刺繍は初心者でも手軽にはじめられ、道具や材料費を比較的かけずに楽しめるハンドメイドのひとつです。子どもの通園・通学グッズ、布バッグや小物、洋服などにワンポイントとして刺繍をするだけで、素敵なオリジナル作品を作れます。
今回は、子どもの頃から刺繍を楽しみ、刺繍作家として活動していた筆者が、初心者でも簡単にできる刺繍のステッチや上達するコツをご紹介します。
刺繍を始めよう!その魅力とは

刺繍は、世界各地で古くから受け継がれてきた手仕事のひとつです。国によって、さまざまな種類の刺繍があります。図案や色彩の美しさはもちろんのこと、ほっこりとした温かみを感じさせてくれるのが大きな魅力です。
刺繍を趣味にするおすすめポイントは、次の5つです。
糸と針、布さえあればすぐにはじめられて、どこでも楽しめる
刺繍は糸と針、布さえあれば、いつでもどこでも楽しめます。道具や材料が比較的コンパクトなので、広い作業スペースが不要です。刺繍道具一式をカフェに持ち込んで、コーヒーを飲みながらゆっくり刺繍時間を過ごせます。
気分をリフレッシュできる
ハンカチや小物、洋服などに1針1針チクチクと刺していく刺繍は、いつの間にか無心になって自然に気持ちが落ち着きます。暮らしの中に刺繍時間を作れば、日常を忘れて充実したひとときを過ごせるでしょう。
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費用をそれほどかけなくても楽しめる
最初は、すべての道具をそろえなくてもはじめることが可能です。もちろん、大きな作品を作ったり、使用する布や糸の色数、道具にこだわったりすれば、それなりに費用はかかります。しかし、最初は針と糸を用意するだけでOKです。手持ちのハンカチや小物に刺繍をしてみましょう。
自分だけのオリジナル作品が作れる

布から作品を作らなくても、既製品に刺繍をするだけで自分だけのオリジナルアイテムを作れます。
図案を自分で考えればオリジナリティーが高まって、より刺繍の楽しみが広がるでしょう。市販のハンカチなどに刺繍で一手間加えて、心のこもった特別なプレゼントを作るのも素敵です。
インスタグラムなどのSNSで自分の作品として発信できる

刺繍をしている様子や完成した作品は、SNSで発信できます。「いいね」をたくさんもらえるような作品ができたら、モチベーションが上がって暮らしの楽しみが広がるでしょう。
刺繍をはじめるときに必要なものと便利道具

刺繍道具の種類はたくさんあり、刺繍の種類によって使う針や糸が変わるのが特徴です。初心者におすすめのフランス刺繍で使用する針と糸を中心に、あると便利な道具をご紹介します。
刺繍針
刺繍針の種類はいくつかありますが、初心者が刺しやすいのはフランス刺繍針です。3〜7号針をよく使うので、セットになっているタイプが便利でしょう。針の号数は、使用する糸の本数によって使い分けます。
刺繍糸
25番糸を選びましょう。ラメ糸は刺繍しづらいので、刺繍がはじめての場合は避けるのが無難です。
糸切りバサミ
刺繍糸を切るときに使用します。普通のハサミでも代用できますが、先端が細いタイプを選ぶと作業がスムーズに進みます。
刺繍枠
枠はなくても刺繍できますが、面のステッチを刺す場合には枠があると生地がピンと張って作業しやすく、仕上がりが美しくなります。扱いやすいのは、直径8cmもしくは10cmの枠です。
トレーサー
図案を写すための道具です。インクの出なくなったボールペンで代用できます。
まち針
図案を布に写す際、まち針で図案と生地を固定します。
布
刺しやすいのは、薄手のコットンやリネンです。
裁ちバサミ
布を必要な大きさに切るときに使用します。
布用複写紙(片面)
図案を生地に写す際に使用します。
水性チャコペンやフリクションペン
生地に写した図案が薄いときに書き足したり、直接生地に図案を描く際に使用したりします。水で消えるタイプが便利です。フリクションペンはアイロンの熱で線を消せます。
トレーシングペーパー
図案を写すために使用します。
透明セロファン
封筒やラッピングに使われているもので十分です。
刺繍をするための事前準備
刺繍をするための下準備の方法(布に図案を写す作業)を、実際の作業写真とともに紹介します。
図案を布に写す

刺繍をする前に、まずは図案を布に写します。次のように進めていきましょう。
1.好きな図案を選んでトレーシングペーパーに写します。
2.布の上に図案を写したトレーシングペーパーを重ねてまち針で固定し、間に布用複写紙をはさみ込みます。
3.上からセロファンを重ねてトレーサーで絵をなぞると、布に図案が写ります。
写りが薄い部分は、水性チャコペンなどで描き足しましょう。セロファンがあることで、絵をなぞったときにトレーシングペーパーが破れにくくなります。
テーブルが傷づかないように、心配な場合には布の下に下敷きを敷くとよいでしょう。
刺繍枠に布を張る

図案を写した布をピンと張るように刺繍枠に入れます。布目が真っすぐになるように整えて、やわらかい布の場合には生地が伸び過ぎないように気をつけましょう。
刺繍糸を準備する
刺繍糸を50〜60cmくらいの長さにカットしましょう。刺繍糸は6本の糸が1束になっているため、必要な本数を抜き取って使います。「2本どり」「3本どり」というように、2本や3本で刺すのが基本です。

【基本編】刺繍で押さえたいステッチの種類
刺繍のステッチは数えきれないほどたくさんありますが、まずは基本となるステッチをマスターしましょう。これだけ覚えれば、色やステッチの組み合わせ次第で素敵な作品を作れます。
ランニングステッチ

並縫い並縫いのようなフラットなステッチで、右から左へと縫い進めます。輪郭線を表現でき、糸の太さを変えたり、線を組み合わせたりすることで表情に変化をつけられます。連続して刺さずに1目ずつ刺し、その都度糸を引くと、針目の長さや間隔が揃います。
バックステッチ

線を描くステッチで、ミシン目のような雰囲気に仕上がります。返し縫いの要領で、1目分戻ってから2目分先に針を出すことを繰り返して、右から左へと縫い進めます。縫い目が隙間なく等間隔になるように気をつけながら、縫い目のきわに刺すときれいです。
アウトラインステッチ

直線や曲線を表現するときに使うロープのような雰囲気のステッチで、縁取りによく使われ、面を埋めることもできます。縫い目が半分重なるように左から右へと刺し進め、線の太さや重なり具合を変えることで仕上がりの表情を変えられます。カーブの部分は、針目を細かくするときれいです。
フレンチノットステッチ

小さな結び目を作るステッチです。植物や動物の目に使ったり、並べたり、刺し埋めたりと多彩な表現ができます。糸を針に巻く回数や糸の本数によって、結び目の大きさを変えられます。針に巻きつけた糸はしっかり引いて引き締め、針をまっすぐにして布に刺しましょう。
フライステッチ

Y字型のステッチで、小さな虫が飛んでいるように見えることからフライステッチと呼ばれています。Yの幅を変えたり、縦の線を短くしたり、連続させて植物を表現したりと、刺し方によって表情を変えられます。
レイジーデイジーステッチ

針先に糸をかけ、輪になった糸をストレートステッチ(一針出して入れる)で留めるステッチです。放射線状に刺して花びらを表現したり、大きさを変えて葉を表現したりできます。糸を引きすぎないように輪を作るのが、きれいに刺すポイントです。
サテンステッチ

面を埋めるていくステッチです。針目が平行に並ぶように刺すと糸が重なったり隙間があいたりしないように詰めて刺すと、サテン地のように艶やかな光沢が生まれます。糸が重なったりねじれたり、隙間があいたりすると目立ち、糸を引き過ぎると布がギュッと縮んでしまうので刺繍枠に布をピンと張りましょう。
円や楕円を刺すときには、中心から刺しはじめて半分を刺し埋め、再び中心から残りの半分を刺すようにすると目が揃いやすく、仕上がりがきれいです。
【応用編】刺繍で押さえたいステッチの種類

基本のステッチに、少しアレンジを効かせたステッチをご紹介します。
コーチングステッチ

土台となる糸(芯糸)の上から別の糸で縫い止めてくステッチで、輪郭線や面を埋めるときに使います。2本の糸を使って刺していくので、色のコーディネートや、太さの違う糸の組み合わせを楽しめます。
フェザーステッチ

名前の通り、鳥の羽(フェザー)のようなステッチです。フライステッチを左右に差し進める要領で、植物の葉や茎を表現できます。針目の間隔や傾き具合を揃えるときれいに仕上がります。
チェーンステッチ

鎖のようなな雰囲気のループが連なるステッチでで、輪郭線として使ったり面を埋めたりと幅広く使えます。レイジーデイジーステッチのように輪を作ってから、輪の先を止めずに連続で刺していきます。糸を強く引きすぎず、輪の大きさが揃うように刺していきましょう。
ロング&ショートステッチ

サテンステッチの応用編で、長いステッチと短いステッチを入り交ぜてランダムに刺していきます。
植物や動物の毛並み、グラデーションの表現や広い面積を埋める際に使われることが多く、糸足の長さや刺す方向、刺し重ね方によって雰囲気が変わってきます。ステッチの長さに決まりはありませんが、長くても1cm程度にしておくと引っ掛かりにくいので安心です。
初心者でも簡単にできる!刺繍の作品

刺繍はハンカチやお弁当袋、通園バッグ、洋服やエプロン、布バッグなど、好きなアイテムに入れられます。ステッチや色の組み合わせ次第で、表現の幅は無限大です。
まずは小さな図案から試して、少しずつ大きな作品にチャレンジしましょう。
ワンポイント刺繍のお弁当袋

お弁当袋にりんごやちょうちょ、花をワンポイントで刺繍したものです。ランチの時間が楽しみになりますね。
シンプルなステッチを組み合わせたポーチ

刺繍を入れた特別なポーチは、メイク道具入れにしています。プレゼントにも最適です。
刺繍ワッペン


ワッペンを作って、Tシャツにぺたりと接着しました。世界にひとつだけのオリジナルのファッションを楽しめます。
刺繍作家の私が上達するために心がけたこと

刺繍はじっくり時間をかければ、自然に上達していきます。焦らずに楽しみながら、じっくり取り組むことが大切です。繰り返し練習しながらさまざまなステッチを試して、とにかく数をこなしましょう。
上達するには、刺繍の作品を見て学ぶことも大切です。私が刺繍を好きになったのは、母が幼稚園の通園バッグに刺繍をしてくれたのがきっかけですが、たくさんの刺繍を見て参考にすると、見る目が養われて技術の向上にもつながります。
刺繍作家が考える、刺繍をするのに最適な環境
刺繍をより楽しむために、作業に適した部屋環境をご紹介します。
手元が明るいお部屋
刺繍は細かい作業なので、日当たりがよく明るい部屋が適しています。自然光が入らないと、糸の色合いの微妙な違いがわかりづらくなってしまうでしょう。
作業に集中できるスペース
刺繍専用のスペースを設けて道具や材料をセッティングしておくと、いつでもすぐに作業を開始できます。作業後に、デスクの上を片付ける必要もありません。
作業が終わったら他の部屋へ移動して一休みすれば、オンオフの切り替えもできます。
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リラックスして作業できるお部屋
集中して刺繍をしていると、気づいたら何時間も経っていたことがよくあります。そんなときには窓の外の景色を楽しんだり、庭に出て一休みしたりすれば、リフレッシュできて作業効率が上がります。
完成した刺繍作品を飾れるお部屋
タペストリーや刺繍パネルなど、完成した作品を飾れるスペースがあると、インテリアが彩られて刺繍のある暮らしをより楽しめます。
ただし、賃貸物件は画鋲などで穴を開けると、退去の際に原状回復費を請求される場合があります。壁に作品を掛ける際は、壁の穴が目立たないグッズを使用しましょう。
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新たな趣味として刺繍をはじめてみませんか?

刺繍は誰でも手軽にはじめられて、費用も比較的かからずにスタートできます。新たな趣味として、刺繍をはじめてみませんか?
刺繍のステッチの種類は豊富にあり、コツもまだまだたくさんありますが、今回お伝えした基本のステッチをマスターすれば十分素敵な作品を作れます。
この機会に、ぜひ刺繍を楽しんでみてくださいね。きっと新しい世界が広がります。