毎日フライパンを使っていると、調理中にうっかり焦げを付けてしまうことは頻繁に起こります。そうした頑固な焦げは、通常の洗浄ではなかなか落ちないため、愛用の調理器具を手放さざるを得なかった経験をお持ちの方もいるはずです。
実は、焦げはその性質やフライパンの素材によって、適した掃除方法が異なります。
本記事では、フライパンが焦げる根本的な原因、効果的な焦げ落としの方法、素材別のお手入れ時の注意点、そして焦げを予防するコツをご紹介しています。この記事を参考に、正しいお手入れ方法を実践していただければ幸いです。
まずはチェック!素材別フライパンの焦げ落とし方法早見表

使用しているフライパン素材によっても、適切な焦げ落としの方法が異なります。まずは、以下の表を参照ください。
| 素材 | おすすめの焦げ落とし方法 | NG |
|---|---|---|
| 鉄 | 空焚き・水 | クエン酸 |
| ステンレス | 天日干し・重曹・クエン酸 | ー |
| アルミニウム | 天日干し・クエン酸 | 重曹 |
| 銅 | 天日干し・水 | 重曹 |
| チタン | 天日干し・重曹・クエン酸 | ー |
このように、フライパンの素材ごとに、適したお手入れ方法が異なります。間違った方法で焦げを落とそうと試みると、道具を傷める結果になりかねません。
ここからは、素材別の具体的な特徴と、それに伴う正しいお手入れのポイントを詳しく確認していきます。
鉄
鉄製フライパンは耐久性が非常に高く、高温での調理に適しています。この熱への強さを活かし、空焚きで焦げ付きを炭状にして除去する方法が推奨されます。素材が丈夫なため、金タワシを使った強力な洗浄も可能です。
しかし、鉄製フライパンには錆びやすいという欠点もあります。そのため、使用後には水分を残さないよう徹底し、さらに油をなじませる(油ならし)といった丁寧な毎回のお手入れが欠かせません。
ステンレス
ステンレス製のフライパンは、軽くて丈夫であることが魅力であり、冷めにくい特性から予熱調理にも適しています。また、酸やアルカリに強いため、重曹やクエン酸といった多様な洗剤を使用して手入れができます。
焦げ付きや、強火による変色が発生した際には、重曹やステンレス専用のクレンザーなどを使って洗浄することで、再びきれいにすることが可能です。
アルミニウム
アルミニウム製のフライパンは、軽量で熱伝導率が高いのが大きな特徴です。しかし、油馴染みが悪く、食材がくっつきやすく焦げやすいという欠点もあります。
アルカリ性のクリーナーを使うと素材が劣化する可能性があるため、焦げ落としには天日干しやクエン酸を用いた方法を選ぶと良いでしょう。
銅
銅製のフライパンは、熱伝導率が非常に高いため、細かな温度調節がしやすいのが特徴です。しかし、高温で調理をすると変形する危険性があり、また酸や塩分に長く触れると錆びることがあるため、取り扱いには注意が必要です。
焦げ落としに重曹は使えないため、手入れには天日干しや水を使った物理的な方法を選びましょう。デリケートな素材のため、適切な方法でのケアが求められます。
チタン
チタン製のフライパンは、非常に軽量で耐久性があり、さらに錆びにくいのが大きな特徴です。ただし、熱伝導性が低いため、調理の際に温まるまでに少し時間を要するのが欠点と言えます。お手入れの際は、重曹やクエン酸を用いた洗浄方法を選ぶと良いでしょう。
フライパンが焦げてしまう原因

フライパンが焦げつく場合、いくつかの要因が考えられます。焦げつきやすいと感じている方は、次のような、原因となる使い方をしていないか確認しましょう。
・火力(強すぎ・余熱がない)
・コーティング加工剥がれ
・油が少ない
それぞれについて解説していきます。
火力(強すぎ・余熱がない)
火力が強すぎると、フライパンの表面温度が過度に上昇し、食材が焦げ付く原因となります。一方で、予熱が不十分なまま調理を開始すると、油が均等に行き渡らず、食材がくっつくことにより、かえって焦げやすくなります。焦げ付きを防ぐには、調理を始める前に適切な予熱をしっかりと与えることが重要です。
コーティング加工剥がれ
フライパンには、フッ素樹脂加工やセラミック加工など、表面にコーティングが施された製品が多く存在します。
しかし、このコーティング加工は、表面の傷や長期間の使用による劣化によって剥がれてしまうことがあります。コーティングが剥がれると、食材がくっつきやすくなり、結果として焦げ付きの原因となるのです。
油が少ない
調理の際に使用する油の量が少ないことも、焦げ付きを引き起こす原因となります。油は、食材とフライパンの間に薄い膜を作り、食材の滑りを良くする役割を果たします。フライパンの素材によっては特に食材がくっつきやすいものもあるため、それぞれの素材に適した適切な量の油を引くことを意識しましょう。
フライパンの外側が焦げてしまう原因
フライパンの外側が焦げる主な原因は、次の2つです。まずは原因を知り、焦げの発生自体を防ぐための対策を試みましょう。
<フライパンの外側が焦げてしまう原因>
・料理中に吹きこぼしや食材が付着して焼きつく
・洗い残し
料理中に吹きこぼしや食材が付着して焼きつく
フライパンの外側が焦げつく原因として多いのは、調理中に発生する拭きこぼしや、飛び散った食材が熱によって焼きつくことです。
煮込み料理やスープなどの料理を作る際、中身が沸騰して縁からたれ落ちると、それがフライパンの外側に付着します。また、炒め物や揚げ物をする際の油や調味料、食材のカスなどが飛び散り、フライパンの外側に付着して焼きつくケースも珍しくありません。
これらの汚れが高温で加熱され続けると、固くて黒い焦げつきとなり、頑固な汚れとして残留してしまいます。特にガス火を使用する場合は注意しなければなりません。
洗い残し
調理後の洗い残しも、フライパンの外側が焦げつく原因の一つです。調理中に付着した汚れは、一般的なスポンジや洗剤だけでは完全に落とせない場合があります。フライパンの内側は丁寧に洗っている一方、外側の掃除はつい雑になってしまう方もいるかもしれません。
このような洗い残しの上に、さらに次の調理で汚れがつき、繰り返し加熱されることにより、頑固な汚れになることも多いです。蓄積された焦げは、通常の洗浄では落とすのが困難になり、見た目を悪くするだけでなく、熱効率を低下させる原因にもなります。
フライパンの焦げの性質は、原因となる食品によって変わる
フライパンに付く焦げは、実は調理する食材によってその性質が変化します。具体的には、焦げは大きく酸性の焦げとアルカリ性の焦げという二つのタイプに分類されます。ここでは、これらの焦げの性質がどのように異なるのか、それぞれの具体的な特徴について詳しく確認していきましょう。
酸性の焦げ
肉や魚などから付着した、なかなか落ちない頑固な焦げは、主に酸性の性質を持っています。この酸性の焦げを効果的に除去するには、アルカリ性の性質を持つ洗剤が非常に有効です。そのため、後ほどご紹介する重曹を用いた掃除方法を試しましょう。
アルカリ性の焦げ
野菜やきのこ類の植物性の食材から生じる焦げは、アルカリ性の性質を持ちやすくなります。アルカリ性の焦げには、酸性のクエン酸やお酢が効果を発揮します。
フライパンの内面にできた焦げ落とし方5選

ここからは、実際にフライパンの焦げを落とす方法を見ていきましょう。
・天日干しをする
・水を沸騰させて煮詰める
・空焚きを行う
・水に重曹を入れて沸騰させる
・水にクエン酸を入れて沸騰させる
それぞれ紹介します。
天日干しをする
意外に思われるかもしれませんが、フライパンを天日干しすることは効果的な焦げ落とし方法の一つです。よく晴れた日が続く期間に、日当たりの良い場所にフライパンを置き、そのまま数日間放置しましょう。
焦げが完全に乾燥し剥がれやすくなったら、木ベラや割り箸などを使ってこすり落とします。この方法には、干している間はフライパンが使用できないという欠点がありますが、代わりの調理器具があればぜひ試してみてください。
水を沸騰させて煮詰める
水を沸騰させる方法は、テフロン加工や銅素材のフライパンでも実践できる焦げ落とし方法です。フライパンの底面が隠れるくらいの水を入れ、数分間沸騰させます。このときの熱湯が焦げを浮かすため、木ベラなどでこすって取り除きます。沸騰終了後、半日程度放置し、中性洗剤と柔らかいスポンジで洗いましょう。
より強力な焦げつきには、重曹水を使ったつけ置き煮がおすすめです。フライパンに水を入れ、大さじ3杯ほどの重曹を溶かしてから加熱し、沸騰した状態で数分間放置しましょう。火を止めた後、お湯が完全に冷えるまでつけ置きしてから洗い流すと、頑固な汚れも落ちやすくなります。
空焚きを行う
空焚きは、鉄製フライパンのみで実行できる焦げ落としの手段です。焦げを完全に焼き切り、「炭化」させることで除去します。具体的な手順は以下の通りです。
①鉄鍋を強火にかけ、焦げから出る煙が収まるまで加熱を続けます。
②自然に冷めるまで放置した後、金タワシやヘラで焦げをこすり落とします。
③水をかけながら、金タワシを使って残った焦げをこすり洗います。
④最後に食用油を全体に塗り広げ、再度空焚きを行います。
焦げを取り除いた後は、フライパンに再度油をなじませることで錆びを防ぎます。空焚きの際は大変高温になるため、火傷には十分ご注意ください。
水に重曹を入れて沸騰させる
頑固な焦げ付きは酸性の性質を持つことが多いため、アルカリ性の重曹水を沸騰させる方法が効果的です。具体的な手順を以下に紹介します。
①フライパンに水500mlと重曹大さじ1杯を入れ、中火にかけて沸騰させます。
②そのまま15分ほど沸騰させ、木ベラを使って焦げをこそげ落とします。
③水が冷めるまで放置し、その後は中性洗剤と柔らかいスポンジで洗い流します。
一度の作業で完全に焦げが落ちない場合は、この手順を繰り返し実行することで除去できます。
水にクエン酸かお酢を入れて沸騰させる
アルカリ性の焦げや、重曹が使用できない素材のフライパンには、クエン酸水を沸騰させる方法を試してみましょう。手順は重曹を使った場合と同様です。
①フライパンに水500mlとクエン酸大さじ1杯を入れ、中火にかけて沸騰させます。
②15分ほど沸騰させたら、木ベラを使って焦げをこそげ落とします。
③水が冷めるまで放置し、その後、中性洗剤と柔らかいスポンジで洗いましょう。
もしクエン酸が手元にない場合は、お酢やレモン汁でも代替可能です。焦げの性質に合わせて適切な方法を選びましょう。
フライパンの外側にできた焦げの落とし方3選

フライパンの外側の焦げ落としの方法についても見ていきましょう。
焦げ取りシートを活用する
焦げ取りシートは、フライパンの外面に付いた焦げに対して有効なアイテムです。このシートには研磨材が使われているため、洗剤を使わず水だけで焦げを落とせます。フライパン以外にも、グリルやコンロに付着した頑固な汚れや焦げ付きの除去にも使用できます。手軽で強力な清掃手段として活用を検討しましょう。
重曹ペーストを使用する
重曹には研磨作用があるため、ペースト状にすることで焦げ落としに活用できます。水と重曹を1対2の割合で混ぜたものを作り、焦げが気になる箇所に塗り付けてこすり落とします。
ただし、重曹は銅、鉄、アルミニウムといった一部の素材に対し、変色や劣化を引き起こしてしまう可能性があるため、使用する際は素材に十分注意してください。
クレンザーを使用する
クレンザーを使用する方法もおすすめです。スポンジを使用すると、クレンザーが吸い込まれてしまうため、丸めたラップを使ってこすると効果的に落とせます。
なお、クレンザーを使用する際には、お手持ちのフライパンの素材を確認し、傷ついたり傷めてしまったりしないかどうか、確認してください。
フライパンの焦げつきを予防する方法

最後に、フライパンが焦げつきにくくなるような使い方のコツを紹介します。日々の心がけでフライパンを長持ちさせることができます。
フライパン自体を油でコーティングをする
鉄製のフライパンは、油をしっかりとなじませておくことで、焦げ付きを予防する効果が高まります。表面に油の膜を形成することが、錆びや焦げ付きを未然に防ぐことにつながるのです。
また、食材を炒める際には、適量の油をひき、食材がフライパンにくっつかないよう配慮することも、調理の重要なポイントとなります。
急に冷やさない
熱したフライパンに水を入れて急激に冷やす行為は、フッ素樹脂加工などのコーティングが剥がれる原因となります。コーティングが剥がれてしまうと、当然ながら食材が焦げつきやすくなるため、調理後の熱い状態からある程度冷めるまでは、しばらく置いておく時間を確保しましょう。
クッキングシートを活用する
クッキングシートを使用すれば、仮に食材が焦げてしまった場合でも、フライパンにくっつくのを防ぐことができます。
市販のシートをフライパンの形に合わせて敷く方法や、フライパン専用のシートを活用するなど、手軽に取り入れられる方法を試してみましょう。フライパン自体が汚れにくくなるため、洗い物が楽になるという利点もあります。
木製やシリコン製のキッチンツールを使う
多くのフライパンは、表面にフッ素樹脂加工やダイヤモンドコート、チタンコートなどの表面加工が施されています。
金属製のキッチンツールを使用していると、フライパンの表面を傷つけてしまい、結果としてこれらの加工が剥がれる原因となってしまいます。
加工を保護するため、木製やシリコン製など、傷つけにくい素材のツールを使うよう、日頃から心がけることが大切です。
料理を入れっぱなし・放置しない
調理が終わった後、料理を長時間フライパンに入れたままにしておくと、素材によっては表面が変色したり、錆が発生しやすくなったりする原因となります。これは結果的に焦げ付きの原因となることがあります。使用後は、すぐに料理をお皿や保存容器に移し、フライパンを速やかに洗うことを徹底しましょう。
フライパンの焦げを落とす上でよくある質問

ここでは、フライパンの焦げを落とす上でよくある質問にお応えします。また、おすすめのグッズを5つ厳選してご紹介するため、気になるグッズをぜひご活用ください。
<フライパンの焦げを落とす上でよくある質問>
・Q. 値段が高いフライパンであれば焦げ付きにくいですか?
・Q. 焦げかフライパン本来の素材感かわからないのですが…
・Q. フライパンの焦げ落としにおすすめのグッズを教えて下さい
・Q. IHコンロであればフライパンの焦げを防止できますか?
Q. 値段が高いフライパンであれば焦げ付きにくいですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。素材や加工の状態を詳しく確認することが重要です。
例えば、ダイヤモンド粒子やチタンなどの硬質な素材を含めたフッ素樹脂加工を行っているフライパンは高価になりがちですが、焦げ付きにくい状態が長続きします。一方、鉄やステンレスといった素材のフライパンも高価な場合が多いものの、表面にコーティングが施されていないため、適切にメンテナンスしなければ簡単に焦げついてしまいます。
Q. 焦げかフライパン本来の素材感かわからないのですが…
A.色が均一ではなく、表面を触ったときにザラザラしている場合は、焦げつきの可能性が高いです。また、表面が盛り上がっているように見える場合も、焦げつきと考えるのが自然でしょう。特にフライパンの外側に付着した黒い汚れは、焦げつきの場合が多いです。
Q. フライパンの焦げ落としにおすすめのグッズを教えて下さい
A.フライパンの焦げを落とすグッズとして、次の5つをおすすめします。
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価格:980円(2025年10月現在)
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価格:906円(2025年10月現在)
フライパンが乾いている状態で、汚れを覆うように直接スプレーすると、頑固な油汚れが原因で発生した焦げつきを落とせます。非研磨剤のため、フライパンを傷つけるリスクも低いです。
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フライパンや鍋の焦げつき除去や、コンロやレンジの油汚れ落としに役立つ重曹です。成分の99%が炭酸水素ナトリウムで自然にやさしく、シンクにもそのまま流せます。
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持ち手がついたキッチン用のブラシです。細かい部分にブラシが届くため、一般的なスポンジでは洗い流せない汚れにもアプローチします。やさしい素材で作られているため、フッ素加工フライパンも傷つけません。
Q. IHコンロであればフライパンの焦げを防止できますか?
IHコンロには、焦げを防止する効果や機能がありません。むしろIH特有の焦げつき方もあるため、調理する際は注意が必要です。
IHは熱源が底面中央のコイル部分に集中するため、ガス火よりも熱が一点に集まりがちです。そのため、点火直後に強火で使用すると、中央部分が急激に高温になり、焦げつきやすい傾向があります。IHを使う際は、弱火から中火へと徐々に温めることが、焦げつきの予防法として有効です。
フライパンの焦げは簡単に落とすことができる
本記事では、フライパンが焦げる原因から焦げ落としの具体的な方法、素材別のお手入れ時の注意点、そして焦げを予防する様々な工夫をご紹介しました。
もし焦げ付いてしまった際は、力任せにこするのではなく、汚れを浮かせてから優しく落とすことを心がけましょう。また、フライパンの素材によって使用できる掃除方法が異なる点も、必ず知っておきたい大切なポイントです。
ぜひ、これらの焦げ落としや焦げ付き予防のコツを身につけて、愛用のフライパンをより長く快適に使い続けましょう。





