賃貸物件は方角によって日当たりが異なります。日当たりの見込める南向きの部屋でも、実際に現地で確認してみなければわからないこともあるので、物件資料だけで判断するのは注意が必要です。
今回は、部屋の方角で変化する要素や日当たりが望めなくなる条件、日当たりが望める物件でネックになりやすいポイントについて解説します。部屋の方角によってメリットやデメリットがあるので、部屋探しをするときの参考にしてみてください。
部屋の方角で変化する要素
部屋の方角によって、日当たりの良さや家賃、風通しの良さは異なります。ちなみに、部屋の方角とはベランダが向いている方角のことを指します。まずは、部屋の方角によって変化する3つの要素について見ていきましょう。
部屋の方角で変化する要素①日当たりの良さ
方角は日当たりの良さに大きく関わるものなので、部屋探しの前に東西南北それぞれの特徴を把握しておきましょう。
①南向き
南向きの部屋は、1年を通して日中に日が差し込む時間が長いことが特徴です。南向きの部屋のメリットは以下のとおりです。
・日差しが入る時間が長いため、洗濯物が乾きやすい
・太陽が昇っている間は、1日を通して部屋が明るい
・照明をつけなくても明るいので光熱費を抑えられる
・地域によって異なるものの、冬の日の光が暖かい日は暖房をつけなくても過ごせるので光熱費を抑えられる
一方、南向きの部屋には以下のようなデメリットがあります。
・夏はカーテンを閉めないと直射日光で室内が暑くなりやすい
・家具やフローリングが日焼けしやすい
・南向きの部屋は人気があるため、家賃が高い傾向がある
南向きの方角は、東西南北の中では日が入る時間が一番長い部屋になるので、日の入る明るい部屋を求める方におすすめです。
②東向き
東向きの部屋は、朝日が差し込んで、午後から徐々に陰るのが特徴です。以下に、東向きのメリットをまとめましたので見ていきましょう。
・午前中は日当たりが見込めるので洗濯物が乾きやすい
・午後からは直射日光が部屋に入らないので、夏は涼しく過ごせる
・朝日で気持ちよく目覚められる
一方、デメリットは以下のとおりです。
・午後からは部屋が暗くなりやすい
・太陽が陰り始める午後から夕方は直射日光が入らないので、夜は冷えやすい
東向きの部屋は、太陽の光を浴びて目覚めたいと考えている方や朝型の生活スタイルの方におすすめです。
③西向き
西向きの部屋は、午前中は日差しが入りませんが、午後から夕方にかけて日が差し込んでくるのが特徴です。西向きのメリットは以下のとおりです。
・夏の午前中は涼しく快適に過ごせる
・午後からでも洗濯物が乾きやすい
・午後から太陽の光が部屋に入るので、夜も暖かくなりやすい
西向きには上記のようなメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。
・午前中は部屋が暗くなりやすい
・西日の直射日光で、フローリングや家具が日焼けしやすい
・夏場の西日は特に日差しが強いので、室内に熱気がこもりやすい
西向きの部屋は、午後から行動することが多い方や夜勤がある方におすすめです。
④北向き
北向きの部屋は、1日を通して直射日光が見込めないのが特徴です。そんな北向きの部屋にも以下のようなメリットがあります。
・フローリングや家具などの日焼けが生じづらい
・夏でも室温が上がりにくいので、快適に過ごしやすい
・家賃が低めに設定されていることが多い
一方、北向きのデメリットは以下のとおりです。
・直射日光が当たらないので、洗濯物が乾きにくい
・冬は室内が寒くなりやすい
・湿気がこもりやすいのでカビ対策が必要
北向きの部屋は、家賃を抑えたい方や夜勤がある方におすすめです。
上記のように、方角ごとに日当たりの良さが変わりますが、日当たりの面ではやはり南向きの部屋に軍配が上がります。南向きの物件を希望する方は多いため、気になる方は早めに物件情報を集めておきましょう。
部屋の方角で変化する要素②家賃の高さ
部屋の方角によって、家賃が異なることが多くあります。一般的に南向きの部屋は、北向きの部屋よりも家賃設定が高くなる傾向にあります。ベランダが北向きの部屋だと、太陽の日差しが部屋に入りにくいこともあり、同じマンションで同じ階数の部屋だとしても、北向きの部屋は家賃が低いケースが多いです。
部屋の方角で変化する要素③風通しの良さ
日当たりの良い部屋は、風通しが良いことも珍しくありません。季節によって風の吹き方は異なり、春・夏・秋は南風が一般的ですが、冬になると北風に変わります。
そのため、北側と南側に窓があれば、1年を通してどの季節でも風通しが良く、自然な空気が部屋に入ってきます。風通しの良い部屋だと新鮮な空気が入ってくるので、居心地の良い快適な状態を保てるでしょう。
また、風通しの良い部屋を求める場合は、角部屋をおすすめします。角部屋には窓が複数枚設置されており、自然の風が部屋の中を通り抜けていきます。
「南向き=日当たりが良い」とは限らない?日当たりが望めなくなる条件
南向きだからといって、必ずしも日当たりが良いわけではありません。物件情報だけではなく、現場に行かないとわからない情報がたくさんあります。ここからは、実際に部屋を内見するときに確認すべきポイントについて解説していきます。
物件の周囲に高い建物がある
眺望の良さや日当たりの良さを気に入って部屋を契約したにもかかわらず、しばらくしてベランダの前面に建物が建設されて、日当たりが悪くなってしまったというケースも少なくありません。このようなことを防ぐために、部屋を探す際には用途地域を確認しておくと安心です。用途地域とは、都市計画法に基づき用途に応じて分けられた地域のことで、大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3種類に分けられます。
住居系の第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域であれば、住環境が優先されている地域なので、大きな建物は建てられません。また、用途地域によっては大きなマンションや商業施設が建つエリアもあります。目の前が駐車場や空き地など、建物が建つ可能性がある土地の場合は建物周りの環境も確認しておくと良いでしょう。
窓際のつくりが日当たりとマッチしていない
日当たりの良い方角で、周囲に視界を遮る建物がない場合でも、日の差し込みが思ったよりも部屋に入らないつくりの部屋もあります。たとえば、バルコニーやベランダが広くて奥行きがある場合、日差しが室内の手前までしか届きません。日当たりの良い部屋を探す際には、バルコニーやベランダの広さや奥行きを確認して、室内へ差し込む日差しがどの辺まで届くのか現地で確認すると良いでしょう。
また、ベランダに設置されている手すりの素材によっても光の入り具合が変わります。コンクリートなどの素材だと日の光が遮られますが、ガラス材の手すりであれば透明なので、光が入り込みやすく部屋も明るくなります。
間取りと日当たりがマッチしていない
「南向きだから日当たりが見込める」と考えがちですが、間取りによって日の入り具合は異なります。日当たりが見込める南向きの物件を選んだにもかかわらず、想定していたよりも日が入らないといったケースも少なくありません。
たとえば縦に長い部屋の場合、窓の近くは日が入りますが、部屋の奥までは日が差し込みません。一方、窓の開口部が横に長いタイプの間取りだと、部屋全体に日が差し込みます。このように、間取りと日当たりがマッチしていない部屋がありますので、上記2点を現地で確認するようにしましょう。
日当たりが望める物件でネックになりやすいポイント
日当たりが望める物件を求める方は多いのですが、ネックになりやすいポイントがあることも忘れてはいけません。良い点だけに目を向けて部屋を探すのではなく、日当たりが良いことで起きる注意点も確認しておきましょう。
「南向き」というだけで家賃が高くなる傾向にある
前述のとおり、家賃は部屋の方角によっても変わっていきます。ただし方角だけでいえば、一番家賃が高いのは南向きの部屋なので、場合によっては予算に悩んでしまうことも少なくありません。
一般的に、南→東→西→北の順に家賃の額は下がっていきます。南向きの部屋は1日を通して日当たりが見込め、人気があるので家賃も高くなる傾向にあります。
人気の立地の南向き物件はすぐ埋まるので、日当たりと立地を両立させるのが難しい
好立地で南向きの部屋は賃貸需要が高いので、空室になったとしてもすぐに部屋が決まります。駅に近い好立地の物件や、南向きで日当たりが見込める部屋を希望して部屋探しをされる方は多いです。
部屋探しをするときには希望の条件があると思いますが、「これだけは譲れない条件」と「希望はするけど妥協しても良い条件」を決めておくと探しやすくなります。
日当たりと設備・セキュリティを両立させるとさらに家賃が高くなる
日当たりの見込める部屋だけでなく、最新の設備やオートロックなどのセキュリティが揃っている部屋も家賃が高くなります。新築時がもっとも家賃が高く、築年数の経過に合わせて家賃が徐々に下がっていきますが、設備やセキュリティが整っている物件は比較的築年数の浅い物件が多く、家賃が高い傾向にあります。
日当たりが良すぎると生活しづらくなる
日当たりが良すぎる部屋だと、日差しが入る角度によってはまぶしく感じることもあります。特に夏は室内に太陽光が入る時間が長くなるので、室内の温度が上昇し、夜まで温度が下がりにくくなることも考えられます。日当たりが強すぎる場合には、日中でも断熱カーテンや遮光カーテンで部屋を閉め切るといった対策も必要です。
宅建士が考える、日当たりと他の物件条件のバランス
賃貸物件を探す際には、日当たりや方角を軸に物件を検討することも1つの方法ですが、それ以外で調べるときの条件もあります。最上階や1階の部屋、角部屋などの希望する条件を優先して、判断するケースもあるでしょう。
たとえば、最上階の場合は、エレベーターの有無によって家賃は異なります。エレベーターがある物件であれば家賃は高くなりますが、階段で5階の部屋の場合は賃貸需要が下がるので家賃は安い傾向にあります。
また、エレベーターの有無に関係なく1階を希望する方も多いです。1階であれば、階下に音を気にする必要がなく、マンション・アパートのなかでも家賃が安い傾向にあります。
角部屋は、窓がベランダと壁側の2カ所付いている部屋が多く開放感もあるため、階数関係なく人気があります。中部屋と比べると、隣人の音もあまり気にならないといった特徴もあるので「角部屋が絶対に良い」という需要は高いです。
このように日当たりや方角以外にも、お部屋探しにはさまざまな条件があります。
こだわる条件に優先順位をつけ、さまざまな条件をトータルで考えて後悔のないお部屋探しをしていきましょう。
希望のお部屋のイメージがあるなら不動産屋に相談しよう
部屋の方角によって日当たりや家賃は異なりますが、どんな部屋が良いのかは人の価値観・考え方次第です。間取りや周囲の建物状況によっても日の入り具合は変わるため、南向きだからといって必ずしも希望に合う物件とは限りません。
部屋探しをするときは、不動産屋に希望する条件を伝えて話をしながら優先順位を決めていくと整理しやすいです。わからないところがあればアドバイスをもらえるので、それらも考慮しながら理想の物件を探していきましょう。