寿命が長くて飼育もしやすいイモリは、近年ペットとしての人気を高めています。
この記事では、イモリの種類ごとの特徴や飼育で用意するべきもの、理想的な飼育環境、そして飼育時のポイントまでわかりやすく解説します。
ペットとしてイモリをお迎えする予定の方だけでなく、今までイモリに興味がなかった方もぜひご覧ください。
イモリとはどんな生き物?

日本で一般的に「イモリ」と呼ばれているものは「アカハライモリ」です。アカハライモリは両生類で、有尾目イモリ科イモリ属に分類されます。まずはイモリの基本情報を詳しく見てみましょう。
基本情報
イモリは井戸の中にある害虫を食べてくれる存在として、日本では古くから親しまれてきました。これがイモリ=井守という名前の由来です。
日本国内で一般的なアカハライモリの場合、体長はオスで約7~12cm、メスで約8~14cmほどと扱いやすいサイズです。そのためアパートやマンションでも共生しやすく、近年ではイモリをペットとして迎える方も増えました。
ここでは、イモリの生息地や特徴、寿命などを詳しくお伝えします。
生息地
イモリの生息地は北半球の大陸全域です。日本をはじめとするアジア大陸やヨーロッパ、アメリカなどの世界中に分布しています。
多くのイモリは山間部のきれいな川や池がある場所に生息しています。しかし、意外なことにイモリは泳ぎが苦手なため、川の流れが早い場所には生息できません。そのため、河川の流れが淀んでいる場所や用水路、小さな沼などに生息することが特徴です。
森の中で暮らす陸生種もわずかに存在しますが、日本に住むイモリの大半が半水棲種であり、池・川・沼といった水辺に生息しています。
再生能力と毒性
イモリの特徴として最も大きいのは再生能力の高さです。天敵から足の一部を食いちぎられたとしても、骨や肉、皮を完全に再生できます。イモリの再生能力はトカゲをも上回るとされており、医学的に応用できないかと研究材料にされるほどです。
また、毒性の強さもイモリの特徴と言えます。耳の後ろにあるコブから毒素を分泌しており、敵に直接噴射する攻撃的な種類のイモリも存在します。フグと同じテトロドトキシン由来の毒素を持つため、人間も油断はできません。
ただし、国産種であるアカハライモリやシリケンイモリが持つ毒は、捕食者であるサギが中毒死しないほど微量です。これらの種類は攻撃性が低く、ペットとして迎えるイモリとしても適しています。
活動サイクルと寿命
アカハライモリの場合、冬眠から覚めた春先~夏にかけて産卵期を迎えます。受精したメスは産卵に適した葉を探し、直径5mmほどの卵を約100個生みます。孵化するまでの期間は、目安として10日~20日ほどです。
幼生は手足のない状態で生まれますが、ウーパールーパーのようなエラを持っています。その後、前脚・後脚の順番に足が生え、エラは消滅します。
足が生え揃った後は陸に上がりますが、陸上で3年ほどかけて成体になり、水中生活に戻るのが特徴です。なお、イモリの平均的な寿命は20年~25年と言われています。ペットとして暮らせる動物の中では寿命が長く、繁殖させると一生付き合えるペットにもなります。
イモリをお迎えする方法
ここでは、イモリをお迎えする際の入手方法を解説します。
ペットショップからお迎えする
初めてイモリを飼育する方にとって、最も手軽かつ安心な入手先はペットショップです。
ペットショップでは、飼育に最適な健康状態のイモリが扱われており、専門知識を持つ店員から、必要な設備や具体的な飼育方法についてのアドバイスを受けられます。特に初心者向けの品種を選べば、スムーズに飼育をスタートできるでしょう。
イモリに必要な餌や飼育用品が一箇所に揃っているため、準備が一度で完了する点も、ペットショップを利用するメリットです。
自然界のイモリを捕まえる
自然界からイモリを入手する方法は、冒険心をくすぐる選択肢です。自然環境を楽しみながら、自らイモリを見つけ出せるため、思い入れも深まりやすいでしょう。
イモリは主に池や小川、湿地などの水辺に生息しています。自然界で捕獲する場合は、まず環境への配慮が重要です。また、地域によっては野生動物の捕獲が法律や自治体の条例で規制されていることがあるため、必ず事前にルールや法律を確認しましょう。
なお、自然下で捕まえたイモリは、環境の変化に敏感で強いストレスを感じやすい点に注意が必要です。飼育を始める際は、特に慎重に環境を整えることが求められます。
【補足】イモリとヤモリの違い
イモリとヤモリは、名前や見た目が似ていることから混同されやすいですが、実際はまったく違う生き物です。それぞれの違いを表にまとめてみましょう。
| イモリ | ヤモリ | |
|---|---|---|
| 分類 | 両生類 | 爬虫類 |
| 色 | 背中が黒または茶褐色 | 灰色や褐色、白色 |
| 趾下薄板 | ない | ある |
| 爪 | ない | ある |
イモリとヤモリは、まず分類が異なります。家屋のガラス窓によく張りついているヤモリは爬虫類ですが、水辺で多く見られるイモリは両生類です。
体表にも明確な違いがあります。イモリの全身は鱗がなく、ヌルヌルとした粘液に覆われていますが、ヤモリの体には全身に鱗があります。
色彩では、イモリの背中は黒または茶褐色で、腹部は赤地に黒の斑点模様を持つのが特徴です。一方、一般的に見られるニホンヤモリは灰色や褐色、中には白い個体も存在します。
さらに、ヤモリの足先には「趾下薄板(しかはくばん)」という器官があり、これによってガラス窓などの垂直な面に張りつくことが可能ですが、イモリにはこの器官がないため、垂直面に張りつくことはできません。
ペット人気のあるイモリの種類と値段
アカハライモリ以外にも、イモリには多種多様な種類が存在します。ここでは、その中でもペットとして飼育できる代表的な5種をピックアップしてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
①アカハライモリ

「ニホンイモリ」という別名を持つアカハライモリは、日本で最も個体数が多く、本州、四国、九州などの広範囲に生息しています。
野生のアカハライモリは、池や水田、小川などの水場で暮らしているため、自然界でも比較的容易に見つけられる種類です。ただし、愛知県や埼玉県などの一部地域では、保護対象として捕獲が禁止されている場合があるため、注意が必要です。事前に自治体の規制を確認しましょう。
流通量が多いため、ペットショップでは1匹あたり400〜700円程度と安価に購入できますが、珍しい模様を持つ個体には高額な価格が付けられることもあります。
②ミナミイボイモリ

イボイモリは、イモリのなかでも「生きた化石」と呼ばれ、古くから存在する希少性の高い種類です。背中にゴツゴツとした大きな肋骨の隆起があるのが特徴で、主に奄美大島や沖縄本島に生息しています。
ただし、イボイモリは天然記念物に指定されており、一般の方は飼育できません。そのため、イボイモリをペットにしたい方は、中国に生息する「ミナミイボイモリ」を迎えることを検討しましょう。
ミナミイボイモリは中国の雲南省西部に分布しており、山地の池や水田に生息しています。頭から背中にかけて見られる鮮やかなオレンジ線と隆起の美しさが特徴で、人気が高い種類の一つです。希少性が高いため、購入金額は5,000円~10,000円とやや値が張ります。
③シリケンイモリ

シリケンイモリは、「渡瀬線(わたせせん)」として知られる、屋久島と奄美大島を結ぶ境界線より南の暖かい地域に生息しています。このシリケンイモリは、生息地によってさらに細分化されており、奄美大島のアマミシリケンイモリと、沖縄のオキナワシリケンイモリという2つの亜種が存在します。
特徴的な見た目をしており、背中は黒色に金色の斑点があり、腹部は個体によって赤やオレンジなど様々な色彩を見せます。購入価格の目安は、1匹あたり900円から1,500円程度です。
④シナイモリ
中国中東部を主な生息地とするシナイモリは、「チュウゴクイモリ」という別名も持つ種類です。外見はアカハライモリによく似ていますが、シナイモリの方がサイズがやや小さく、腹部の赤色が薄いという点が異なります。
このシナイモリは、数百円前後と比較的安価で入手可能ですが、流通量が少ないため、ペットショップなどで見かけた際は、早めに迎え入れることを検討するのがおすすめです。
⑤マダライモリ
全身を覆うまだら模様が特徴のマダライモリは、その愛らしい見た目と人懐っこい性格から、イモリ愛好家の間で非常に高い人気を誇ります。お世話の手間も少ないため、一度は飼育してみたいと望む人が多い種類です。
他のイモリと比べて価格は5,000円から10,000円とやや高めですが、その最大の魅力は、派手な外見とフレンドリーな性質に加え、水をほとんど必要としない飼育の手軽さにあります。
イモリの飼育で揃えておきたいもの

イモリを飼い始める際に準備すべき、必須のアイテムをここからご紹介します。新しい家族であるイモリを迎える前に、万全な環境を整えられるよう、しっかりと必要なものをチェックしておきましょう。
水槽とフタ
イモリは、ツルツルしたガラス面でも器用に登ることができる脱走の名人であるため、飼育には蓋がしっかりと閉まる水槽を選ぶことが不可欠です。
具体的には、「グラステラリウム」といった爬虫類専用のケージや、一般的なガラス水槽に脱走防止用のネットやフタを後付けする方法があります。イモリの体の大きさ、飼育する匹数、そして設置場所のスペースを考慮に入れ、最も適切なサイズの水槽を選ぶようにしましょう。
底砂
水槽の底に敷く砂のことを「底砂」と呼びますが、「床材」と呼ばれることもあります。陸地での生活を好むイモリの種類には、床材を用意するのが望ましいでしょう。また、底砂を敷くことで水質が安定し、バクテリアが餌やフンなどの有機物を分解する効果も期待できるため、水棲でイモリを飼育する際もおすすめです。
底砂を取り入れることの利点は、水槽内の景観がおしゃれになることや、陸地のための高低差をつけやすくなる点、さらには水草の植えつけが可能になる点です。ただし、掃除の手間を減らすため、目の粗い砂を選び、水槽の底に1cm程度の薄い厚さで敷きましょう。
流木や浮島、水草などのレイアウト用品
シリケンイモリなど、生活のほとんどを陸上で過ごす種類には、陸地を作成する必要があります。水棲傾向の強いアカハライモリなどの種類であっても、水から離れて休憩できる場所を設けた方が、より快適な生活を送りやすくなります。
陸地を作る方法として底砂を使うこともできますが、管理が難しいため初心者にはおすすめできません。まずは、浮島や流木といった簡単に設置できるアイテムで陸地を確保しましょう。また、イモリは強い水流を好まないため、流木、浮島、水草など、さまざまなアイテムを設置して水流を穏やかにします。
設置物を増やすとレイアウトの幅が広がり水槽内は魅力的になりますが、その分、水質管理や掃除の手間が増えることは考慮しましょう。
ろ過装置(フィルター)
ろ過装置は、水槽内の水を吸い込み、フィルターを通して不純物を除去した後、浄化された清潔な水を戻す器具です。イモリの飼育に必須ではありませんが、水槽の水は餌の残りやフンによってすぐに汚れるため、水質管理を楽にするために導入することをおすすめします。
特に、水草や底砂、陸地など、さまざまなアイテムを水槽内に設置すると、日々の水換えや掃除が大変になります。ろ過装置を使用すれば、水をきれいに保ちつつ循環させることが可能になるため、水の管理が便利です。
温度計・水温計
適度な室温や水温を維持するために必要です。たとえばアカハライモリの場合、飼育温度は20℃~25℃、水温を30℃以下に調整する必要があります。
注意が必要なのは、照明を設置する場合です。照明の熱で水温が上昇しやすくなるため、小まめに温度を測り、適正な温度を保つために調整しましょう。
水質調整剤
イモリが過ごしやすい水質を保つためのアイテムです。イモリは比較的丈夫な生き物ですが、水質が悪すぎると病気や不調の原因になるため注意しましょう。
水質調整剤を使うと、水道水に混ぜるだけでカルキ抜きができ、イモリが過ごしやすい水質が生まれます。数時間以上にわたり水道水を汲み置きする手間がかからなくなるため、忙しい方には特に便利です。
イモリを飼育するうえで大切な5つの基礎知識
イモリを迎える環境が整った後は、日々の適切なお世話の方法を理解することが重要です。ここからは、正しい飼育管理について見ていきましょう。
①主なエサの種類と選び方
イモリを健康的に飼育するには、適切な餌の選択が非常に重要です。イモリに与える餌は、主に「生き餌」「冷凍餌」「乾燥餌」という3つの種類に大きく分けられます。
生き餌
イモリの食事として、オタマジャクシ、メダカ、アカムシ、イトミミズ、昆虫といった生き餌は、自然環境に近い食事となります。これらは動きがあるため、イモリ本来の捕食行動を刺激し、自然な行動を引き出す利点があります。
しかし、生き餌は保存が難しく、価格が高くなりがちなことがデメリットです。また、餌自体の衛生管理にも細心の注意を払う必要があります。
冷凍餌
アカムシやブラインシュリンプなど、冷凍された餌は栄養価が高く、非常に便利な食事です。冷凍餌は長期保存が可能であり、与えたい時に解凍するだけで利用できます。手軽で衛生的に利用できる点から、多くのイモリ飼育者に好まれています。
乾燥餌
市販の乾燥餌は、保存が容易で手軽に扱えるため、特に初心者の方に便利な選択肢です。この餌は栄養バランスが調整されているため、イモリが必要とする栄養素を簡単に与えられます。
ただし、イモリの中には乾燥餌を好んで食べない個体もいるため、最初に与える際は、食いつきを確認するために少量を試してみることが大切です。
②エサを与える頻度は「1日1~2回」がベスト!与えすぎに気を付けて
野生のイモリが餌を食べる頻度は1週間に1〜2回程度です。そのため、飼育下にあるイモリに餌を与える頻度も、2日から3日に一度で十分だとされています。もし、毎日餌を与えないことに不安を感じる場合は、一度に与える餌の量を減らし、その分を1日1回に分けて与えるように調整しましょう。
1回に与えるエサの量の目安は、イモリが食べきれるくらいの量です。食べきれない量を与えると、肥満や消化不良の原因になるため注意しましょう。また、食べかすが水に浮かぶと水質を低下させるため、健康維持のためにもエサを与えすぎないことが重要です。
③水温を常に「20〜27℃」をキープしてあげる
イモリは自力で体温を調節できない変温動物であるため、飼育環境の気温がそのまま体温に影響します。そのため、エアコンや暖房、ペット用のヒーターなどを利用して、室温を20℃から25℃に保つよう調整が必要です。
特に水温管理は重要です。水温が20℃を下回ると活動が鈍くなり、16℃ほどで餌を食べなくなってしまいます。逆に27℃を超えると、暑さのせいで食欲不振になることがあります。したがって、ファンやエアレーションを設置するなどして水温を下げ、20℃~27℃の範囲に保ちましょう。
④水槽の水位は「15~20センチ」と低めにしてあげる
イモリが飼育されている水槽の水位は、15センチから20センチ程度と低めに設定するのが適切です。この水位であれば、イモリが水面へ容易に浮上して、苦労なく呼吸をすることができます。
水位が高すぎると、イモリが水中で疲労し、それがストレスや健康上の問題を引き起こす可能性があるため、水位の管理には注意が必要です。
⑤水換えと掃除の方法・頻度
イモリのフンや、与えた餌の食べ残しを放置すると、健康状態に悪影響を及ぼします。そのため、水槽内の衛生環境と水質を良好に保つために、定期的な掃除と水換えを行いましょう。
目安として、水換えは1週間から2週間に一度、水槽全体の本格的な掃除は月に一度のペースがおすすめです。
イモリの飼育ルーティン

ここからは、イモリ飼育における一般的な1日の流れを解説します。このルーティンはあくまで一例です。実際に飼育されているイモリの体調や様子を観察しながら、それぞれの状況に合わせて適切に行動しましょう。
朝:基本的に毎日すること
朝は餌やりが必要なこともあり、毎日するべき世話が多いです。イモリの健康を守るためにも、これからご紹介することは、毎朝欠かさずに行いましょう。
室温と水温と環境を確認する
起床後、まず最初に行うことは水槽の水温確認です。イモリにとって適正な水温は20℃から27℃の範囲なので、この範囲内にあるかを確認し、必要に応じてヒーターやクーラーを調整してください。
また、外出される飼い主の方は、日中の室温が20℃~25℃に保たれるよう調整してから出かけるようにしましょう。水槽内の環境全体に異常がないか、併せてチェックすることも重要です。
水質の確認を行う
次に、水質検査キットを使って水の状態を確認します。アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩の濃度レベルをチェックし、それが適切な範囲内にあるかを確かめましょう。水質が悪いと判断された場合は、すぐさま水換えなどの必要な対策を実施します。
餌を与える
イモリに給餌を行います。この際、生き餌、冷凍餌、乾燥餌といった種類をバランス良く組み合わせて与えることが重要です。適量を守って与え、食べ残しが発生しないよう注意しましょう。残った餌は水質悪化を招く大きな原因となるため、必ず速やかに水槽から取り除く必要があります。
観察と環境整備を行う
イモリの観察を行い、動き、食欲、そして体の状態に異常がないかをチェックします。あわせて、水槽内の装飾品や陸地が汚れていないか、また、適切な位置に配置されているかを確認します。必要であれば、直ちに整備や清掃を行いましょう。
水槽の水を補充する
水槽の水位が下がっている場合は、適正な温度の水を補充します。水を加える際は、必ずカルキ抜き剤などを使用し、イモリにとって適した水質であることを確認してから行いましょう。
清掃を行う
水槽の部分的な清掃を実施します。具体的には、底砂の掃除や水槽のガラス面に付いた汚れの除去などです。こうした定期的な清掃を実施することが、水質を保ち、イモリの健康を維持することに繋がります。
夜:基本的に毎日すること
夜はイモリの健康状態を確認し、室温の調整を行います。イモリにとって快適な環境を守り、翌日以降も健康な状態で過ごせるように導きましょう。
イモリの健康状態を確認する
夜には、一日の終わりとしてイモリの健康状態を再度確認します。体の異常の有無や、行動、動きに問題がないかをよく観察しましょう。もし異常が確認された場合は、速やかに必要な対策を講じるようにしてください。
室温の管理を行う
夜間における水温が適切な範囲内で維持されているかをチェックします。特に室温が大きく変動する夏場や冬場は、細かな管理が重要です。必要が生じた際は、ヒーターやクーラーの設定を調整し、イモリにとって安定した飼育環境を維持するように努めましょう。
週や月に1回すべき、イモリ飼育のメンテナンス
続いては、イモリ飼育において週ごとや月ごとに実施すべき定期的なメンテナンスについて解説します。適切な頻度で水槽環境を清潔に保ちましょう。
水槽の水の1/3を新しい水に交換する
イモリの飼育環境を清潔に保つため、週に一度は水槽の水の約3分の1を新しい水に交換することが大切です。この部分的な交換を行うことで、水質を安定させ、イモリの健康維持に繋がります。
水を交換する際には、水道水に含まれる有害な成分を取り除くため、必ずカルキ抜き剤を使用してください。また、新しい水と水槽内の水温が同じになるよう調整し、イモリがストレスを感じる急激な温度変化を防ぐようにしましょう。
水槽のフィルターを掃除する
水槽に設置するフィルターは、水を循環させながら不純物や汚れを除去する役割を担います。その性能を保ち、水質を維持するため、週に一度はフィルターを取り外して掃除しましょう。
フィルターの掃除には、水道水を使わず、必ず水槽内の水を使って行うようにしてください。水道水に含まれる塩素などの有害な成分が、フィルター内部にいる水質維持に不可欠な有益なバクテリアを殺してしまう可能性があるためです。
水槽全体を軽く掃除する
月に一度の頻度で、水槽全体の徹底的な掃除を行います。水槽の内側ガラス面に付着した藻や汚れは、専用のスポンジやスクレーパーを使って丁寧に取り除きましょう。さらに、岩や流木などのデコレーションアイテムや底砂に付着した汚れも清掃します。
底砂の掃除は、底砂クリーナーを使用することで効率よく行えます。掃除を行う際は、イモリを驚かせたりストレスを与えたりしないよう、作業を丁寧に進めることが大切です。
イモリを飼育する上での注意点

最後に、イモリを健康かつ安全に飼育する上で、特に注意すべき点を解説します。快適な飼育環境を維持するために重要な事項を確認しておきましょう。
①かかりやすい病気の種類を把握し注意する
イモリは水や水槽内が汚れていたり、室温や水温に問題があると病気になってしまうことがあります。よく見られる病気としては、消化不良やカエルツボカビ病、水カビ病、モルチペストなどです。
ここでは、イモリがかかりやすい病気の症状と原因を一覧表にまとめてご紹介します。
| 病気 | 症状 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 消化不良 | 肥満、餌を食べなくなる | 餌の与えすぎ |
| カエルツボカビ病 | 発疹、変色 | カビの寄生 |
| 水カビ病 | 皮膚の表面に白いカビが生える | 水質の悪化 |
| モルチペスト | 食欲不振、出血、下痢 | 不衛生な環境 |
| 脱皮不全 | 上手に脱皮できず古い皮が残る | 脱皮の失敗 |
イモリを飼育する場合は、しっかりと対策をして病気を予防し、イモリの健康状態を日々観察するようにしましょう。
②不用意に触らないようにする
イモリの水温の適温は20℃から27℃です。このため、人間の体温である約36℃は、イモリにとっては火傷(ヤケド)させてしまうほど熱い温度となります。
したがって、イモリに触れる際は、必ず手を水につけて十分に冷やしてから触りましょう。また、イモリに負担をかけないよう、長時間触らないことが大切です。
③脱走に注意する
イモリは垂直なガラス面も容易に登る能力があるため、飼育事故で最も多いのが「脱走」です。ごく小さな隙間からでも逃げ出してしまいます。したがって、脱走されにくいケージを選ぶことや、隙間を塞ぐ対策を講じることが非常に重要となります。
④エサを与え過ぎない
イモリには、目の前に差し出された餌を、与えられた分だけ食べてしまう習性があります。餌の与えすぎは、肥満や消化不良といった健康問題を引き起こす原因となるため、過剰な給餌には十分注意しましょう。
⑤触れ合う前後はしっかりと手洗いを行うクセをつける
イモリが持つ腹部の派手な赤色は、自身に毒があることを他の生物に知らせる「警告色」と呼ばれるものです。
陸上で強い刺激や危険を感じた際、イモリはテトロドトキシンという毒によって身を守ろうとします。具体的には、横に倒れて体を反らせ、腹部を見せることで危険を警告するのです。
この毒は人が触るだけなら通常問題ありませんが、粘膜などのデリケートな部分に触れると、炎症や痛みを引き起こす可能性があります。そのため、イモリに触れた手で目をこするなどの行為は危険です。イモリと触れ合う前後は、必ずしっかりと手洗いを行いましょう。
イモリ飼育に関するよくある質問

ここでは、イモリの飼育に関するよくある質問3つにお答えします。イモリは頑丈な生き物ではありますが、飼育環境によっては病気にかかるケースも多い、デリケートな生物です。ここだけでわからないことがあれば、獣医師にも相談してサポートを受けましょう。
Q.アカハライモリの雄雌の見分け方を教えてください。
A.オスの繁殖期には、婚姻色と呼ばれる鮮やかな色が全身に現れます。赤やオレンジ、黄色といった色彩が広がるため、雄雌を見分ける際の大きなヒントになるでしょう。また、オスの尾はメスと比べて太く長いことも外見上の特徴です。
オス特有の行動としては、水中で大きく尾を振ったり、体を膨らませて威嚇したりといった点が挙げられます。また、餌を探し求めて活発に動くこともオスの特徴です。
一方のメスは、オスと比べて体型が丸みを帯びており、特にお腹のまわりがふっくらとしています。オスと比べて細く短めの尾を持つことや、頭部が幅広く丸みのある形をしていることも外見上の特徴です。
また、アカハライモリのメスは、繁殖期を迎えてもオスのように婚姻色の変化が大きくは見られません。一般的にはオスよりもメスのほうが体長が大きいため、総合的な要素で雄雌を見分けると良いでしょう。
Q.イモリを繁殖させる方法を教えてください。
A.イモリを繁殖させるためには、オスとメスを同居させる必要があります。そのため、まずは雄雌を見分けることが重要です。繁殖に適した温度は20~23℃と言われています。
イモリの産卵期は1~7月上旬にかけてと長く、この間に合計で200個前後の卵を産みます。イモリは卵をやわらかい葉っぱに産みつける習性があるため、水槽に水草を設置すると良いでしょう。
注意点は、卵を他のイモリに食べられてしまう可能性があることです。そのため、多頭飼いしている場合は、卵だけの水槽を用意することをおすすめします。
Q.赤ちゃんイモリの飼育で注意するべきことはありますか?
A.まずは水槽の底に赤玉土を敷きましょう。赤ちゃんイモリはデリケートであり、不潔な環境に置くと皮膚病で死んでしまうこともあります。赤玉土を敷くと、フンなどの有害物質を土が吸収するため、清潔な環境を保ちやすくなります。
水たまりで溺れて溺死するリスクがあるため、水場を確保しつつも、簡単に上陸できる緩やかなスロープを用意しましょう。赤ちゃんイモリは動きに反応して餌を認識するため、食欲がないときは、ミジンコやイトミミズといった動く餌を与えることがポイントです。
自宅でイモリを飼育してみては?
本記事では、イモリの飼育方法に関する解説を行いました。イモリの寿命は10年以上と長いため、飼育を始める前に、彼らの生涯を通して責任を持って面倒を見られるかを十分に検討することが非常に重要です。
イモリの生態に関する基本をしっかりと理解し、彼らが快適に暮らせる最適な環境を工夫して整えてあげましょう。





