ふと、自分の家の匂いが気になる、他の人からどう感じられているか不安、ということはありませんか?人の家にお邪魔した際に独特の匂いがすると、「自分の家も気付いていないだけで独特の匂いがしてるかも」と思ってしまう人は少なくありません。
そこで今回は、なぜ人は匂いを感じるのか?といった匂いのメカニズムについて説明し、その上で家の匂いを改善するポイントや、不快な匂いが発生しにくい物件をご紹介します。
なぜ自分の家の匂いは気付きにくい?
匂いは目には見えず比較するのも難しいため、不快な匂いに対して誰しも敏感になるものです。まずは、匂いを感じるメカニズムからみていきましょう。
目には見えない匂いを感じるメカニズム
突然ですが、皆さんは次の3つのうち、何番のオレンジを選びますか?
1・甘くフレッシュな匂いがするオレンジ
2・無臭のオレンジ
3・カビや腐敗臭が漂うオレンジ
ほとんどの方が「1・甘くフレッシュな匂いがするオレンジ」を選ぶでしょう。
私たちは、無意識のうちに自分の好みや安全な匂いを選んでいます。つまり、人は匂いから物の良し悪しや情報を獲得しており、匂いによって安全かどうかを確かめているのです。
そもそも匂いとは、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄などのニオイ分子が集まった有機化合物です。このニオイ分子が鼻から入り、鼻の奥にある嗅細胞がキャッチして、脳へ伝わります。そして、今までの経験や記憶などを頼りに「何の匂いなのか?」「健康に害がないか」などを判断しています。
匂いの感じ方には個性がある
匂いの好き嫌いは、生活習慣・経験・遺伝子・体調などが関係しており、人によってさまざまです。また、匂いを嗅ぎ分ける力や感じ方には個人差があります。
さらに、男女で匂いの感じ方は異なり、女性ホルモンの影響から男性より女性の方が匂いに敏感な傾向にあります。女性は、料理や子育てという場面で嗅覚を活用しているのです。
家の匂いがわからなくなる理由
冒頭でも触れた通り、友人や親戚の家に入った直後、その家の独特の匂いを感じるものですよね。しかし、しばらく時間が過ぎるとその匂いを感じなくなります。これはなぜでしょうか?
理由は、同じ匂いを嗅ぎ続けていると嗅覚が疲れて、数秒から数分でその匂いに慣れてしまうからです。このような現象を専門用語で「順応」と呼びます。
また、匂いへの慣れは自己防衛でもあります。「不快な匂い」や「嫌な匂い」をずっと感じているのはストレスになるため、そのストレスから身を守ろうと嫌な匂いに慣れてしまうのです。
結局、自分の家で不快な匂いが漂っていても、その匂いに慣れてしまい自分自身では気付けないのです。
人と家に潜む!代表的な悪臭の発生原因
私たちのまわりには、絶えずさまざまな匂いが存在しています。家の中にある悪臭の発生源を確認していきましょう。
人から出る体臭
人の体から発生する匂いをまとめて「体臭」と呼びます。体臭は、年齢・性別・生活習慣・食生活・ストレスによって変化します。
体臭の主な原因は、汗や皮脂などの分泌物です。汗や皮脂が発生した直後はほとんど匂いがしませんが、放置すると皮膚表面にいる常在菌が分泌物を分解して、さらに酸化し嫌な匂いをつくりだすのです。
その他にも、年齢とともに発生する「加齢臭」、虫歯や歯周病、タバコが原因で起こる「口臭」などがあります。特に、タバコは有害物質が血液によって全身へ運ばれ、それが汗となって不快な匂いとともに排出され、体臭が強くなるため注意しましょう。
玄関の下駄箱臭
玄関で漂う匂いの発生源は、下駄箱の中にある靴やブーツ、そして玄関マットです。
靴の内部では、足の汗やアカが細菌のエサとなり、細菌が増殖して嫌な匂いを発生させます。また、玄関マットにも足の汗や汚れが付き匂いの原因になります。
キッチンの調理臭
焼き魚をつくると、しばらく魚の匂いが残っている…という経験はありませんか?これは、調理中に発生したニオイ分子が家の中を飛びまわり壁に吸着して、その壁からも匂いを出してしまうからです。
キッチンでは、調理時に使用するコンロやIHクッキングヒーターからの熱と水蒸気によって、匂いが上昇し広がり、調理臭が発生します。
また、にんにく、ネギやニラなどの匂いの強い食材、香辛料の独特の匂い、魚介の生臭さなどさまざまな匂いが集まります。特に、野菜くずなどの生ゴミには、栄養・水分・温度といった細菌が繁殖する条件がそろい、悪臭の原因になります。
浴室と洗面所のカビ臭
浴室や洗面所は、細菌やカビにとってはエサ場のような場所です。排水口や排水管に残ってしまう皮脂・髪の毛・石けんカスなどが細菌やカビのエサになり繁殖し、ドブのような不快な匂いやカビ臭さが発生します。
また、お風呂や洗濯の排水を流す排水管には、下水管からの逆流を防ぐ「封水」 という水をためるような空間があります。しかし、長期間水を流さなかったり、ゴミや汚れをためたりすると悪臭の原因になります。
トイレ臭
誰もが気になるのがトイレ臭ではないでしょうか。匂いの原因は、水しぶきや尿の飛び散りです。そのまま放置すると尿石となり、そこに細菌が増殖してアンモニアが発生して匂いの原因になります。
匂いのプロが教える!家の匂いを抑える方法
ここからは、匂いに関する資格を複数持つ私が考える、家の匂いを効率的に抑える方法を紹介していきます。場所やシチュエーション別の匂いにそれぞれ解説していくので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
部屋の場所別匂い対策、消臭方法
部屋のあらゆる匂いに効果的な対策が、「換気」です。室内は、「夏の暑さから高温多湿に」「冬は寒さから換気回数が減り」、匂いがこもりやすくなります。室内の空気が循環するように、隙間を開けたり換気扇を作動させたりすると悪臭を排出できるでしょう。
では、各部屋の匂い対策をみていきましょう。
玄関
玄関は、床全体や下駄箱を乾拭きしましょう。不要になった靴下に重曹を詰めてヒモで止めるとシューキーパーになり、消臭にも役立ちます。また、匂いの原因となる細菌は高温多湿を好むため、脱いだ靴を乾燥させ、足や靴下、玄関マットは清潔に保ちましょう。
ポイント
・靴や靴下を清潔にする
・同じ靴をはき続けない
・靴内部の湿気を取る
・除湿剤や消臭剤を置く
キッチン
調理時は必ずキッチン専用の換気扇を作動させましょう。換気をすれば、ニオイ分子が飛びまわることはなくなり排出口から外へと排気されます。そして、調理後もしばらく換気扇を作動させておくと良いでしょう。
調味料や油が酸化しないように液だれはすぐに拭き取り、コンロ周辺の油汚れは重曹を振りかけアクリルたわしで落としましょう。シンクや三角コーナーの野菜くずは、水分を取り、新聞紙やチラシに包んでゴミ箱に入れてください。
ポイント
・調理中は換気扇を作動させる
・調味料のフタはしっかり閉め、液だれを防ぐ
・生ゴミは水切り後、捨てる
・適度にアルコールスプレーを使い、細菌の働きを弱める
リビング
人の汗や皮脂、ペットの毛などが、じゅうたんやソファ、カーテンなどに付くと細菌の働きで酸化して匂いが発生します。細菌の栄養となる汚れを拭き、匂いを吸着するホコリを取るため、リビングの掃除をしてください。
最近の住宅は、キッチンとつながっているリビングが多く、キッチンからの調理臭が流れてきます。調理時は、キッチン専用の換気扇を作動させてください。ただし、リビングだけが匂うというような場合、その部屋の窓だけ開け換気するようにしましょう。これは、他の部屋へ匂いが広がらないようにするための対策です。
また、ゴミ箱の形にもこだわりましょう。深い形のゴミ箱は、ゴミがいっぱいになり匂いやすくなります。できるだけ浅い形のゴミ箱に変更してこまめに処分するように心がけましょう。
ポイント
・適切に換気をする
・カーテンやじゅうたんを洗濯する
・掃除機や拭き掃除でホコリを取る
・ゴミ箱にゴミをためすぎない
トイレ
水しぶきや尿の飛び散りをトイレ掃除用シートなどで拭き取りましょう。便器の外側、便座、床、壁など隅々まで拭き、便器内は重曹を振りかけトイレブラシで上下させて洗いましょう。
トイレでは、排泄物の匂いを気にして強めの芳香剤を置く方もいるかもしれません。このように元の匂いを別の匂いで隠す方法を「マスキング」と呼びますが、あまりに強い匂いのする芳香剤は、かえって不快に感じてしまいます。
日本人は、もともとほのかに匂いがする程度が好きです。「花を生ける」「観葉植物を置く」など自然な匂いを取り入れるのも良いでしょう。
ポイント
・便器だけではなく床や壁まで拭く
・匂い対策に植物を置くのもおすすめ
浴室や洗面所などの水回り
浴室を使用した後は、冷水シャワーを全体にかけて湿度を下げ、カビの発生を防ぎます。イスやシャンプー容器の裏側などのぬめり、排水管の汚れなどは徹底的に落としてください。さらに、浴室専用の換気扇は衣服の繊維や砂ホコリが集まりやすいため清潔にしてから使用しましょう。
ポイント
・浴室は最後に冷水シャワーをかける
・イスやシャンプーの容器の裏側のぬめりを取る
・排水管の汚れを除去する
・換気を行う
原因別匂い対策、消臭方法
匂いは吸着する性質があるため、日常生活の中では衣類や髪の毛に嫌な匂いがくっついてしまうシチュエーションがあります。さっそく、シチュエーション別の匂い対策をみていきましょう。
タバコ
「外出先で付いたタバコの匂いをなんとかしたい」と思った経験はないでしょうか?タバコの煙は、ニオイ分子となり周辺を自由に漂います。そして、壁、天井、家具、カーテン、髪の毛、衣類などにタバコのニオイ分子がくっついてしまうのです。
もしタバコの匂いがついた衣類をそのまま収納すれば、クローゼット内までタバコの匂いが広がってしまうでしょう。
タバコの匂いを除去するには洗い流すことが大切。洗えない衣類は、スチームアイロンをかけてください。蒸気の力で繊維に入り込んだタバコの匂いを取り除いてくれます。
ペット
犬や猫を飼っている家庭も多いでしょう。ペットの体臭は、こまめにペットの体を拭いたり洗ったりすると匂い予防になります。また、ペットフードの食べ残しや汚れたペットシートは早めに処分しましょう。
部屋干し(洗濯機)
部屋干しするときは、消臭機能のある洗剤で洗濯し、サーキュレーターや扇風機で換気をするように心がけましょう。
最近では、街中に抗菌などができる高機能なコインランドリーが増えています。天気が悪い日や花粉が気になる時期は、コインランドリーを使用するのも良いでしょう。
また、衣類用の消臭スプレーにはニオイ分子のプラスとマイナスの作用を利用して悪臭を中和する働きがあります。消臭スプレーのパッケージにある使用方法や用途をよく読み、正しく使用しましょう。
香水や柔軟剤
日常的に香水や柔軟剤を使用する方は、使用量を守りましょう。人は、同じ匂いを嗅ぎ続けていると、その匂いに慣れてしまうため知らず知らずのうちに使用量が増えていきます。しかし、使用しない人にとっては、香水や柔軟剤の強い匂いから体調不良を起こす可能性もあります。
前述の通り、匂いの感じ方には個人差がある、ということを忘れないようにしましょう。
人体から発される匂いの対策
体臭は、その人の体質や食生活などによって異なります。それぞれのケア方法をご紹介しましょう。
汗と皮脂
汗や皮脂は放置して酸化すると匂いが発生するため、汗をかく前にデオドラント剤を使って匂いをコントロールしましょう。デオドラント剤には、汗を抑えたり吸着させたりして汗臭さを予防する働きがあります。
<ニオイケアに役立つデオドラント剤のタイプ>
・クリームタイプ(殺菌作用が強く匂いの原因となる細菌の繁殖を抑える、汗かきの人におすすめ)
・パウダータイプ(汗を吸着させ汗を抑える、サラサラとさっぱりした質感が好きな方に)
・スプレータイプ(汗を抑えて匂いを防ぐ、汗臭さ対策に)
もし汗をかいたら、汗ふきシートや水を含ませて固く絞ったタオルで拭き取るようにしましょう。そして、その日のうちにボディソープや石けんで優しく体を洗い、体の清潔さを保ってください。
また、動物性の脂肪が多い肉を食べ過ぎると皮脂が多く分泌され体臭が強くなります。脂っぽい食事が好きな方は注意し、バランスの良い食生活を心がけましょう。
加齢臭
朝起きると、枕から脂っぽい匂いがしてショックを受けた…という経験をした方はいませんか?それがまさに「加齢臭」です。加齢臭の元となる「ノネナール」は、皮脂の酸化が進む過程で発生するニオイ分子です。
体臭を予防するためには、酸化を抑制する「抗酸化作用」のある食品を積極的に食べることが重要です。抗酸化作用のある食品は、色の濃い野菜や果物、ハーブティーや緑茶などです。日頃からカラフルな食卓を心がけて体の内側からニオイケアをしましょう。
<ニオイケアに役立つカラフル食品>
・赤…トマト、ラズベリー、赤パプリカ、赤ピーマン、赤ワイン
・黄…レモン、とうもろこし、パイナップル
・白…キャベツ、大根、カリフラワー
・オレンジ…ニンジン、カボチャ、みかん、サツマイモ
・緑…ほうれん草、ブロッコリー、オクラ、ピーマン、モロヘイヤ
・青…ブルーベリー、ぶどう、なす、紫キャベツ
<ニオイケアに役立つハーブティーやお茶>
・ローズヒップティー
・ハイビスカスティー
・紅茶
・緑茶
・黒豆茶
口臭
口臭対策には、正しい歯磨きでお口の中の汚れを落とすことが基本です。さらに、舌専用のブラシで舌の汚れも落としましょう。
それでも口臭が気になる方は、虫歯や歯周病が潜んでいる可能性があるため歯科医院に受診してみてください。口臭検査を実践している歯科医院も数多くあります。
子育てや介護中の匂い
赤ちゃんがいる家庭や在宅介護している部屋では、体臭や排泄物の匂いが漂いやすくなります。心理面の負担を減らすためにもニオイケアをしましょう。
寝具はこまめに洗濯し、使用済みのオムツは匂い漏れが起きないフタがあるゴミ箱に捨てるようにしてください。
また、窓を開けて換気するのが難しい場合は 、部屋のドア付近にドアを開けた状態でサーキュレーターや扇風機を作動させて風が流れるようにしましょう。
家の匂いを抑えるのに役立つアイテム
家の匂いが気になったとき、どのようなアイテムを使えばいいのでしょうか。ここからは、匂い改善のためのおすすめアイテムをご紹介します。
クレンザー(重曹)
クレンザーとして、市販の「重曹」を使ってみましょう。重曹とは、弱アルカリ性の白い粉末で、炭酸水素ナトリウムとも呼ばれています。
フライパンや鍋の油汚れなど酸性の汚れを落とすための洗剤としても利用できるほか、重曹を容器に入れておくだけで消臭剤としても使用できます。
<使い方>
1.重曹を用意する
2.シンクや排水溝のぬめり、お鍋の油汚れなど、気になる部分に重曹を振りかける
3.スポンジでこする
4.水で流す
アロマリフレッシュナー
アロマリフレッシュナーとは、花や葉などの植物から抽出した精油 (エッセンシャルオイル) にエタノールなどを配合したスプレーで、空間に漂っている悪臭を軽減します。
特に、レモンやオレンジなど柑橘系の精油を使ったアロマリフレッシュナーがおすすめです。レモンやオレンジは、小さな頃から嗅いでいる親しみやすさがあり安心感を与えます。
来客時、アロマリフレッシュナーをひと拭きしておくと喜ばれるおもてなしとなるでしょう。
スティック型お香(線香)とお香立て
食後の匂い消しや空間演出として役立つのが、スティック型お香です。スティック型お香とは、天然香料(木、葉、樹脂、果実など)を粉末にして棒状に固めたものです。ライターで火を付け、煙を漂わせて使います。和室にお香を置けば、より日本らしい雰囲気が味わえるでしょう。
<使い方>
1.お香、お香立て、ライターまたはマッチを用意する
2.ライターやマッチでお香に火を付ける
3.軽く手をあおって火を消す
4.お香立てに、お香を刺す
家の匂いが抑えやすい部屋の条件
家の場所やシチュエーション別の匂い対策方法を把握したところで、次は日常的に家の匂いを抑えやすい部屋の条件を紹介していきましょう。
新生活や次の部屋では家の匂いにも意識を向けていきたい、という方は、ここで紹介する条件を満たした部屋を契約することをおすすめします。
風通しの良い2面採光や3面採光の間取り
2面採光とは部屋に2つ以上の窓がある間取りで、3面採光とは部屋に3つ以上の窓がある間取りのことです。
複数の窓があると、風の入口と出口ができて、より効果的な換気ができます。匂いが気になるときは、窓を同時に2つ開けて換気しましょう。なお、窓は家具でふさがないようにしてください。
24時間換気システムのある物件
新しい物件は気密性が高い反面、匂いがこもりやすくなります。新鮮な空気が入る24時間換気システムがある物件もおすすめです。在宅ワークや子育て中など家にいる時間が長い方も安心して過ごせるでしょう。
カビを防ぐ日当たりが期待できる南向きの物件
晴れの日と雨の日では、屋内も屋外も違う匂いがします。雨の日や梅雨の時期は、ジメジメと湿度が高く、細菌の働きが活発になり、カビ臭や腐敗臭が発生しやすくなります。
湿度が低く悪臭が発生しにくい、日当たりの期待できる南向き物件を選びましょう。
匂いのメカニズムを理解し、家の匂いを改善しよう!
人は匂いに慣れてしまうため家の中の匂いに気付きにくいものです。しかし、悪臭の原因は細菌やカビが発生源になることが多く、お手入れ次第で嫌な匂いを予防できます。
また、湿気のこもった部屋では悪臭も汚れも広がりやすくなります。換気をして新鮮な空気を取り込むようにしましょう。家の中は、きれいにしてはじめて良い匂いや好きな匂いを楽しめる空間になります。