部屋探しをしていると、分譲賃貸マンションという言葉に出会うことがあります。分譲賃貸マンションとは、実際に購入したマンションを賃貸物件として貸し出している物件のことです。一般の賃貸マンションよりも少し豪華そうで、高そうなイメージがあるこの分譲賃貸マンションを賃貸するとどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
今回は、分譲賃貸マンションの魅力について、実際の事例も交えながら詳しく解説していきます。
分譲賃貸マンションとは
分譲マンションとは、賃貸ではなく購入して住むことを前提に建てられたマンションのことです。目的からすれば、分譲マンションに賃貸として住むということはあり得ないことといえるでしょう。
しかし、分譲マンションの購入者の事情により分譲マンションが賃貸として市場に出回ることがあります。どんな物件か気になる方は、「分譲賃貸」で検索してその特徴をチェックしてみてください。
分譲マンションを賃貸に出している理由
本来、購入した人しか住むことができない分譲マンションですが、なぜ賃貸として市場に出回るのでしょうか。次項でその理由と経緯を説明していきます。
事情により住めなくなったから
分譲マンションを購入した方であっても、仕事の都合で転勤するなどの理由で、そのマンションに継続して住むことが困難になることがあります。
分譲マンションは購入して保有しているだけで、居住の実態に関わらずマンションの維持管理に必要な経費を負担しなければなりません。住宅ローンを利用して購入している場合は、そのローンの返済が必要なほか、固定資産税などの税金も発生します。
お金に相当余裕がある人でない限り、このような費用を負担しつつ別のところで生活を営むということは非常に困難ですので、賃貸物件として入居者を募り、家賃収入をもってそういった経費を回収するという方法にたどり着くのです。
不動産投資目的で購入をしたから
分譲マンションは購入と居住を前提としていますが、立地や環境の良いマンションは資産性も高く、価格が下落しない傾向にあります。
分譲マンションは資産のひとつであり、資産性の高い分譲マンションを購入して賃貸物件として入居者を募り、そこから家賃収入を得るという投資用の商品としての一面も存在しています。居住を目的とせず家賃収入を目的とした投資家による募集がなされているケースも存在しており、なかには投資専用の分譲マンションも少なくありません。
購入者が見つからなかったから
分譲マンションは住みたい人に向けて販売されるものですが、やはり売れ残ってしまうことなどもあります。そういった場合、建築主が売却を諦め、賃貸物件として入居者を募るというケースもあります。
分譲賃貸マンションのメリット
分譲マンションが賃貸物件として市場に出回る主な経緯は上記のとおりですが、具体的に分譲賃貸マンションにはどのようなメリットが存在しているのでしょうか。
防音性や耐震性が優れている
分譲マンションは、一般的に購入者が長く住むことを想定して建築されています。民間の賃貸マンションと異なり、入れ替わりを前提として汎用的な仕様とはなっておらず、強固に建築されている分譲マンションがほとんどです。
このような背景があることから、分譲賃貸マンションは賃貸マンションよりも防音性や耐震性に優れているということがいえます。
設備が最新モデルである場合が多い
賃貸マンションでは、入居者の入れ替わりがあった際に改装工事を行います。このように、室内改装の頻度が高いことから汎用品の設備を導入することが一般的です。
しかし、分譲マンションでは特定の個人やご家庭が長く住まわれることを想定した建築・設計がなされるため、比較的グレードが高い設備であることが多いです。こういった設備面の優位性はキッチンや浴室などの仕様に限られたものではなく、窓ガラスや玄関鍵などの仕様でも同様のことがいえます。
窓ガラスでは結露が発生しにくく、保温効果も高いペアガラスはもはや当然であり、結露発生時にカビの発生を抑制する樹脂のサッシが導入されるなど、生活衛生面でも違いは明らかです。また、玄関鍵なども破壊以外の方法で破錠することが困難なシリンダーや、セキュリティ性能の高い非接触タイプの鍵が導入されているなど防犯面でも高い期待が持てます。
建物の維持管理が徹底されている
室内の仕様のみならず、分譲マンションでは共用部分の仕様も大きく異なります。賃貸マンションではほとんど見かけることはありませんが、管理人が常駐し、清掃や簡易的な入居者のサポートをしてくれるマンションが多数存在しています。さらに、最近では不在時の荷物を代わりに預かってくれる「コンシェルジュ」と呼ばれるフロントスタッフを配置している分譲マンションも珍しくありません。
また、賃貸マンションでは建物を維持管理するにあたって、必要な点検や作業が家主および管理会社の意向により実施されないことがあります。たとえば、居住を目的とした集合住宅では半年に一度は消防設備の点検を行うことが法律で義務付けられています。しかし、この消防点検の実施率は全国平均50.8%(2019年度)と、すべての建物の約半数しか実施されていません。
※参考:総務省消防庁予防課設備係 「消防用設備に係る最近の動向について」
一方、分譲賃貸マンションでは所有者全員で管理組合が結成されており、管理組合を管理する管理会社も存在しているところでは、こういった法定点検はほぼ100%の割合で実施されています。清掃や消防点検に代表される建物の維持管理という観点で見ても、賃貸マンションよりも安心して住み続けることができるといえるでしょう。
上記のように、設備面・防犯面が優れている分譲賃貸マンションに興味を持った方は、「分譲賃貸」で検索して目当ての物件を探してみてはいかがでしょうか。
分譲賃貸マンションのデメリット
分譲賃貸マンションは建築の目的から設備仕様が豪華で防犯性に優れるなど、賃貸マンションと比較して優位性があることがわかりました。一方、分譲賃貸マンションにおけるデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
家賃が比較的高めに設定されている場合が多い
分譲賃貸マンションの所有者にはさまざまな経費がかかるため、家賃が高めに設定される傾向があります。原則1人が1室を所有するため経費が分散されず、分譲賃貸マンションの所有者1人にかかるコストが増えることが主な理由です。また、そもそも仕様が良い建物を建築するため建築にかかるコストも高額になり、その結果家賃も高くなってしまうのです。
契約期間が定められている場合がある
分譲マンションが賃貸物件として市場に出回る理由のひとつに「所有者の転勤」が挙げられます。この場合、転勤期間が終わった所有者が生活の本拠を失うことになりかねませんので、転勤期間終了時までという期間を定めた契約内容になっていることがあります。
物件数が少ない
分譲マンションはそもそも購入して住むことを目的に建てられています。そのため賃貸への転用はメジャーなものではなく、市場に出回る件数も少ないということを頭に入れておかなければなりません。
単身向けのマンションは投資用として建築されることもあるため、市場で枯渇するということは考えにくいですが、ファミリータイプは投資用で購入される方も少なく、市場での供給は非常に少ない傾向にあります。気に入った物件があったらすぐに問い合わせをするなどしないと、ほかの誰かに先を越されてしまうかもしれません。
実際にあった!分譲賃貸マンションのトラブル事例
分譲賃貸マンションは、運営の方法がそもそも通常の賃貸マンションとは異なるポイントがいくつか存在するため、トラブルの事例も多くあります。最後に、実際にあった分譲賃貸マンションのトラブルをご紹介しますので、物件探しの参考にしてみてください。
駐車場の申込みができないというトラブル
ライフスタイルの変化によって車を購入し、駐車場を探している最中に起きた事例です。一般的には管理会社に申し出をして駐車場を借りることになりますが、ここに落とし穴が隠れていました。
分譲賃貸マンションは所有者により管理組合が構成され、マンションの運営は管理組合が作成する管理規約に基づいて行われます。そのため、借主も管理規約を遵守する必要があります。
借主が駐車場を借りようとするとき、管理規約で「賃借人には駐車場を貸し出しできない」という定めがある場合、賃借人は駐車場を借りることはできません。車を持っている方は、このようなトラブルに遭わないよう事前に管理規約を確認しておくようにしましょう。
実はペットが飼えなかったというトラブル
分譲賃貸マンションを借りる際に、所有者からペットの飼育について了解をもらっていたため飼育をしていたら、実は管理規約ではペットの飼育ができないという定めになっていたという事例もあります。
分譲マンションの賃借にあたっては、所有者の許可や意向のほか、管理規約の確認が必須です。所有者が良しとしたところで、管理規約で不可となっていた場合は、当然管理規約が優先されます。
どちらも管理規約の確認不足により発生したトラブルですが、部屋を借りようとする人が分譲賃貸マンションの管理規約を自らの力で確認しようというのはさすがに無理がある話です。分譲賃貸マンションに住む際には、仲介業者を経由して管理規約を確認することを忘れないようにしましょう。
分譲賃貸マンションも候補のひとつに入れて検討してみよう
分譲賃貸マンションは家賃が高額化する傾向にはありますが、一方で豪華かつ強固な仕様と行き届いたサービスにより、生活に満足感を与えてくれる素晴らしい選択肢のひとつです。
特に、建物の維持管理に必要な法定点検や作業が適切になされているという点においては、安心感を求めている人にとって嬉しいポイントになるでしょう。賃貸マンションでは水質の点検、消防設備の作動確認、排水施設の清掃などが家主の一存によりおざなりになりがちです。しかし分譲賃貸マンションでは、そういった維持管理に必要な資金を分譲賃貸マンションの所有者が管理費という形で毎月拠出しているため、費用面の問題で法定点検が実施されないということはほぼありません。
また、部屋の中だけではなく廊下やエントランス、さらには目に見えないところまで適切に管理されている物件を希望される方には特に分譲賃貸マンションはおすすめです。
現在新しい住まいを探している方は、目に見える内装に加え、管理部分にも目を向けて部屋探しをしてみてはいかがでしょうか。