自然災害の影響で、床下浸水が発生すると「どのように対処すればよいのか」「修繕費用は誰が負担するのか」など、多くの方が不安を感じるでしょう。大雨による洪水や台風などの影響で、賃貸物件に住んでいても被害に遭遇する可能性は十分にあります。
そこで今回は、床下浸水時の具体的な対応手順や修繕費用の負担者、火災保険の水災補償などについて詳しく解説します。
最後まで読めば、浸水被害への迅速かつ適切な対応方法が分かり、万が一の際にも安心して問題に対処可能です。ぜひ参考にしてください。
床下浸水とは

床下浸水とは、建物の基礎部分に水が浸入する現象を指します。特に台風や大雨の際に発生しやすく、浸水した水が床下の空間に留まり、建物の構造や基礎に影響を与える現象です。
床下には湿気が溜まりやすく、カビや腐敗、害虫の発生を引き起こすため、健康被害や建物の劣化を招く恐れがあります。さらに、長期間放置すると重大な被害をもたらすことがあるため注意が必要です。
床下浸水と床上浸水の違い
床下浸水と床上浸水は、どちらも水害による被害ですが、被害の範囲や影響が異なります。
・床下浸水:建物の基礎部分に水が浸入する現象
・床上浸水:室内の床面を越えて水が浸入する現象
具体的な特徴は以下の表にまとめましたので、確認しておきましょう。
項目 | 床下浸水 | 床上浸水 |
---|---|---|
被害範囲 | 建物の基礎部分、床下空間 | 室内の床面を越えて浸水 |
影響 | 建物の劣化、カビ・害虫の発生 | 床下浸水の影響に加えて家具や家電、床材の直接的な被害 |
生活への影響 | 見た目にはわかりにくいが、長期的に影響 | 生活空間が直接侵害され、即座に影響が出る |
対処の緊急性 | 定期的な点検と早期発見が重要 | 緊急対応が必要 |
初動対応の方法 | 水の排出、乾燥、カビ防止策 | 水の排出、家具や家電の救出、清掃 |
リスク | 建物の構造的なダメージ、健康リスク | 床下浸水のリスクに加えて家具や家電の損失、生活の再建が必要 |
床上浸水は生活するエリアに多大な影響を及ぼすため、緊急で対応をする必要があります。どちらの浸水も早急な対処が求められますが、床下浸水は見えにくい部分に被害が及ぶため、定期的な点検と早期発見に努めることが大切です。
賃貸物件が床下浸水した場合の対応手順

ここでは、賃貸物件で床下浸水が発生した際に取るべき具体的な手順を詳しく解説します。安全確保から始まり、修繕までの流れを把握しておくことで、被害を最小限に抑えることができるでしょう。
STEP1. 電源を切る or ブレーカーを落とす
床下浸水が発生した場合、まずは電源を切断しましょう。水と電気が接触すると感電のリスクが高まるため、自身の安全を確保するために重要です。
電源を切る作業やブレーカーを落とす作業を怠ると、重大な事故に繋がる恐れがあるため、最優先で行いましょう。
STEP2. 大家さんや管理会社に状況を報告する
大家さんや管理会社に状況を速やかに報告すれば、適切な対応を指示してくれます。
もし指示がなければ、次項に従って対応を進めましょう。報告が遅れると対応が遅れ、被害が拡大する恐れがあるため、迅速な連絡が必要です。
STEP3. 保険会社に連絡する【保険加入者のみ】
保険に加入している場合は、速やかに保険会社に連絡し、被害の報告を行いましょう。床下浸水は火災保険の水災補償の対象となることが多いため、補償を受けるためには早めの連絡が必要です。保険会社からの指示に従い、必要な書類や証拠を準備してください。
STEP4. 被害の記録を残す
被害の状況は、詳細に記録しましょう。文章よりも写真で記録を残す方が状況を細かく把握でき、後々の修繕や保険請求の際に役立ちます。
床下浸水の箇所や被害状況を様々な角度から撮影し、日時を記録しておきましょう。
STEP5. 浸水した水の排出(水抜き)と乾燥を行う
最終的には、床下に浸水した水を早急に排出し、乾燥させることが重要です。これにより、カビや悪臭の発生を防止できます。具体的には、以下の流れで対処します。
①排水(水抜き)を行う
浸水量が少ない場合は、バケツを使って手動で水を抜きます。バケツがなければ、ボウルや食器類、洗面器でも代用しましょう。雑巾やタオルを使用することも可能ですが、時間がかかるため、少量の水に限ります。
一方で、浸水量が多い場合は、排水ポンプを使用して効率的に水を抜きます。排水ポンプはホームセンターなどでレンタルできるので、必要に応じて利用してください。
②汚れを除去する
浸水した水には泥やゴミが混じっていることが多いため、ちりとりや雑巾を使ってしっかりと除去します。泥汚れを放置するとカビの原因となるため、早めに清掃することが重要です。
③乾燥を行う
浸水後の乾燥は送風を利用することがポイントです。扇風機や送風機を使って、床下をしっかりと乾燥させます。温風機能を使用すると、逆に湿気がこもる可能性があるため、避けるようにしましょう。
床下浸水後の影響と対処法

床下浸水が発生すると、建物や生活にさまざまな悪影響が生じます。ここでは、それぞれの影響とその対処法について詳しく説明します。
カビ
床下に水が浸入すると、湿気が原因でカビが発生しやすくなります。カビは建物の劣化を招くだけでなく、健康にも悪影響を与えることがあります。
カビの発生を防ぐためには、湿気の管理が重要です。通常、カビ取り剤を使用して対処しますが、再発を防ぐためには、床下の通風を確保することも大切です。専用のカビ取り剤を使用し、徹底的に清掃することをおすすめします。
悪臭
浸水後の湿気やカビの発生により、床下から悪臭が発生することがあります。悪臭により、生活環境に大きな影響を与え、不快感を引き起こすでしょう。
対処法としては、床下を乾燥させることが重要です。除湿機を使用して湿気を取り除き、消臭剤を併用することで、悪臭を効果的に除去できます。また、床下の定期的な清掃と換気も、悪臭の発生を防ぐために有効です。
虫被害
虫は湿った環境を好むため、床下浸水後に虫被害が発生することがあります。虫被害は見た目だけでなく、健康や建物にも影響を及ぼします。
防虫剤を使用し、床下を乾燥させることが重要です。噴射式や置き型タイプの防虫剤を使用し、定期的に予防や点検を行うことで、虫被害を防止できます。
ただし、作業を行う際には、安全のため以下の装備をしましょう。
・長袖・長ズボンの作業着
・長靴
・手袋
カビや細菌、薬剤などが目に入らないようにゴーグルやマスクを装着することを忘れてはいけません。また、床下は暗くて狭いため視界が悪くなっていることが多いため、ヘッドライトや懐中電灯も活用しましょう。
感染症
浸水した水には細菌やウイルスが含まれている可能性があり、感染症のリスクがあります。床下の水を速やかに排水し、消毒を徹底することが必要です。
具体的には、適切な防護具を使用し、直接触れないように注意しながら作業を行います。また、消毒剤を使用して、徹底的に消毒することで、感染症のリスクを減少させることが可能です。
賃貸物件が床下浸水した場合の修繕費用は誰が払う?
賃貸物件が床下浸水した場合、修繕費用の負担が誰にあるのかは多くの方が気になるポイントです。ここでは、具体的なケースを挙げながら、修繕費用の負担について詳しく解説します。
大家さんや管理会社が負担するケース
床下浸水の原因が自然災害の場合、一般的には大家さんや管理会社が修繕費用を負担します。例えば、台風や大雨による洪水で床下が浸水した場合です。
また、大家さんの物件管理が怠慢であったために浸水が発生した場合も、大家さんの責任となります。このような場合、借主は特に費用を支払う必要はありません。
ただし、契約書に詳細が記載されていることが多いため、まずは内容を確認することが重要です。
借主が負担するケース
床下浸水の原因が借主の不注意や過失による場合、修繕費用は「借主負担」となります。例えば、窓を閉め忘れたことによる浸水や、排水設備の不適切な使用によるトラブルなどです。
保険が適用になるケースもありますが、借主の不注意による過失は保険対応外になることもあるため注意が必要です。事前に保険内容を確認しておくようにしましょう。
賃貸契約書に修繕費用の負担について明記されていることが多い
賃貸契約書には、修繕費用の負担について詳細が明記されていることが一般的です。必ずしも「自然災害による浸水=大家さん負担」や「借主の不注意=借主負担」というわけではなく、契約内容に基づいて判断されます。
そのため、契約書の内容をしっかりと確認することが重要です。契約書に修繕費用の負担について明記されている場合、双方の責任範囲が明確になります。
特に、浸水に関する条項が含まれているかどうかを確認し、疑問点があれば契約時に大家さんや管理会社に確認しておくことが大切です。
火災保険の水災補償の範囲や補償額、手続き方法

火災保険の水災補償は、豪雨や洪水、台風などの自然災害による水害に対する補償です。床下浸水や床上浸水などの被害に対して、修繕費用や家財の損失を補償します。
水災による被害を受けた場合に、どのように補償を受けるかを知っておくことで、安心して対処できます。
水災補償の範囲
水災補償とは、火災保険の一部であり、豪雨や洪水、台風などの自然災害による水害に対して補償を行うものです。具体的には、建物の浸水や家財の被害、さらには修繕費用までカバーします。
問題は、どの程度の被害が補償されるのかという点です。多くの人がこの補償範囲を理解せずに契約を結んでいるため、いざというときに困惑することがあります。
水災補償の範囲は保険会社や契約内容によって異なるため、契約時に詳細を確認することが重要です。一般的には、床下浸水や床上浸水による被害、さらに家財の損害が含まれますが、具体的な範囲を知ることで、安心した生活を送れます。
水災補償の補償額
水災補償の補償額は、保険会社や契約内容によって異なります。一般的な補償額の範囲は、建物の再建費用や修繕費用、家財の補償額などが含まれます。
例えば、浸水被害による修繕費用は数十万円から数百万円に及ぶことがあります。契約時に具体的な補償額を確認し、自分の状況に適した補償額を設定することが重要です。
また、保険会社によっては、補償額の上限や条件が異なるため、詳細をしっかりと確認しておきましょう。
水災補償の手続き方法
水災補償を受けるための手続きは、いざというときにスムーズに進められるように事前に知っておくことが重要です。まず被害発生後に速やかに保険会社に連絡し、被害状況を報告することから始まります。
その後、保険会社の指示に従い、必要な書類や写真を提出します。被害箇所の写真や被害の詳細を記載した報告書、修繕費用の見積もり書などが必要となる場合があるため知っておきましょう。
手続きが完了すると、保険会社から補償金が支払われます。
水災被害のような自然災害は、人間の力ではどうしようもできません。水災に遭わないように、2階以上の部屋を探すことを検討するのもひとつの手でしょう。
賃貸物件が床下浸水しても慌てずに対応をしよう
床下浸水が発生した場合、迅速かつ適切な対応が必要です。床下浸水の被害は予防することが最善策ですが、万が一発生した際には、適切な対処法をもとに対処していくことが重要です。対処法を知っておくことで、被害を最小限に抑え、迅速に元の生活に戻れます。
今回の記事を参考に、いざというときのための備えをしっかりと行い、安心して生活を続けてください。