでなく、実際に商品を使う顧客の生活まで一貫してデザインすることにこだわっており、今回は同社の齋藤善子さんと市橋樹人さんに詳しく語っていただきました。

齋藤善子さん(左)と市橋樹人さん(右)

高橋:クドは「陶器?」と思わせる重量感と触感が特徴的ですが、実際のところ、これはプラスチック製なのですよね?

市橋:展示会に出展すると皆さんよく陶器だと勘違いされるのですが、これはエンジニアリングプラスチックという特殊な素材を使っていて、数ある樹脂の中でも重みがある素材なんですよ。

齋藤:こうした変わった素材を使った商品開発ができるのは、素材メーカーさんとの繋がりが強いからなんですよ。特に樹脂メーカーさんと共同でお仕事をさせていただく機会が多いので、変わった素材を使った商品の開発を得意としています。

(写真提供:9°)

高橋:正直、このような触感のプラスチック製品を見たのは初めてで驚いています。素材に対するこだわりも非常に興味深いのですが、商品を使っているユーザーの生活までデザインする点にすごく惹かれました。

齋藤:ありがとうございます。カブデザインはデザイン会社ではあるものの、プロダクトを作って終わりではなく、プロダクトを通じて得られる体験を一緒にデザインしていくところまでが一つの仕事だと考えているのです。

商品を作る人にとって売ることはゴールかもしれませんが、お客様にとって買うことは「スタート」にすぎません。その意味で、商品を購入してくださったお客様の生活にどれだけ入り込むことができるか。商品のポテンシャルを最大限引き出すために何ができるかを考えるところまでが、「デザイン」だと考えています。



高橋:お客様の生活にどれだけ入り込めるかという点に関して、カブデザインさんでは具体的にどのような施策を行っているのでしょうか?

市橋:「使い続けることによって得られる体験」を創り出すために、弊社ではクドを使ったレシピをインスタグラム上で頻繁に更新しています。「こういう使い方ができますよ」という提案を継続的に行っているんです。

クドは器のブランドではあるものの、レシピを作って商品の使い方を継続的に提案し続けることで、棚に入れっぱなしになる時間を少しでも減らせると考えています。

プロダクトには自信があるので、使う機会を増やすことができれば、調理体験を通じてポジティブな感情を引き出すことができるはずなんです。「これいいな」の積み重ねが「ブランド」を形成するものと考えています。

(写真提供:9°)

高橋:確かに、特に食器類は気に入って購入したとしても、結局棚にしまい込んで次第に使わなくなることが多いですよね。クドを使う機会を少しでも増やすためにレシピを公開するというアプローチは興味深いですね。

ところで、インスタグラムではどのようなレシピを公開しているのでしょうか?何か工夫している点はあるのでしょうか?

齋藤:インスタグラムは毎週更新し、今では約60種類のレシピを公開していますが、いずれにも共通するのは調理時間が10分以内という点です。実際のところ、調理時間が10分近くになるレシピはほとんどなくて、多くが6〜7分のレシピで占められています。

画像:クド公式インスタグラム

高橋:調理時間が短いレシピに絞って掲載しているのは、何か理由があるのでしょうか?

斎藤:実はクドの食器は、一人暮らしの方をターゲットに作られている商品なんです。一人暮らしだと、わざわざお鍋を用意して自炊する時間的・体力的余裕がないでしょうから、少しでも家事にかかる時間を減らしたいと考えました。

そのため、サイズ感もちょうど一人分の食事をまかなえるサイズで展開しているんです。クドの食器はこれひとつで調理ができますし、蓋をお皿として使うこともできるので、これひとつあれば何枚もの食器を用意する必要はありませんし、ワンルームマンションなどにお住まいの方でも限られた収納スペースを圧迫する心配がなくなります。

もちろん一人暮らしに限らず、最近はご家族でお使いになられているお客様が増えてきて、もっと大きいサイズが欲しいという要望が挙がってきているので現在検討中です。



高橋:ちなみにクドを使ったおすすめレシピは何でしょうか?

市橋:公開しているレシピは全ておすすめなのですが、印象に残っているのは今年5月のコロナの自粛期間中に行った「おつまみシリーズ」ですね。自粛期間中は家でお酒を飲む機会が増えたので、クドの食器を使った簡単おつまみレシピを提案しました。

齋藤:私個人のおすすめとしては、「豆腐のアヒージョ」ですね。少しだけ贅沢して質の良いオリーブオイルを買ってきて、そこに絹ごし豆腐を入れて、レンジで5分くらい加熱。最後に塩胡椒で味を整えると本当に美味しいのでおすすめです!

画像:クド公式インスタグラム

高橋:豆腐のアヒージョとは斬新ですね!すごくシンプルだけど、つい真似してみたくなる、そんな印象を与えるレシピですね。

最後にカブデザインさんからクドに関してPRしたい点があれば教えてください。

市橋:最近は飲食店などでプラスチック製のストローが廃止になるなど、「プラスチック=悪」のような風潮があると思います。でも、それは捨ててしまうから悪なのであって、プラスチックの存在自体を否定する理由にはなり得ないと思います。

クドは商品を使う体験から得られる感情によって、ブランドを生み出す取り組みを行っていますが、使い続けるためには耐久性の高さが重要です。



実はクドの食器は耐久性が非常に高く、高いところから落としても破れないんです。あまりにも耐久性が高いため、ハンマーを持ち出して思い切り叩いて耐久性を確かめたほどです(笑)

さすがにハンマーで叩けば壊れてしまいますが、破れ方も陶器のように飛び散るのではなく、グニャっと折れ曲がるような破損の仕方をするので小さなお子様がいるご家庭でも安心して長くご使用いただけます。

今後も、お客様の暮らしをデザインするブランドとしてクドブランドを確立させていきたいと思います。

(写真提供:9°)

◆取材協力

株式会社カブ・デザイン

◆関連リンク

9°公式ページ

https://9-do.net/

9°公式インスタグラム

https://www.instagram.com/9do2017/

KaB DESIGN INC.公式ページ

https://kab-design.jp/

PORT公式ページ

https://port.vc/


著者:高橋将人 2020/10/1 (執筆当時の情報に基づいています)
※本記事はライターの取材および見解に基づくものであり、ハウスコム社の立場、戦略、意見を代表するものではない場合があります。あらかじめご了承ください。