賃貸物件の壁紙に「ひび割れ」を見つけたことがある方もいるでしょう。壁紙のひび割れは見た目だけでなく、住環境にも影響を与えることがあります。
さらに、壁紙にひび割れができる原因や対応方法、修繕費用の負担者が誰なのかなども気になるところです。どうすればひび割れを予防できるのかを知っておきたい、という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、壁紙のひび割れの原因から具体的な対応手順、予防方法まで詳しく解説します。賃貸物件に住んでいる方はぜひ参考にしてください。
壁紙にひび割れができてしまう理由
壁紙にひび割れが発生する理由はいくつかあります。原因を理解することで、ひび割れを防ぐ対策を講じることが可能です。ここでは、具体的な理由と影響について解説します。
理由①木材の伸縮
木材は、湿度や温度の変化により収縮と膨張を繰り返すため、壁紙に負荷がかかります。木材は水分を吸収すると膨張し、乾燥すると収縮する性質です。
例えば、冬季の乾燥時には木材が縮み、夏季の湿潤時には膨張することで、壁紙が引っ張られたり緩んだりしてひび割れが生じます。そのため木材の特性を理解し、適切な湿度管理を行うことが重要です。
理由②クロスの伸縮
壁や天井のクロスは、温度や湿度の変化に敏感で、収縮や膨張を繰り返すことがあります。新築やリフォーム後の建物では、壁紙がまだ馴染んでいないため、季節の変わり目にひび割れが生じやすくなります。
例えば、冬の寒い季節から春の暖かい季節に移行する際、クロスが収縮と膨張を繰り返し、ひび割れが発生します。そのため、壁紙の素材選びや施工後の適切な管理が必要です。
理由③揺れや振動
車の交通量が多い道路や線路の近くでは、建物が揺れることで壁紙のひび割れに影響をもたらします。揺れや振動が壁の構造にストレスを与え、壁紙にひびが入る可能性が高まります。
例えば、電車や車の振動が頻繁に伝わる場所では、壁紙の接合部分が剥がれやすくなります。そのため、揺れや振動を最小限に抑えるための対策として、防振マットの設置や家具の配置を見直すことがおすすめです。
理由④経年劣化
長年使用されることで壁紙の素材が劣化し、ひびが入ることがあります。壁紙が年月と共に紫外線や湿気の影響を受け、素材が弱くなるからです。
例えば、日当たりの良い場所に設置された壁紙は、色褪せやひび割れが早く進行することがあります。防止するためには、定期的なメンテナンスや、劣化が見られた際の早期対応が重要です。
理由⑤自然災害による影響
地震や地盤沈下などの災害が、壁紙にダメージを与えることがあります。建物全体が揺れたり変形したりすることで、壁紙に強い力が加わるからです。
例えば、地震による揺れで建物が動いた際に、壁紙が破れることがあります。自然災害に対する備えとして、耐震補強や地盤の安定性を確認することが必要です。
壁紙のひび割れは主に3種類
壁紙のひび割れは主に3つの種類に分類されます。また、ひび割れの対処法も異なりますので、適切に対応することが重要です。ここでは、具体的なひび割れの種類と特徴について詳しく解説します。
接合部のひび割れ
接合部は壁紙の最も弱い部分であり、ひび割れが発生しやすい箇所です。壁紙を貼る際に、接合部に最も負荷がかかりやすいのが主な原因です。具体的には、壁紙の継ぎ目が乾燥する際に収縮し、結果としてひび割れが生じます。
例えば、新築やリフォーム直後の壁紙の継ぎ目に沿ってひび割れが見られることがあります。接合部のひび割れを防ぐためには、施工時の丁寧な作業と適切な接着剤の使用が重要です。また、施工後に壁紙の湿度を適切に保つこともおすすめします。
乾燥や湿気によるひび割れ
室内の湿度管理が不十分だと、壁紙が膨張したり収縮したりしてひび割れが生じます。湿度が高いことで壁紙が膨張し、乾燥すると収縮するためです。
特に、冬の乾燥した季節に壁紙が縮み、ひび割れが発生することが多いです。また湿度が高い梅雨の時期に、壁紙が膨張して接合部が緩むことでひび割れが発生することもあります。
乾燥や湿気によるひび割れを防ぐためには、24時間換気システムの導入や湿度管理が効果的です。適切な湿度を保つことで、壁紙のひび割れを予防できます。
経年劣化によるひび割れ
壁紙は時間の経過とともに劣化し、ひび割れが生じやすくなります。紫外線や温度変化、湿度などの環境要因によって壁紙の素材が徐々に弱くなるためです。
例えば、日当たりの良い場所に貼られた壁紙は、紫外線の影響で色褪せやひび割れが早く進行します。また、エアコンの風が直接当たる場所では、温度変化による素材の劣化が進むでしょう。
経年劣化によるひび割れを防ぐためには、定期的なメンテナンスと壁紙の交換が必要です。紫外線対策としてカーテンを使用したり、エアコンの風向きを調整することも有効な対策になります。
賃貸物件の壁紙にひび割れを見つけた場合の対応手順
壁紙にひび割れを見つけた場合、症状に応じて適切な対処を行うことが重要です。ひび割れの程度によって対応方法が異なるため、まずはひび割れの種類と度合いを確認し、適切な対処を行いましょう。ここでは、具体的な対応手順を解説します。
STEP1. ひび割れの度合いを確認する
ひび割れを発見したら「軽度なひび割れ」と「重度なひび割れ」を見分けることが重要です。
軽度なひび割れ
軽度なひび割れとは、表面上の細かなひびや接合部のわずかなズレであり、幅が1mm以下で浅いものです。放置しても大きな問題にはなりません。
軽度なひび割れの事例は、以下のとおりです。
事例1 | 冬季の乾燥した季節に発生する「髪の毛」のように細いひび割れ。表面的なひび割れのため、特に心配する必要はない。 |
---|---|
事例2 | 湿度変化による小さな亀裂。例えば、湿度の高い梅雨時期に一時的に現れる小さな亀裂は、通常、乾燥することで自然に消えるケースがある。 |
軽度なひび割れの場合は、見た目が気になる程度であれば、補修せずに様子を見るのも一つの方法です。
重度なひび割れ
「重度なひび割れ」は、深さがあり、幅が1mm以上のものや、構造的な問題を示す大きなひび割れです。
重度なひび割れの事例は、以下のとおりです。
事例1 | 地震や地盤沈下による深いひび割れ。例えば、玄関やリビングなどの壁にできた幅2ミリ、深さ5ミリ程度のひび割れは、建物全体に影響を与える恐れがある。 |
---|---|
事例2 | 長期間放置された大きなひび割れ。例えば、古い建物の壁に生じた幅3ミリ、長さ10センチ以上のひび割れは、放置するとさらに広がるリスクがある。 |
重度なひび割れには、早急に対応する必要があります。ひび割れによって、建物の安全性を損なう恐れがあるためです。
発見した場合は、速やかに大家さんや管理会社に報告し、専門業者に修繕を依頼するようにしましょう。
STEP2. 大家さんや管理会社に状況を報告する
ひび割れの度合いを確認したら、大家さんや管理会社に状況を報告します。報告する際には、ひび割れの写真を撮影して添付することがおすすめです。ひび割れの全体像と、近接した詳細写真を複数撮影し、メールや専用アプリを通じて送信しましょう。
また、リビングの壁に生じたひび割れの場合、部屋全体の写真とひび割れ部分のアップ写真を撮影し、ひび割れの位置や長さ、幅を具体的に説明します。
また、写真と共に、ひび割れの発生時期や状況(例:地震の後、急激な温度変化の後など)も伝えると、状況がより正確に伝わります。
写真を添付することで、大家さんや管理会社が状況を正確に把握でき、迅速な対応が期待できます。
STEP3. 修繕費用の負担について確認を行う
賃貸物件のひび割れ修繕費用は、通常、大家さんまたは管理会社が負担します。理由は、建物のメンテナンスや修繕は、基本的に所有者である貸主の責任であるためです。
しかし、借主の過失によるひび割れの場合は、修繕費用を一部または全額負担する必要がある場合もあります。例えば、家具の移動中に壁にぶつかってひび割れが生じた場合などです。
そのため、修繕費用の負担については、大家さんや管理会社と事前にしっかりと確認することが重要です。賃貸契約書に修繕費用の負担についての記載がある場合は、そちらも確認しておくと良いでしょう。
修繕費用の負担を明確にすることで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな修繕が可能となります。
賃貸物件の壁紙ひび割れ度合いの見分け方と補修の必要性
壁紙にひび割れが発生した場合、その度合いを正しく判断し、適切な対応を行うことが重要です。ここでは、ひび割れの判断基準と補修の必要性について詳しく解説します。
ひび割れの判断基準は「幅と深さ」「進行具合」「場所」
ひび割れの度合いを判断する際には、「幅と深さ」「進行具合」「場所」の3つの基準を用います。
まず「幅と深さ」はひび割れの重要な判断内容です。幅が1mm以下で浅いひび割れは軽度と見なされますが、幅が1mm以上で深い場合は重度と判断します。深さがあるひび割れは、壁紙だけでなく建物の構造にまで影響を与える可能性があります。
「進行具合」は、ひび割れがどれだけ広がっているかを示します。ひび割れが進行している場合、放置するとさらに悪化する可能性が高いため、早急な対応が必要です。また、小さなひび割れが時間とともに広がり、長さや深さが増すことがあります。
「場所」は、ひび割れの発生箇所によって重要性が異なります。例えば、壁紙の表面にのみ発生したひび割れは比較的軽度ですが、基礎や土台部分に発生したひび割れは構造的な問題を示すため、即時の補修が求められます。また、外壁や屋根に生じたひび割れは、雨水の侵入などを引き起こし、建物全体の劣化を早めることがあります。
放置でも大丈夫なひび割れ
表面的で幅が1mm以下、深さが浅いものは、放置しても大丈夫なひび割れです。例えば、壁紙の表面にできた「小さなひび割れ」や「ペイントのひび割れ」が該当します。
これらは主に、湿度や温度変化によるもので、建物の構造に大きな影響を与えることはありません。
なお、冬季の乾燥によって発生する表面的なひび割れや、湿気による軽微なクロスの伸縮による亀裂があります。これらのひび割れは、建物の安全性には直接関係しないため、見た目が気になる場合に限り、化粧直しとしての修繕を行えば十分です。
また、接合部に生じるわずかなズレも軽度なひび割れとして見なされます。これらは、特に建物の構造に影響を与えることは少ないでしょう。
ひび割れの見た目は気になるかもしれませんが、構造的な問題を引き起こすことはないため、緊急に修繕する必要はありません。
即補修が必要なひび割れ
即補修が必要なひび割れは、幅が1mm以上で深さがあり、構造に影響を及ぼす可能性があるものです。例えば、基礎や土台部分に発生したひび割れ、屋根や外壁に生じた大きなひび割れが該当します。
これらのひび割れは、建物の強度に影響を与え、放置すると大規模な修繕が必要になることがあります。また、外壁や屋根のひび割れは、雨水の浸入を許し、内部の木材や断熱材にダメージを与えます。
即補修が必要なひび割れは、見逃さずに早期対応することで、大きな問題を未然に防ぐことが可能です。専門業者に依頼して、適切な修繕を行いましょう。
【注意】賃貸物件の壁紙ひび割れは自分で修繕しないようにする
自分で行う修繕は「賃貸契約違反」となり、追加費用が発生する可能性が高くなります。賃貸契約では、建物のメンテナンスや修繕は大家さんや管理会社の責任となっているためです。
例えば、壁紙のひび割れを素人が修繕した結果、見た目が悪くなったり、さらに大きなひび割れが発生することがあります。賃貸物件の壁紙ひび割れは、必ず大家さんや管理会社に報告し、専門業者に依頼してもらうなど適切な対応が必要です。
賃貸物件の壁紙ひび割れは、誰が修繕費用を負担する?
建物の維持管理は貸主の責任であるため、通常の経年劣化や自然災害によるひび割れの場合、修繕費用は貸主側が負担します。
しかし、借主が故意に壁紙を剥がしたり、過失によってひび割れを発生させた場合は、借主の修繕費用負担です。
例えば、家具の移動中に壁にぶつかってひび割れが生じた場合や、ペットが壁紙を傷つけた場合が該当します。さらに、日常的な使用における小さな傷や汚れも、借主の責任であると判断されることがあります。
修繕費用の負担については、事前に賃貸契約書を確認し、大家さんや管理会社とよく話し合うことが重要です。これにより、修繕費用の負担に関するトラブルを未然に防止できます。
意外と知られていない、壁紙ひび割れの予防方法
壁紙のひび割れを防ぐためには、日常のちょっとした心がけが重要です。多くの人が見落としがちな予防方法を知ることで、壁紙の寿命を延ばし、ひび割れを防止できます。ここでは、具体的な予防方法を解説します。
室内の湿度を適切に保つ
室内の湿度を適切に保つことは、壁紙のひび割れ予防に効果的です。湿度が低いと壁紙が乾燥して収縮し、高すぎると膨張するためです。
例えば、湿度が40%以下になると乾燥によるひび割れが発生しやすくなります。一方で、湿度が70%以上になると壁紙が膨張して接合部が緩み、ひび割れが発生することがあります。
そのため、室内の湿度は常に50〜60%に保つことがおすすめです。湿度計を使用して、室内の湿度を調整するようにしましょう。
なお、24時間換気システムを導入することで湿度管理が容易になるため、物件探しの際には、条件をしぼって探してみましょう。
急激な温度変化を避ける
急激な温度変化を避けることは、壁紙のひび割れを防ぐポイントです。理由は、急激な温度変化が壁紙の素材に負担をかけ、収縮や膨張を引き起こすからです。
例えば、冬に暖房を強く効かせすぎると、温度差が大きくなり、壁紙が急激に収縮してひび割れが生じることがあります。エアコンやヒーターの設定温度を適切に保ち、温度変化を緩やかにすることが重要です。
エアコン付きの住まいを選ぶことで、より効果的な温度管理が可能です。
家具の配置に気をつける
家具の配置に注意を払うことで、壁紙のひび割れ予防に役立ちます。大型家具を壁に直接押し付けると、壁紙に圧力がかかり、ひび割れが発生しやすくなるからです。
例えば、本棚やソファなどの大型家具を壁に密着させて置くと、壁紙が擦れたり、圧力でひび割れが生じることがあります。家具と壁の間に少し隙間を作ることで、壁紙への圧力を軽減し、ひび割れを防ぐことが可能です。
家具付きの住まいを選ぶ際も、家具の配置に配慮したレイアウトを心がけましょう。
定期的なメンテナンスや掃除を行う
定期的なメンテナンスや掃除は、壁紙のひび割れ予防には不可欠です。壁紙にたまったほこりや汚れが、素材を劣化させる原因となるからです。
ほこりが積もると湿気を吸収しやすくなり、湿気が壁紙にダメージを与え、ひび割れの原因となります。週に一度は壁紙の表面を柔らかい布や掃除機で軽く掃除し、定期的に壁紙の状態をチェックすることがおすすめです。
特に、換気や湿度管理を行いながらの掃除が効果的です。
賃貸物件の壁紙ひび割れを見つけたら、まずは連絡をしよう
壁紙にひび割れを見つけたら、自己判断で修繕せず、まずは大家さんや管理会社に連絡しましょう。迅速に報告することで、適切な対応が期待でき、問題の拡大を防ぐことができます。
壁紙のひび割れは早めの対処が肝心です。住まいの環境を良好に保ち、安心して過ごすために、問題を見つけたらすぐに行動することをおすすめします。この記事を参考にして、快適な賃貸生活を送りましょう。