賃貸物件でよくあるトラブルとして名高いのは「騒音」に関するトラブルです。夜遅くまで騒ぐなどは言語道断ですが、賃貸物件で音の悩みはこれだけではありません。
・職業や学業で楽器を演奏しなければならない
・在宅勤務で静かな環境が欠かせない
このようなニーズに応えてくれる設備として、「防音室」がいま注目を集めています。防音室とは、外部からの音を遮断するほか、防音室内で発生した音が外部に漏れないよう、特別な仕様が施されている個室のことです。
最近ではコンセプト型賃貸物件の広がりもあり、賃貸物件の全てが防音仕様になっているものも存在していますが、まだまだ数が足りません。
そこで今回は、賃貸物件における防音室について解説します。防音室の探し方から注意事項まで、音でお悩みの人に役立つ記事になっています。ぜひ最後までお読みいただき、音の悩みを解決する材料としてお役立てください。
防音室付き賃貸物件を探す方法
上述のとおり、防音室はそのニーズ自体がニッチなものであるため、決して数が多く存在するものではありません。しかし、うまく探すことで防音室が設置されている賃貸物件に出会うことができるでしょう。
最初に、防音室付き賃貸物件の探し方を紹介します。
不動産会社に防音室付きの賃貸物件を探してもらう
もっともスタンダードな方法は、賃貸物件を探しているエリアにある不動産会社に「防音室」が設置されている賃貸物件を紹介してもらうことです。
なぜなら、地域に根付いた不動産会社であれば、その地域にある賃貸物件のことを熟知しているからです。さらに防音室は非常に希少な設備であるため、不動産会社の担当者が把握している可能性は高いと考えられます。
防音室付きの賃貸物件に興味を持ったときは、まず地域の不動産会社に相談してみましょう。
不動産会社に防音室を「設置しても良い」賃貸物件を探してもらう
防音室はもとから賃貸物件に設置・施工されているものであるほか、自分で施工することも「物理的には」可能です。そのため、不動産会社に防音室を自分で設置しても良い賃貸物件を探してもらう方法も有力な選択肢です。
ただし、防音室の設置にはさまざまな問題をクリアしなければなりません。
・家主さんや管理会社の許可を得ること
・防音室の設置や施工にかかる費用
・退去するときの原状回復の協議
これらの交渉を借主が自ら実施することは現実的ではありません。そのため、不動産会社と二人三脚でお部屋探しから行うことで、トラブルを回避しながらの防音室の設置が可能となるのです。
インターネットで探す
インターネットでも、防音室のある賃貸物件を探すことが可能です。
各種ポータルサイトの情報はもちろん、防音室メーカーのホームページに防音室付き賃貸物件の情報が掲載されていることがあります。防音室付きの賃貸物件の情報を直接的に得ることができるほか、防音室の性能や広さに関する情報を知ることも可能です。
防音室を漠然とイメージしている人は、インターネットで防音室に関する情報を詳しく知ることから始めるのをおススメします。なぜなら、実は防音室でなくとも目的が達成できることがあるからです。
防音室は「楽器を演奏する」ニーズが大きな設置・施工理由です。しかし、賃貸物件自体が「楽器演奏可能」「楽器演奏相談」というコンセプトで運営されているときは、時間帯や音量などに配慮する必要性はあるものの、楽器演奏自体は可能だからです。
著者がおススメする探し方の手順は、インターネットで情報収集をしたうえで不動産会社へ相談する、というものです。ぜひ検討してみてください。
防音室付き賃貸物件を借りる際の注意点

防音室付き賃貸物件が見つかったとしても、安心するのはもう少し先の話。なぜなら防音室を借りるとき、いくつか確認しておくべきポイントがあるからです。
ここでは、防音室付き賃貸物件を契約するときにチェックしておくべき注意点を解説します。
目的に合っているかを確認する
防音室が必要な目的と、防音室が設置されている賃貸物件のコンセプトや性能が合致しているかは確認しておきましょう。
なぜなら、目的と性能が合致していないことにより、防音性能がオーバースペックとなり余分な家賃を払うことになったり、目的に応じた防音性能が備わっていないことによって近隣に迷惑をかけたりする可能性があるからです。
防音室の広さを確認する
一口に「防音室」といっても、その広さはさまざま。そのため、目的に応じた広さを有しているかも確認しましょう。
利用目的によっては、大型機材や大きな楽器の搬入が必要なことがあります。そういったとき、広さがネックとなり防音室として使えない可能性があるのです。
防音室の環境を確認する
防音室の種類によっては、一室がそのまま防音機能を有していることもあれば、部屋の片隅に箱型の防音スペースが設置されているだけということもあります。そのため、空調設備の有無や設置の可否、換気の可否などを確認しておかなければ、「防音機能は満たしているけれど暑すぎて(寒すぎて)利用できない」ということになりかねません。
演奏可能な楽器を確認する
防音室の性能や賃貸物件のルールとして、演奏可能な楽器を制限していることがあります。そのため、どのような楽器を演奏してよいかも押さえておきましょう。
特に、グランドピアノやドラムなどはとりわけ大きな音が出やすいもの。いまでは消音機能を活用することもできますが、トラブルにならないように事前に確認しておきましょう。
演奏可能な時間帯を確認する
防音室があるからといって、24時間音を出してよいとは限りません。上述のとおり、防音室を使う人の目的はさまざまであるため、生活リズムも異なっていると考えるのが自然でしょう。
賃貸物件によっては防音室の利用に時間制限を設けていることもありますので、チェックしておいてください。
防音室付き賃貸物件の内見をする際のポイント
希少な防音室付きの賃貸物件の情報を手に入れ、実際に内見へ至ったとき、どのような点に注意しておくとよいのでしょうか。
ここでは、内見で役立つチェックポイントを紹介します。
実際の防音性能をチェックする
かならず実践したいことが、実際の防音性能を確認することです。
持ち込み可能な楽器であれば持ち込んで演奏すべきですが、難しければ防音室内で大声を出したり、スマートフォンで音を出したりして、その性能を実際に体験しておきましょう。
内見では不動産会社の営業担当者がアテンドしてくれるはずですので、防音室内外での音の聞こえ方の違いをつぶさにチェックしておくことで、トラブルの防止に役立ちます。
どのような目的で他の入居者が借りているかを確認する
再三ですが、防音室を借りるうえで目的は非常に重要な要素です。そのため、他の入居者の防音室の利用目的を確認しておくことも忘れてはいけません。
私の経験ですが、在宅でナレーションを録音する仕事をしている人が防音室を契約したところ、わずかに漏れ聞こえる楽器の音が録音に干渉してしまい、仕事にならなかったという話があります。
音を出すことが目的の人もいれば、音を遮断したいという人もいます。目的と利用実態のチェックも欠かさないようにしましょう。
防音室付き賃貸物件が見つからない場合に検討したい物件条件

防音室付きの賃貸物件は上述のとおり、極めて数が少ないものです。そのため、希望のエリアに防音室付き賃貸物件が見つからないことは珍しくありません。
そのようなとき、防音室に変わる賃貸物件としてどのような物件を探すべきなのでしょうか。ここでは、防音室に代わる代替性のある賃貸物件を紹介します。
一戸建て
一戸建てタイプの賃貸物件は、防音性能を有しているわけではありませんが、用途によっては代替性を有している可能性があります。上下左右に面している居室がないため、騒音に関するトラブルやクレームが起こりにくいからです。
とはいえ、大音量で楽器を演奏すれば近隣住宅にも聞こえてしまうもの。大家さんとしても近隣に迷惑をかけるような使い方を前提としている人には物件を貸したいとは思わないため、あくまでも代替案として検討すべきでしょう。「ヘッドホンをせずに曲を聞く」「ボイスチャットをする」程度であれば問題はありません。
角部屋
角部屋も面している居室が「少ない」という観点で、代替性があるといえます。
しかし、一戸建てタイプと比較すると独立性には大きく欠けますので、トラブルやクレームが発生するリスクは一定数あると考えるべきでしょう。
近隣からの騒音トラブルの可能性を減らしたいという目的や、防音室を利用するまでもない程度の目的であれば、角部屋でも替えが効くかもしれません。
DIY可能な賃貸
DIY賃貸とは、借主が自らの費用と責任でリフォームを行うことを前提とした賃貸借契約のことです。借主からみれば好きな意匠内装にでき、貸主からすれば借主を募集するための内装費用を抑えることができるため、郊外の戸建て物件や古民家などで活用が進んでいます。
DIY型賃貸のような、借主が希望のリフォームを施すことが可能な賃貸物件では、自ら防音室を設置することが可能です。
また、DIY型賃貸と明記されていなくとも、防音室設置の可否を確認すると、「原状回復してくれるならOK」という返事がもらえることもあるでしょう。不動産会社と二人三脚で自ら防音室を実現することも決して不可能ではありません。
ただし、原状回復など事前にさまざまな取り決めが必要となります。くれぐれも独自の判断で動くのは厳禁です。不動産会社をはじめ、家主さんや管理会社と共同で話を進めるようにしてください。
防音室がない物件で防音性能を高める方法

防音室のない賃貸物件では、大きな音を出すことは厳禁です。しかし、音の大きさによっては防音室とまではいきませんが、一定の防音性能を持たせることも不可能ではありません。
ここでは、防音性能を高めるための方法をいくつか紹介します。防音室が不要であっても、音のことでお悩みの人にとってもヒントになるかもしれません。どれもすぐに実践できるものですので、ぜひ試してみてください。
なお、防音性能を高める施策を講じたからといって、大きな音を出してよいわけではありません。あくまでも共同生活のルールとマナーは守りましょう。
防音シートやマットを床・壁に貼る
音が直接伝わる床・壁・天井に防音シートや防音マットを貼ることで、音を吸収させ外部に漏らさないようにすることができます。
防音シートやマットはさまざまな種類のものが販売されており、その価格や性能差もさまざまです。そもそも音は直接的に聞こえるもののほか、振動として伝わるものもあり、一概にどの防音シートやマットが適しているかを結論づけることはできません。また、賃貸物件では原状回復がかならず求められるため、一定のリスクが伴います。
そのため、本格的に防音シートやマットを敷設したいと考えるなら、大家さんや管理会社に相談の上で専門業者に依頼することをおすすめします。そこまでの施工は必要ない場合、粘着性がなくすぐに片付けられるようなシート・マットを使いましょう。
防音カーテンを導入する
窓は壁とは違い下地や断熱材が入っていないため、音が伝わりやすいところです。そのため、窓に設置するカーテンを防音カーテンにすることで、防音性能を高めることができます。
なお、カーテンによる防音の目的は、原則として外部からの音の遮断です。室内で発生する音を外部に漏らしたくないときは「吸音カーテン」を選ぶとよいでしょう。
遮音テープを利用する
音は液体のようなもので、少しでも隙間があればそこから漏れ出してしまいます。その「隙間」を埋めるためのツールが「遮音テープ」です。
ドアや引き戸の枠に貼る、たったこれだけで隙間を埋め、防音性能を高めることが可能です。また、防音シートやマットに生じた隙間に貼ることでも効果を得ることができるでしょう。
なお、防音性能を高めるためのツールはたくさんありますが、どれか一つを講じれば良い、というものではありません。一定の防音効果を得たいのであれば、いくつかのツールを組み合わせることが必要です。
防音室付きの賃貸物件は数が少なめ!ポイントを踏まえて効率的に部屋探しをしよう
今回は希少な「防音室」付きの賃貸物件について解説しました。
私は20年以上にわたり賃貸業界に従事していますが、それでもわずか数件しか実物を見たことがありません。しかし、賃貸物件にも個性が求められるようになり、ニッチなニーズであっても応えることが賃貸物件の価値として認められるようになりました。そのため、防音や楽器演奏可能な賃貸物件が増えてきていることも事実です。
しかしながら、防音性能は通常の賃貸物件の建築費用よりも割高になる傾向にあります。そのため、家賃も割高になることは否定できません。とはいえ、スタジオを借りる手間や費用を考えると、自宅で好きなだけ楽器・発声の練習や、録音・録画を楽しめる環境があることは極めて有益といえるでしょう。
また、賃貸物件の契約形態や交渉によっては、自ら防音室を設置したり防音性能を高める工事をすることも可能です。こう考えると、選択肢は意外と多いように感じていただけるのではないでしょうか。賃貸物件で音のことでお悩みの人は、この記事を参考にしていただきお部屋探しにお役立てください。